第61話 【決戦前夜、焚き火の誓い】
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アルシェリアに、穏やかな風が吹いていた。
焚き火の煙がゆっくりと空へと昇り、広場には小さなテーブルと椅子、そして懐かしい顔ぶれが揃っていた。
ポポたち旧村の村人たちも、新天地の風にすっかり馴染んでいる。
「これ……懐かしいな。最初の村で植えたカブの種だよ」
そう言いながら畑の整備をしていたのは、農夫のマール。
「へへ、土の質は前よりいいな。
さすが創造神様のおかげってやつか!」
ミルが手を叩いて笑う。
「それもあるけど、みんなが頑張ってくれるから、この場所も“世界”になっていくんだよ♪」
「いいこと言うじゃん、ミルちゃん!」
バンザイが肩に鍋を乗せながら、炊き出しの準備を整える。
「今夜は特別だぜ。“戦”の前の腹ごしらえってな!」
(え、まだ戦うの……?)
ポポが不安げにレオルを見る。
レオルは小さく頷いた。
「……すまない。けど、たぶん、もう避けられない」
仲間たちは、静かに顔を見合わせた。
夜、焚き火を囲む。
「ほんっとに星が増えたわね~!
こっち来たばっかの時は“空の設定”すらなかったのに♡」
ディアボラが寝転がりながら、手を伸ばす。
「やっぱり創造ってすげーな。夜空まで手作りだぜ」
バンザイがにやりと笑うと、セラがふと目を細めた。
「この空に、皆の思い出が詰まってる気がするよ。……私たちが歩んできた軌跡が、ちゃんと残ってる」
「記録され、意味になり、今につながった……か」
ファルが静かに頷く。
「僕は拒絶者で観測者だけど、この場所では“誰かの仲間”でいたいと思うよ☆」
「……ふふ、それは記録に残る大事件ね」
ノアが優しく笑った。
「あれ?……リリムは?」
レオルが尋ねると、ディアボラが頬を掻いた。
「お風呂入ったあと、ちょっと泣いちゃってさ。
母親のこと、まだ気持ちに折り合いついてないのよ」
「……でもね」
そこへ、焚き火に歩いてきたのは、濡れ髪をタオルで拭きながら歩くリリムだった。
「もう、あの人の後ろには戻らないって決めた。
泣いちゃってごめん…私は、ここにいる」
皆が彼女の言葉に目を見開く。
「ディア姉に教えてもらった。
“強さ”って、誰かのために使うもんなんだって」
リリムが静かに微笑む。
「だから、私は私の意思で戦うよ。
アルシェリアと、ここにいるみんなを守るために」
ディアボラは無言で彼女の頭を撫でた。
そして、夜も更けて。
レオルがぽつりと呟いた。
「そろそろ……“終わり”を考えないとな」
「え?」
ミルが驚く。
「もちろん、悲観してるわけじゃないよ。
俺たちがここまで来れたのは、間違いなく奇跡だ」
「でも、この世界の“創造”には、終わりがあるってこと?」
セラが真剣な目を向ける。
「ああ、どこかで“決着”をつけなきゃいけない。
俺たちの存在が、ただの干渉じゃなく、“未来”そのものになるように」
その言葉に、全員が深く頷いた。
戦う理由は、それぞれの中に確かに根付いていた。
仲間のため。
守りたい日常のため。
かつての自分を超えるため。
そして、未来を奪わせないために。
「あぁー、あとそろそろ“のんびりスローライフ”したいなぁ、って思ってね…ダメ?」
レオルのその言葉に、みんな大爆笑して、、
「「「スローライフ!オッケー!!」」」
◇ ◇ ◇
その頃、未来王都・魔導研究区。
「やっぱりあいつらじゃダメだったか…」
「……準備は整ったか?」
冷たい声が響く。
義手の男と黒髪の少女、、
未来から来た軍服の2人組が、再び姿を現していた。
「世界創造の過程にある“神性”は、今こそ奪える段階」
「旧神さえも干渉しなくなった今、空いた“座”に我らが名を刻む時だ」
二人は魔導炉の前に立ち、未来技術で解析された異物を取り出す。
それは、“時間跳躍式召喚装置”。
「呼び出すのは、“未来で神すら滅ぼした存在”……」
「特異存在•《ヴァル=サンクション》
記録されなかった“絶対存在”」
機構が展開し、時空が震えた。
「神でもなく、旧神でもない。完全な逸脱者を召喚し、レオルの“創造世界”を支配する」
未来王都の奥深く。
かつての王女の居城だったその場所から、時空が黒くひずみ、忌まわしき“存在”の輪郭が浮かび上がっていた。
世界は、静かに終わりへと向かい始めていた。
続
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