第23話 【スローライフ×ミステリー!アルシェリア七不思議】
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、、きっかけは、夜の読書会でノアがふと語った一言だった。
「そういえばさ、、アルシェリアって、“七不思議”みたいなの、ないのかしら?」
「七不思議〜?」
薪の火に照らされながら、リリムが小首を傾げる。
「うん。なんていうか……
“誰かが見たらしい”とか、“決まった時間になると不思議が起きる”みたいな現象。古い村だとよくあるじゃない?」
「お化けとかってことかい……?」
ファルが紅茶を飲みながら、わずかに目を細める。
「ん〜?ただの伝説で片付けるには、アルシェリアはあまりにも“不思議”が多すぎますね…。記録者としても興味深い……調査開始ですね」
そこから数日、、
「アルシェリア七不思議、調査開始だ!」
なぜかリリムが中心になり、子どもたちと一緒に“探索隊”を結成。
案内役はノアとファル。そして遠くから見守るように、なぜかディアボラがついていた。
◇ ◇ ◇
【第一の不思議】、、、夜な夜な“木”が動く、、
「あれ、あそこの森で木が動いたって聞いたよ!」
リリムたちは、夜の森に足を踏み入れる。
確かに、地面には奇妙な“足跡”のようなものが……
だが、ノアが観測魔法を使って気づく。
「これ、木じゃなくて“ツル系の植物”が自走してただけみたいですね。自律成長種、、つまり、レオルが何気なく作った“野菜の自動収穫版”が森に逃げて自立しちゃったんですよ」
「んー?……それ、七不思議っていうか、レオ兄のせいじゃん」
◇ ◇ ◇
【第二の不思議】、、、井戸から聞こえる、歌声、、
「夜に井戸に近づくと、聞こえるんだって……」
静かな夜。井戸のそばに耳を寄せると、、
確かに、かすかなハミングが。
が、ファルが井戸を覗き込み、魔法で音の波形を抽出する。
「これ、地下の温泉脈を伝って、温泉場の“セラの鼻歌”が共鳴してるんだな」
「えええぇぇぇ……!?」
◇ ◇ ◇
【第三の不思議】、、、図書館の“勝手に開く本”、、
「これだっ!これこそミステリーっぽい!」
リリムたちがワクワクしながら向かうと、ノアが首を傾げた。
「本が勝手に開く現象、確かにあるけど……」
彼女が魔力の残滓をたどった先にいたのは、、
ミルだった。
「えっ?だって風通し悪いと本カビるじゃん?
本に風魔法かけて、空気循環してたんだよ?」
「……ミルお姉ちゃんのせいだったんだ……」
◇ ◇ ◇
【第四の不思議】、、、夜の畑に現れる“光の踊り”、
これは本当に幻想的だった。
満月の夜、畑の上でふわふわと光る小さな妖精のようなものが舞う。
だが、ノアとファルが連携して調査した結果、、
「ルーナの影魔法の副作用だった」
「花を咲かせるために、影に光素を混ぜて制御してたら……舞ってたらしい」
「あはは、……本格的に、みんなが原因じゃん」
リリムは、思わず笑っていた。
不思議の正体は、みんなが日々積み重ねてきた“生活”の中にあった。
でも、、、
【第七の不思議】、、、誰も知らない“最後の一つ”。
「え? 六つしかなかったよね?」
探索隊の帰り道、リリムが不意に立ち止まった。
「“七不思議”って言うのに、あと一つがどこにも記録されてないの。ノアお姉ちゃん、知らない?」
「ううん、私の記録にもない。でも、古文書にだけ“七番目は、心で見るもの”って書かれていたわ」
その夜。
ディアボラが、ぼんやりと焚き火を見ていた。
リリムが隣に座る。
「ねぇ、ディア姉。わたしさ、七番目の不思議……見つけた気がする」
「へぇ、何?」
「それは、、、“この場所”があること♡」
ディアボラがリリムの顔を見つめた。
リリムは、穏やかな瞳で笑っていた。
「私、魔族なのに人間の村で、こんなに笑って過ごせてる」
「うんうん♡」
「みんながちゃんと、わたしに“話しかけてくれる”」
「そうだねぇ♡」
「“当たり前のように隣にいてくれる”」
「…………」
「、、、それが、一番不思議で、一番嬉しい♡」
ディアボラはゆっくりとリリムの頭を撫でた。
その手は、優しく、温かい。
「そっかそっか♡それが七不思議の最後ってことに、しとこっか♡」
「うん☆」
火の粉が、夜空へと舞い上がる。
静かで、とてもあたたかな時間が流れた。
アルシェリアには、今日も優しい“日常の不思議”が生きている。
続