第55話 【選定の扉と、決意の灯火】
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その夜。
アルシェリアの空に、ふたたび“星”が浮かんだ。
レオルたちの創造が進み、空と大地に“記憶”と“意味”が根付いてきた証だった。
「うわぁぁぁ……また星が増えた!」
ミルが空を見上げ、瞳を輝かせる。
「これは私たちが創った星……じゃないけど、創造によって“空”という概念が広がったから、星も存在できるようになったってことかな?」
「星は……私たちが下を向かないためにあるんだと思う」
セラが静かにそう言い、氷の羽をゆっくり揺らす。
「昔は、氷の谷で空なんてろくに見られなかった。
でも今は……こうして皆と、夜空を眺めていられる」
「ふふん! いい雰囲気ねぇ♡
……誰か、手でも握りたい気分にならない?
ねぇ♡ レオルぅ♡?」
ディアボラがにやりとレオルの肩に爆乳を乗せ、手をかけるが、
「んー?腹減ったなぁ〜!バンザイなんか作ってよ」
「えぇぇぇん、、ムードッ!」
その声を聞き、バンザイが立ち上がり、何やら大きな布を広げた。
「よーし! ちょいと早いが、“夜の屋台”開店すっぞー!」
「夜の屋台……?」
ルーナが首を傾げると、バンザイは誇らしげに語り出す。
「昼はディアボラが肉と乳を提供したからな。
今度は俺が夜の味を披露する番よ!」
「いろいろ言い方がおかしいけど……楽しみだね☆」
ミルがはしゃぎながら近づくと、香ばしい匂いが漂い始める。
焼いた獣肉に甘辛いソース、そして不思議な果実を和えた冷製スープ。
「この世界の素材も、だいぶ揃ってきたなぁ……!」
ファルが軽く笑いながら、木のスプーンでスープをすくう。
「味も、観測しておくとしよう。舌の記憶って、結構あなどれないからね」
「おかわり自由です!」
ノアが腕まくりをして、補給係に回る。
レオルは、その様子を眺めながら思った。
、、これが、みんなで創った世界の“日常”なんだな。
争いのない時。笑い合う仲間。炎の明かりに照らされた、何でもない夜。
でも、それが何よりも尊く、守りたいものだ。
「俺たちは、まだまだ創らなきゃいけない。もっと……こういう時間を」
レオルが小さく呟いたとき、、
風の流れが変わった。
「……来る」
ノアが顔をしかめ上げる。
「次の“選定の扉”が、アルシェリアに干渉を始めてるわ」
「“扉”って……また、試練か?」
「うん。しかも……今度は、“創造された未来”の正しさじゃなくて、、“それを誰が担うか”を問う扉よ」
「担う……?」
「選定神《アイン=グラウス》“役割を定める神”。
彼は、創造者の仲間ひとりひとりが“どんな立場であるべきか”を判断する存在」
レオルたちの間に、緊張が走る。
「つまり、仲間であっても、“役割不適合”とみなされれば……?」
「選ばれなかった者は、“創造世界からの除外”対象になるわ」
その場が静まりかえった。
、、仲間が、外されるかもしれない?
、、この世界に、いられなくなるかもしれない?
「ふざけんな……! 役割だの何だの関係ねぇ!」
バンザイが吠える。
「全員でやってきたんだ! 誰がいても、欠けてもダメなんだよ!!」
「……でも、選定神は“理”しか見ない。
情や絆じゃなく、配置と構造しか見ない神よ」
ノアが静かに言う。
「なら、俺たちがその“理”すら超えて見せるだけだろ?」
レオルが、ゆっくりと立ち上がる。
「この世界を創ったのは、俺たちだ。
決して“俺一人で”創ったんじゃない」
「ミルが知識を、セラが癒しを、ディアボラが力を、バンザイが笑いと料理を。ノアが記録を、ルーナが気配を、ファルが……未来を教えてくれた」
「……リリムも、だよね」
ミルがぽつりと呟く。
「うん。もちろん!リリムも……少しずつ、自分の足で歩き出してる」
レオルは火を見つめながら、仲間たちを見渡す。
「一人も欠けさせない。“全員で創った世界”だから。 全員で立つんだ、選定の前に」
「当然でしょ♡私たち、家族みたいなもんじゃない♡」
ディアボラがにっこり笑った。
「大丈夫。試練が何であっても、私は“レオルの仲間”って誇りを持ってるから!」
「うん、私も! わたしがいることで、この世界がちょっと優しくなれたら……って、いつも思ってる」
セラが静かに寄り添う。
夜風が吹いた。
世界は変わろうとしている。
でも、その中心には、、一つの灯火があった。
それは、創造者たちが歩んできた記憶。
交わした言葉。築いた絆。守った笑顔。
「行こう、“選定の扉”へ」
レオルの一歩とともに、全員が立ち上がる。
、、たとえ“理”に否定されても、
、、俺たちは、俺たちの“意味”で戦う。
新たなる試練の幕が、音もなく開かれようとしていた、、。
続