第58話 【逆行者とタロットの凶兆】
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その時は“過去”から滲み出すように、忍び寄っていた。
アルシェリア全域を包んでいた“選定の波動”が消えたその日。
仲間たちは再会を果たし、束の間の平穏を噛み締めていた。
だが、、
「んー?……これは、時間の“巻き戻り”?」
ノアの記録紙が警告を発する。
「時空干渉……未知の“時間操作”による存在。
まさか、もう次の旧神が……」
その瞬間、空がひび割れる。
星の瞬きが“反転”し、昼が夜に、夜が“過去”へと変貌した。
「こいつは……嫌な感じだな……」
ルーナが呟いた。
“それ”は、時間の裂け目から突如現れた。
長身痩躯。仮面をつけ、漆黒のマントを羽織るその男の手には、一組の“タロットデッキ”。
手にした一枚をゆっくりとめくり、静かに言う。
「運命•(フェイト)、、
逆位置•《The Tower(塔)》」
次の瞬間、周囲の地形が“創造直前の一日前”に巻き戻され、建造物が自壊する。
「こいつ……未来じゃない、“過去”を武器にしてる……!お前誰だよっ!」
ミルが驚愕する。
「くっくっ!!では名乗ろう!!」
男は淡々と語る。
「我が名は《リヴァーサー・メルカデス》。
時間に選ばれし、“終焉の調停者”」
「この“創られた世界”が、“破滅へと向かう未来”を持つのなら……私はその“起点”を逆行し、未来を閉ざす。我が主人の命を受け、貴様たちを屠る!」
「いきなりふざけんな……!」
バンザイが前へ出る。
「せっかく作った“今”を、てめぇの都合で消されてたまるかよ!」
だが、メルカデスが次のカードを引いた瞬間、、
「逆位置•《The Fool(愚者)》
未来への冒険、始まらず」
バンザイの動きが一瞬止まり、“最初にここへ来た時点の状態”へと巻き戻される。
「ぐっ……! な、なんだ今の……体が……戻って……!?」
「貴様は今“始まりの時点”に縛られた。
お前が“出会った意味”を否定すれば、お前の行動もまた無意味と化す」
「ちょっと待って! それって……!」
ノアが叫ぶ。
「このままじゃ、“仲間との関係”ごと巻き戻されていく……!」
そして次のカードが宙に舞う。
「正位置•《Death(死神)》
断絶。連なりは切断され、存在は孤立する」
重力が一変し、空間が裂けた。
リリムとセラ、ファルとエルフィナの距離が、“歴史”ごと断絶されていく。
「くっ……全員、“記憶ごと切り離されてる”の!?」
メルカデスの足元に、カードが円陣を描く。
それぞれが、【時間の重大な分岐点】に対応しており、めくられるたびに“記録”が書き換わっていく。
、、、だが、そのとき。
「お前なぁ……いい加減にしろよ!!」
レオルが一歩、前に出た。
「お前の言う“歴史”ってやつは、全部“出来上がった世界”の話だろ!」
「けど俺たちは……“未完成のまま”で、、
それでもこれから“創ってく”って決めたんだ!」
神核が光を放つ。
「[原初神創造式]•展開、、
“時間の再定義”を行う!」
レオルの背後に“存在の系譜図”が現れた。
出会い、戦い、記録、失敗、再会、許し、、
そのすべてを、“出来事”として“創り直す”権限を発動。
《[概念創造]《未来因果•インパクト・クロニクル》
それは“時間”という線を、“出来事の集積”として塗り替える力。
「お前のくだらないカードが“過去”を引くなら、、」
レオルが叫ぶ!
「こっちは、“新しい未来の創造”をお前に叩きつけるまでなんだよッ!!!」
《超概念創造拳:レコード=ブレイカー》!!
拳が、未来から逆算された“確定事象”を破壊する!
カードが砕け、時間の歪みが“揺らぎ”に変わる。
「不可能……私のタロットは、“時間そのもの”に選ばれて……!」
「“選ばれた未来”じゃない!
俺たちは“選ぶ未来”を信じてるだけだ!!」
背後で、ファルが叫ぶ。
「この強烈な一撃、記録しておくよ……
“創造者による、因果の打破”としてね!」
レオルの拳が、タロットの中心に届いた瞬間。
「主人よ、、すまない、任務は遂行出来なかった、、我らの、ゼクス様の未来に幸あれっ!!」
すべてのカードが砕け、リヴァーサー・メルカデスは時の裂け目ごと消滅した。
みんなの記憶は戻り、仲間との絆も再び繋がった。
◇ ◇ ◇
戦いの後、ファルが静かに言った。
「……彼は、未来を恐れていたんだ」
「未来を信じられなかった者が、“過去”にしがみつく」
ルーナが呟く。
「けど、俺たちは、、」
レオルが空を見上げる。
「“創造者”だからな。どんな未来だって、自分たちで創れるさ」
空は、再び穏やかな蒼を取り戻していた。
続
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