第28話 【ドタバタ魔族交流日誌!】
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アルシェリアの空に、春の光が差し込む昼下がり。
村の広場に、魔族の風が吹いた、、。
「あーはっはっ! また遊びに来てやったぞっ!」
元•魔界の厄災にして、大雑把な爆裂筋肉美魔族•グロリアが、豪快な声で手を振る。
「ふふ……“観察”としても、こういう平和は記録しておくべきだと思ってね」
氷のように冷静沈着なゼルダが、スカートの裾を揺らして隣に立つ。
そして最後に現れたのは、二人を制止するように一歩遅れて歩いてきた、、
「お前たちだけだと勝手なことばかりするからな!
勝手なことをしないように見張りに来た。それだけだ」
リリムの母、魔族の女将軍•イシュ=ヴァルト。
「わーい! お母さんがまた来たー!」
駆け出したのは、イシュの実の娘であるリリム。
彼女は完全に心を開き、母の胸に飛び込んだ。
「リリム……ッ」
イシュは一瞬目を見開くが、何も言わずにそっと娘の背中を抱きしめる。
その様子を見ていたディアボラが、笑顔でリリムの頭をなでた。
「リリムもすっかり村っ子なんだよね〜♡」
「うん。ここのみんな、だいすき♡」
とびきりの笑顔に、周囲からも自然と笑みがこぼれる。
◇ ◇ ◇
「というわけで!」
グロリアは村の畑に立ち、腰に手を当てて叫んだ。
「魔族代表として! 村の発展に貢献してやろうじゃないの!」
彼女が鍬を振ると、地面が鳴動する。
力の加減など知らないグロリアが、魔力全開で耕した結果、、、
チュュドォォォォォォォォン!!!
「うぎゃあああ! 畑ごと爆裂耕作~~~!!」
ミルが頭を抱え、セラは口をポカンと開いた。
「いや、まって、、これはもはや“爆耕”という新しい農法なのでは……?」
「いえ、、認めたら負けです!」とノアが即座に突っ込む。
◇ ◇ ◇
その頃、ゼルダはキッチンでひとり黙々と作業していた。
どうやら“村の食材を使ったスイーツ研究”なる趣味を見つけたらしい。
「気温調整、温度制御、加圧、真空、、、
すべて魔法で行えば誤差ゼロ」
どこまでも職人的な視線。
しかし、村の者たちが見守る中、、、
冷却魔法の一撃でキッチンが完全に氷漬けになる事態に、、、
「ふっふわぁぁぁ!ゼ、ゼルダちゃん?!
うちのキッチンが冷蔵庫通り越して雪国なんですが!?!?」
「ふっふっふ、だまっていろ……シャバ僧、、
これが完成形だ、、どうぞ、、召し上がれ」
「うっっっまぁぁぁぁぁいっ!!」
出されたのは完璧な“苺タルト”だった。
温度と甘味が理想的すぎて逆に誰も文句を言えなかった。
そしてゼルダのドヤ顔までもが完璧だった。
◇ ◇ ◇
そしてイシュは、、、
村の子どもたちに剣術を教えていた。
「こうだ、構えを低く。重心は後ろ。心を静かに」
戦場で幾度も命を張ってきたその経験を、イシュは柔らかく伝える。
「イシュ先生ー! やってやって! 必殺! ばくれつけんー!」
「なんだ?!そんな技は教えていないぞ……」
村の少年少女たちに囲まれるイシュの表情は、どこか穏やかだった。
その姿を、木陰で見ていたリリムが、ぽつりと呟く。
「ディア姉、お母さん楽しそうだね☆」
「うん♡最近のイシュ、すっごくいい顔してる!」
横に座っていたディアボラが笑い、リリムの背中をポンと押す。
「今度、一緒に鍛錬してもらおうか。あたしと、リリムでさ」
「へへへ〜……やる!」
リリムが小さな拳を握る。
その瞬間、イシュがこちらを振り向き、小さく手を振った。
どこかぎこちなく、、しかし、確かに、母としての眼差しで。
◇ ◇ ◇
夜、ディアボラ邸では小さな宴が開かれた。
集まったのは、村の仲間たちと魔族三人。
バンザイの絶品コロッケに始まり、ノアが映し出したかつての“魔界の記録”、
ミルが持ち込んだ“収穫予定グラフ2025春Ver”、セラの「氷で冷やした自家製ラムネ」などなど、、
宴はいつまでも続いた。
「ほんとに……こんな日々が、魔界にもあればちっとは世界が変わるかもしれないな…」
ぽつりとグロリアが呟く。
ゼルダは無言で杯を掲げ、イシュが答える。
「あぁ……それでも、私たちは変われるさ。
リリムが教えてくれてる…」
「お母さん……!」
「……ありがとう、リリム」
ディアボラが笑いながら言った。
「ねえ、レオル。そろそろ、魔界に支部でも作っちゃう? 【創造主ブランド】としてさ♡」
「……んー。やっぱりそーいうこと言っちゃう?
あははっ!!“魔界も創造しちゃうか”?」
その一言に、全員が目を見開いた。
そして大笑いした。
だが、、その言葉が、未来を示していたことを
この時の誰も、まだ知らなかった。
村の上空。夜空に溶けるように、黒い“裂け目”が生まれていた。
そこから微かに、禍々しい“呼吸音”のような気配が漏れていた。
それは、“禁忌”。
魔族の別国家、、、“冥王領”が、眠らせていたはずの災厄に手を伸ばした、兆しだった。
続