第2話 【春まつりと、絆の花】
見て頂きありがとうございます。励みになりますので、良かったらブックマーク、評価、コメントよろしくお願いします。
春の香りが、アルシェリアの風に満ちていた。
緑が芽吹き、花がほころぶ季節。
レオルたちはこの“新たな大地”で、初めての季節行事を開くことにした。
「ねぇねぇ☆村のみんなで、祭りをしようよ!」
ミルの一声が発端だった。
「冬を越えて、春を迎えたんだよ?
だったら“花の宴”が必要でしょ!
ほら、違う世界にもお花見ってあるし!」
「花、、ねぇ……そんなのどこに咲いてるんだ?」
バンザイが腕を組んでうなった。
「あはは!バンザイ、実は、咲いてるはずなんだよなぁ」
レオルが笑い手を挙げ、村の北側に新しく拓いた丘を示す。
「創造のときに、“記憶の草花”って種を撒いた。
春になれば咲くって聞いてたけど……たぶん咲いてるはずだよ!」
「そうなのか、、んー?見に行ってみるか?」
◇ ◇ ◇
小高い丘の上、、
そこには一面、淡い桃色と金色の草花が咲き誇っていた。
花の形はどれも少しずつ違い、まるで“個々の記憶”を模しているようだった。
「……すごい、、この世界にも、ちゃんと“季節”があるんだね」
セラが花びらを手に取り、感嘆の声を漏らす。
「それぞれの花が、違う思い出を持ってるんですね」
ノアがそっと説明する。
「この草花は、“想い”に反応して咲きます。
だから、見る人によって色や形も違うものよ」
「ってことは……我の目に見えてる花と、ノアのやつとでは違うってことか?」
バンザイが呟く。
「そうですね。たとえば、それは“バンザイだけの春”なんですよ」
それを聞いたディアボラがくすくすと笑い、リリムを抱き上げる。
「じゃあリリムは……“お母さんと過ごした春”とか思い出すのかしらね♡」
「うーん……ディア姉との春かなぁ?」
「んもう、かわいすぎか♡」
笑い声が、丘に広がった。
「それじゃあ!アルシェリア春祭り開催しますか!!」
「「「おぉぉーー!!」」」
レオルの掛け声にみんなが声を揃えた。
そしてその日、急遽“春まつり”が開催されることとなった。
◇ ◇ ◇
春まつり・当日。
村の広場には即席の屋台が並び、各陣営が趣向を凝らした出し物を披露していた。
「いらっしゃい! セラ特製の“氷いちごミルク”だよ〜!」
「こちらはバンザイの“肉まん鍋”! “中身”は何が出るかのお楽しみ!」
「ミルのお化け屋敷は、構造式でほんとに動くから注意してね!お漏らし厳禁よ〜☆」
「ちょ、こわいの苦手なんだけど!? ちょっと!?」
「ふふふ……影から見守る“ルーナおばけ”もいるわよ……ばぁっ!!」
「うわぁぁあああ!?」
祭りの熱気に包まれ、アルシェリアはこれまでにない賑わいを見せていた。
夜になると、丘に再び皆が集まり、最後のイベント
“記憶の灯火”が行われた。
「この灯籠に、自分の大切な記憶や、叶えたい願いを書いて空に浮かべようか?」
ミルがそう提案したのは、まさに“世界を形づくる想い”の力を信じていたからだ。
一つ、また一つと、灯りが空へ昇っていく。
「我は、みんなでこれからも、お腹いっぱいごはんが食べられますように……」
「私は、レオルとずっと一緒に……温泉で…、、
えへへ、ナイショ♡」
「戦わなくても生きていける日が、ずっと続きますように」
仲間たちの願いが、春の夜空に浮かんだ。
そして最後に、レオルが手にした灯籠に記した文字は、、、
《争いのない世界を、君たちと歩んでいけますように》
ファルがその灯籠を見つめ、小さく笑った。
「君って、本当に変わったよね。
昔なら、“勝てばいい”って顔してたのにさ」
「えっ?俺そんな顔してた? なら変わったんだな。
みんなと出会って、守りたいものができた」
「あはは!そういうの、悪くないね☆」
その時春の夜風が、やさしく吹いて花びらが舞った。
空へ昇る光が、未来への道を照らすように。
アルシェリアに春が来た。
新たな旅の第一歩に、温かな灯りがともる。
続