第22話 【ただいま、母の国へ】
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朝焼けのアルシェリア。
レオルの創造で晴れ渡る空の下、ディアボラの家の庭でディアボラが大きなリュックを背負っていた。
「よーし、準備オッケー!リリム、そろそろ行くよ〜!」
玄関から出てきたのは、少し大人びた表情のリリムだった。
以前よりも落ち着きが増し、どこか柔らかい笑顔を浮かべている。
「うん……楽しみだけど、ちょっと緊張するかも」
「大丈夫大丈夫♡ あたしがついてるし、イシュだってきっと喜ぶよ!」
魔界。リリムの母である魔将イシュ=ヴァルトが治める、魔界第四位アザル=ラグナ領国。
以前は“敵”として現れたが、今ではアルシェリアと同盟を結ぶ、信頼できる隣人の一つだ。
「それじゃ!レオル、行ってくるね♡
浮気しちゃダメよ♡」
ディアボラが大きく手と胸を振る。
「あははっ!楽しんできて。
魔界の空気、昔ときっと変わってると思うよ」
レオルは穏やかな笑みで見送る。
リリムも、レオルに一礼した。
「……行ってきます、“レオ兄”」
◇ ◇ ◇
魔界への転移陣を抜けた瞬間、、、
リリムの目に映ったのは、かつて見慣れた黒い空と、赤紫の大地だった。
けれど、そこにあったのは、かつての“冷たい魔界”とはまるで違う雰囲気。
「……あれ?ディア姉、お花、、」
咲いている。
花が。魔界には存在しなかったはずの、淡い色の花々が、あちこちに咲き誇っていた。
「あははっ!イシュ、やるじゃん……」
ディアボラが笑い呟いた。
そして、、、
「……リリム!おかえり♡」
強く、けれど確かに優しい声。
黒の鎧に身を包んだ、魔族の将。
リリムの母、イシュ=ヴァルトが立っていた。
「お母さん……ただいま♡」
リリムの声が震える。
あの日、戦場で背だけを見せていた母。
でも今、目の前にいるのは、過去ではなく、“今”を見ている母だった。
「よく、帰ってきてくれたな」
イシュの言葉に、リリムの目に涙が浮かぶ。
だが、彼女はもう昔のように泣かない。
背筋を伸ばし、はっきりと答える。
「うん。ただいま、お母さん♡」
その瞬間、イシュの表情が崩れ、強く娘を抱きしめた。
「おかえり……リリム♡」
「あの〜あたしもいるんですけど…」
ディアボラが静かに呟いた。
◇ ◇ ◇
その夜、魔界ではめずらしい“宴”が開かれた。
ディアボラが持ち込んだアルシェリア風の料理と、魔界独自の黒ワインが並ぶ。
「うわー!この煮物なに?うんまーー!!」
魔族たちが意外なほどのテンションで、料理を囲む。
「ディアボラ、これもあの男の創造の料理か?」
「うん♡ でも一番おいしいのは、リリムが作ったこの漬物だよ〜!」
「ちょ、やめてよもう……!」
リリムが頬を赤くするが、魔族たちは満面の笑顔だった。
「リリム少しいいか?」
「うん」
そんな賑わいのなかで、イシュとリリムは席を外し静かに並んで星空を見ていた。
「リリム……お前は、もう私の影ではない」
「……うん。私、アルシェリアで仲間と暮らして、初めて“家族”ってものを知ったの」
「そうか……なら、もう迷うことはないな」
イシュは、リリムの頭にそっと手を置いた。
「リリムの行きたい場所へ行きな。
帰りたい時は、いつでも帰ってこい。
帰る場所はいつでも“ここ”にある」
「……うん。ありがとう、お母さん…
お母さん…変わったね♡」
「ふふっ!“どんな親でも娘は可愛いからな”♡」
その手の温もりは、かつての“魔族の厳しさ”ではなかった。
、、それは、ただの“親”の手だった。
◇ ◇ ◇
その頃、、
ディアボラとグロリアは酒を飲みながら話していた。
「なぁ?グロリア、魔界の争いはおさまってるのか?」
「んっ?なんだ気になんのか?問題ねぇよ!
イシュもいるし、ゼルダもいる。
それにこの“あたし”もこっちについてんだよ!
どの魔族もここには手出しできねーよ!あははっ!」
「そっか♡ならよかったよ!昔勝手に魔界飛び出してきちゃったでしょ…
あたしだけ幸せだとな〜んだか悪い気がしてね♡
それなら、い〜っぱい幸せ満喫しちゃうわ♡あははっ☆」
ふたりの豪快な笑い声が空にのぼっていった。
◇ ◇ ◇
宴も終わり、、
帰り道、転移陣を前にディアボラがポツリと聞く。
「どうだった、魔界?」
「……うん。ちょっと懐かしかったけど、もう私は、あそこには住めないかもね〜」
「んっ?なんで?」
「だって……今の私の居場所は、“アルシェリア”だから♡」
リリムは少し照れくさそうに笑った。
「だってそこには、ディア姉もいて、セラ姉もミル姉もいて……レオ兄もいる。
だから、、私の“家”は、そっちにあるんだと思う」
ディアボラはそれを聞いて、ぎゅっとリリムを抱きしめ、爆乳に沈めた。
「……帰ろっか、リリム♡」
「むぐぅぅぅ!う…うん…帰ろう♡、、くる…し」
魔界の星空を背に、二人は“今の家”、アルシェリアへと戻っていった。
続