第65話 【世界再統合と、約束の果て】
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戦火の止んだ王都に、朝が来た。
かつて高圧的にそびえていた王城の塔は、今や青空のもと、静かに光を浴びている。
「ふあぁぁ……こいつは寝過ぎたかも…」
バンザイがあくびをしながら、焼き立てのパンを抱えて広場へ出てくる。
その手には、王都民から受け取った“感謝の書状”が数通。
戦いの余韻の中、レオルたちの名は“英雄”として、街のあちこちに刻まれ始めていた。
「エルフィナは?」
ルーナが屋根の上から降りながら尋ねると、セラが花を摘みながら答える。
「即位式の準備だって。ちゃんと王冠も作ったんだよ、レオルが」
「手作りかよ、、王冠まで“創造”とはね」
一方その頃、玉座の間、、、
「んー!……やっぱり、落ち着かないな」
エルフィナが玉座の前に立ち、ゆっくりと手を伸ばす。
そこにはもう、兄の影はない。かつて自分の生まれた意味を疑い、すべてを失った少女は、いま“王”としてその責任を手に取ろうとしていた。
「レオル……」
振り返ると、そこにレオルがいた。
「来たよ。エルフィナ、いや……陛下?」
「やめてよ。みんなといる時は普通に呼んでよ!」
レオルが微笑む。
「じゃあ……エルフィナ。大丈夫か?」
「ううん。怖いよ。でも、あなたがくれたこの場所……アルシェリアと王都が繋がって、やっと“希望”が始まる気がするの」
王都とアルシェリア。
人間と魔族、異種族、そして“創られた者たち”が共に歩める場所。
それを“ひとつの世界”として再構成するため、レオルたちは“世界再統合”の儀式に挑もうとしていた。
◇ ◇ ◇
その日、アルシェリアの中心で、創造儀式が始まった。
「世界は、もともとひとつだった」
ノアが広場に集まった皆に語る。
「神が分断し、旧神が記録を途絶えさせ、人が支配を望んで隔てた。でも、、今、私たちは“再び手を取り合う”選択をした」
「それが、“世界再統合”なんだよ」
レオルが両手を広げる。
彼の背後には、仲間たちの魔力が収束していた。
セラの氷、バンザイの料理魂、ミルの知識、ルーナの影、ノアとファルの記録、リリムの呪式、ディアボラの炎、、そしてエルフィナの矢。
すべての力が、ひとつの“環”となって世界に語りかける。
《世界融合式・アルシェリア=リンクス》
七つの創造核が共鳴し、旧神が引き裂いた次元の“裂け目”が修復されていく。
王都の空に、アルシェリアの星が昇り、、
魔族の大地に、人の鐘が鳴り響く。
「これが……俺たちの、“選んだ未来”だ!」
◇ ◇ ◇
夜。
祭りのような騒がしさのなか、ひとつの小さな焚火が村の片隅で灯っていた。
「結局、帰ってきたね……この空気感」
セラがスープを手渡す。
「あぁ!また今日から鍋作り直しかな!」
バンザイが頭を掻く。
「村も王都も、レオルがいると全部“家”って感じだね」 ミルが微笑む。
「……戦いばっかだったからな。ちょっと静かなくらいがちょうどいい」
ルーナが肩を寄せる。
「さぁっ!帰ったら温泉入って爆乳洗うぞ〜♡」
「あっ!ディア姉!!今から出しちゃダメです!」
ディアボラとリリムがはしゃぐ。
「さぁて、、次はどんな楽しいことするのかな?」
ファルが微笑みながら言う。
「記録も、ようやく“エンディング”にたどり着いた」
ノアが星空を見上げながら言う。
「いや、、これからが、“本当の始まり”なんだろ」
レオルがみんなを見つめて言う。
その言葉に、皆が頷く。
静かな夜風のなか、レオルはそっと手帳を開いた。
かつて、何もなかった村での第一歩。
モンスターとして終わったはずの命が、出会いを経て“世界を創る者”になった記録。
そして、今も続く旅路の中で、彼はそっと書き記す。
「願わくば、この世界に、、、
争いが再び訪れぬように」
◇ ◇ ◇
その頃、、
誰もいないはずの王都の旧地下神殿。
封じられたはずの“神核の残滓”が、微かに光を放っていた。
そして、その奥。
未来から来た二人の軍服の影が、静かに立っていた。
「……ゼクス。やはり、歴史は変わった」
「……ああ、けどまだ終わっちゃいない。
“あれ”を使う時が来たようだな」
彼らの眼前に浮かぶ、“時を超える棺”。
その中には、別の時代に存在した、、
“もうひとつの世界線の創造神”が眠っていた。
続
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