第62話 【軍靴、再び鳴る】
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アルシェリア、黎明。
空は静かに紫青に染まり、朝露の光が、創造の大地を照らしていた。
村では、戦の準備と共に、日常も息づいている。
ミルとノアは記録と戦略を照合し、セラとリリムは新たな回復魔法の調整に勤しんでいた。
バンザイは鍋を武器にした新戦術を開発し、ルーナは影の領域を拡張して哨戒にあたる。
ディアボラは高台で身体を温めながら、隣に座っているリリムをちらりと見る。
「ねぇ、最近ちゃんと寝れてる?」
「……寝てないわけじゃないけど、なんか……胸が、もやもやするの」
「それって〜たぶん、“大人になる準備”ってやつね♡」
「え、じゃあ私はディアボラみたいに爆乳になっちゃうの…?」
「うん♡なっちゃうよ! 可能性は創造で広がる!
たぶん!」
「たぶんかーい!」
朝から元気なやり取りが村に響く。
だがその和やかな空気に、ノアの紙束がふっと震えた。
「……来る」
記録紙に浮かび上がる、忌まわしき未来の符号。
そのとき、アルシェリアの空が“開かれた”。
高空に、“未来の時空断層”が浮かび上がる。
その歪みに現れたのは、、
かつて現れた、未来泥棒の2人。
ひとりは、赤と黒の軍服を纏った少年。
その義手は鈍く光り、右目は人工構造のガラス玉のように冷たく輝いていた。
「……ふっ。随分、のどかにやってるじゃないか」
静かに大地に降り立った少年は、名乗る。
「やぁやぁ!久しぶり!僕はゼクス・ヴェルアイン。
この時代に“未来の秩序”を適用する者だ」
もうひとり、ゼクスの後ろに立つのは、漆黒のマントを纏った黒髪の女性。
顔を覆う仮面の下からは、崩れかけた“未来の残滓”が滴り落ちていた。
「コード名、《ヴェロニカ》、、
既に滅びた未来より、“秩序修復”のため来訪」
その瞬間、アルシェリア全土に“時間凍結”の波動が広がった。
鳥が止まり、風が止まり、空が止まり、、
レオルたちだけが動ける時間領域に閉じ込められる。
「また未来からの来訪者……!」
ノアが声をあげた。
「あなたたち、“歴史を修正するため”に干渉してるのね!」
「違うさ。俺たちは、、失敗した未来から、
“唯一正解だったルート”を再現しに来ただけだ」
ゼクスの義手が展開し、そこからタロットカードのような金属札が浮かぶ。
「《XXI:THE WORLD/世界》
理想状態への強制遷移」
展開されたカードが空に広がり、アルシェリアの空気がねじれる。
「これから君たちは、理想に適さない要素として“削除”される」
「ぬぅぉぉぉぉお!!削除されてたまるかよ!」
バンザイが叫び、鍋を振りかぶる。
「うちの村長はな、そんな“意味”そのものをぶっ壊してきた男なんだぞ!」
「レオル……」
仲間たちが身構える中、レオルが一歩、前へと進み出た。
「……王都の陰謀に、未来の歪み。
お前ら、全部まとめて“修正創造”してやるよ!」
レオルの神核が輝き、創造式が空間に描かれる。
「俺たちの未来を、誰かに決めさせてたまるかよ……!」
ゼクスが静かに右手を上げる。
「くっくっ、やはりまともにやっても勝そうにないな、、ならば……やはり“ヤツ”を呼ぶしかないな!
“ヴェロニカ”!!」
その瞬間、ヴェロニカの身体から、黒い“未来の断片”があふれ出す。
「許可します。“彼”の召喚、、、。
コード名、《ヴァル=サンクション》」
空がものすごい音で裂けた。
現れたのは、、“時間そのものを食らう怪物”。
次元を超え、未来と過去を同時に侵食する存在。
「これが……“未来が選び取った最後の兵器”……!」
ノアが叫ぶ。
「今ここで倒さなければ、この世界は未来に飲み込まれる!」
レオルが拳を握る。
「みんな、準備はいいか、、!!」
「当然だよ!」ミルが答える。
「私たちは、レオルと一緒に“未来を創る”って決めたんだから!」
仲間たちが並ぶ。
次なる戦いは、過去でも現在でも未来でもない、“可能性”そのものを巡る戦い。
そして、王都すらも絡む“最大戦争”が、今始まる!
続
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