第21話 【創造の森の遠足と、冒険の記憶】
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アルシェリアに、暖かな風が吹き始めていた。
新緑がまばゆく、草原には色とりどりの花が咲き誇る。木々は芽吹き、どこか眠たげな空気と、心を弾ませる匂いを運んでいた。
「はいっ、というわけで、今日は、、みんなで遠足だ!」
村の中央広場に立ったレオルが、高らかにそう宣言する。
「えっへん!今回の行き先は、レオル村長が“創造された森”です!」
ミルが胸を張って地図を掲げる。
レオルが創造した、探索用の新フィールド《カレイドの森》
季節ごとに表情を変える、美しくも少し不思議な場所だ。
「遠足ってのは……食べ歩きするイベントか?」
バンザイが大鍋を抱えながら、ぽりぽりと煮干しをつまむ。
「はい、ご飯バカ、それは祭り!今日はちゃんと歩いて景色を楽しむんだよ!」
セラがにこにこと歩く準備をしている。
氷魔法で冷えたジュースまで持参していた。
ルーナは影の中からひょっこりと顔を出し、
「探索任務」と称して地図を盗み見ていたし、
ノアは観測装置片手に、植物と動物の記録準備万端。
「ディアボラ。ちゃんとお弁当持ちましたか?」
「もっちろん♡ リリムと一緒に作ったもんね!」
リリムはというと、ちょっと照れた様子で包みを掲げた。
「が、頑張ったよ!卵焼き、焦がさなかったよ」
「偉い偉い♡ イシュのより美味しいかもよ?」
「えっ、ほんと!?えへへ……」
こうして、賑やかで笑顔いっぱいの遠足が始まった、、、。
◇ ◇ ◇
カレイドの森は、緩やかな起伏と小さな滝が点在する美しい土地だった。
透明な湖ではセラが靴を脱いで水遊びし、バンザイはきのこ狩りに熱中。ルーナとリリムは木陰で仲良くサンドイッチを分け合っていた。
一方、ミルとノアは知識合戦を繰り広げていた。
「この花、夜になると光るんだよ!」
「ふふ、記録上は“夜光花”。ミル、なかなか勉強してるんだね」
「ふっふっふ、レオルの村の学力はすごいんだから☆!」
そんな光景を見ながら、レオルはひとり、やや奥の林の奥へ足を運んだ。
そこには、春の光を反射する透明な湖が広がっていた。
「……ここ、、俺が昔、初めて“創造”に成功した場所にそっくりだな〜……」
その湖のほとりに腰掛け、遠い記憶に想いを馳せる。
「俺は何を見て、何を選んできたんだろうな……」
昔、自分がモンスターだった頃。
あの頃はただ、強さに憧れていた。
でも今は、、、
「あっ!レオル!ここにいた」
後ろから聞こえたのはエルフィナの声だった。
「こんなところでひとりにならないで。
みんな、あなたと一緒にいたいって思ってるんだから」
「んっ?……悪い悪い!そうだな」
レオルは立ち上がり、もう一度森を見渡す。
仲間と歩く春の森。
笑い声が風に混ざり、陽光が舞う。
この遠足は、ただの“遊び”じゃない。
それは、過去と未来の自分をつなぐ、かけがえのない記憶の旅だった。
だからこそ、レオルは強く思う。
この春を、今日という日を、皆で“残したい”。
それが、自分たちの“物語”になると信じて、、
◇ ◇ ◇
帰り道、皆で輪になって歌ったり、じゃんけん列車で転んだり。
途中で、ディアボラとリリムがレオルに木のブランコを創造してもらって楽しそうに笑い、ファルは「バンザイ!また腹が減った」とおにぎりをもらいまくっていた。
ルーナは日記を付けていたし、、
ノアは「一日で観測紙三枚は記録的」と驚いていた。
そんな、何でもないけれど、最高に楽しい一日。
村に戻る頃には、空は優しく茜色に染まり、、
「またみんなで行こうね、遠足☆」
「うん、次は“秋の森”が見てみたいな!」
そうやって、仲間たちの絆はまた少し深まり、新たなページが物語に刻まれたのだった。
続