第1話 【春の村、再び動き出す】
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春。
雪が解け、大地が芽吹く季節。
創造されたばかりの新世界•《アルシェリア》では、ようやく“暮らし”と呼べる営みが根付き始めていた。
王都との戦いを終え、人も魔族も精霊も、共に“ここで生きる”という選択をした。
「ほいっ、と。これで畑の端まで水が行き渡るな!」
バンザイが腰に手を当て、大きく頷く。
バンザイの傍では、魔族の子どもたちがスコップを使い、土を楽しそうに掘り返していた。
「ほらほら見て、バンザイおじちゃん! おっきい芋虫いたー!」
「おっ!やったな! それは“タンブルムシ”っていって、焼くとうまいんだぞ!」
「えぇぇぇぇ!? 食べれるの!?」
「うまいんだって! ちょっと虫食ってみろ、人生変わるから!飛ぶぞ!」
「やだあああぁぁぁ!!」
そんな和やかなやりとりに、セラがクスクスと笑う。
彼女は最近、子どもたちのために【乳乳鍋】という変な鍋を作り、子供たちに大人気となり、この二つ名で親しまれている。
実際、毎晩開かれる食事会は、バンザイとセラの料理を中心に回っていた。
一方、村の中心にある新たな“石造りの塔”の上では、、
「この風……座標が微かに揺れてる」
ノアが風の流れを測定していた。
彼女の隣にはミルが控え、アルシェリアの“空の層”を記録している。
「この時期になると、次元の膜が薄くなるんだよね〜☆」
「うん。世界を“つないでしまう”のも時間の問題かも」
「新しい出会いがある、ってことかな?」
「うん。きっと、また“旅人”が来る。
……記録の用意、しなきゃ」
◇ ◇ ◇
その頃、湖畔のほうでは、、
「こらっ、リリム! そこに乗っちゃだめだって!」
ディアボラがあわてて声をあげていた。
リリムは今や、村にすっかり馴染み、“ちょっと元気な妹”のような立ち位置になっている。
「んっ?ディア姉、だってこれ、光ってるんだもん! 動かないほうが変じゃないの?」
「それは魔力のセンサーだから、踏んじゃうと、、」
ドカァァァァァァン!!
「うん……爆発するのよ、、」
「わぁぁぁ!ごめんなさいーー!!」
びっくりしてるリリムをディアボラがひょいと抱き上げ、爆乳に顔を埋める。
「ったく、あたしに懐いてるのは嬉しいけど、元気が爆発級ねぇ♡危ない子はこうしちゃうわ♡」
「ぐむぅぅぅ!くる…し、、ぷっはぁっ、、
だって、ディア姉かっこいいんだもん!真似したくなっちゃうよ♡」
「うふふ♡ そういうとこ、嫌いじゃないわよ♡」
◇ ◇ ◇
夕方、、
レオルは、ひとり畑の脇でスコップを振るっていた。
かつて作った村よりも、遥かに広い土地。
まだまだ、整備は終わっていない。
「……やっぱり、、[創造]で作っちゃうのもいいけど、、、土の匂いって落ち着くな〜」
そこに、ルーナがやってきた。影からぬるりと現れるのは、いつもの彼女らしい登場だ。
「レオル。影狼の一族が、今夜来るって。
歓迎の準備は?」
「もちろん!」
レオルはスコップを置き、顔を上げる。
「この村は、誰でも受け入れる。
例え“かつて敵だった者”だとしてもね」
◇ ◇ ◇
夜。
焚き火の周囲には、椅子や毛布が並べられ、アルシェリア恒例の“焚き火宴”が開かれていた。
「我ら、影狼一族。滅びの地より来たる」
現れたのは、黒い装束を纏った長身の男と、その後ろに続く複数の戦士たち。
「歓迎するよ。アルシェリアへようこそ!」
レオルが笑みを浮かべ、手を差し出す。
男は一瞬、警戒したが、、
やがて手を伸ばし、握手を交わした。
「……変わったな、人間は…、我々を歓迎するか…」
「あぁ!世界もだいぶ変わってきたんだよ」
セラが言う。
「だって、こうして一緒にごはん食べれてるもんね
それに、美味しいよ。影狼さんたちの料理も☆」
影狼たちは静かに頷き、鍋のスープを口に運ぶ。
「美味い!! あはは、争いなどはもはや無縁の世界なのかもな…」
レオルたちの笑い声と影狼族の笑い声、、
焚き火の音が、穏やかに鳴っていた。
そして、夜も更けたころ。
ノアがこの交流会を記録紙に書き込んだ。
《新たな客人との出会いと、焚き火の夜》
この記録は、やがて伝説になるだろう。
創造された世界の“平和の証”。
レオルは、焚き火の向こうに広がる夜空を見つめながら、心に誓う。
「さぁて!明日は何しようかなぁ〜?
絶対に、この幸せな時間を守り抜いてみせるぞー!」
スローライフ編、、、開幕!
続