第54話 【神々の選定、そして“創世の敵”の影】
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アルシェリア、創造の核心領域。
レオルたちは“記憶の番人”アウレリアを目覚めさせた。
その存在は、ただ強大なだけではない。
世界の“記憶そのもの”を再編できるという、旧神すら畏れた力を宿していた。
「ほら…選定が始まるよ」
ファルが口を開いたのは、アウレリアの封印解除から少し経った朝だった。
彼の拒絶式が、大気の揺らぎから“神性の波”を読み取っている。
「一体……何を、選ぶっていうの?」
ノアが記録紙を捲りながら問う。
「決まってるさ、“次なる秩序”の主を、だよ」
ファルの声音は、どこか張り詰めていた。
「旧神の敗北は、“空位”の誕生を意味する。
その瞬間、かつて神々に仕えていた“中位存在”たちが目覚める」
「それが、“選定者”たちよ……」
アウレリアがそっと呟いた。
彼女は、すでに幾つかの“波”を感じ取っていた。
「彼らは旧神の継承を競い合う。“神位”を奪い合うために……この世界に現れる」
「それって……」
セラが言葉を飲む。
「また、戦いになるってことだよ」
ルーナが低く言い放った。
、、、そのとき。
アルシェリア上空に、“三つの“神印”が現れた。
それは雲を裂くような光の輪。
まるで空が“意志”を持ったかのような神々しさ。
「来たわ……“神々の選定”が始まる」
ノアが立ち上がる。
◇ ◇ ◇
その日、アルシェリアの各地に、三名の使徒が現れる。
一人は、白金の鎧を纏う戦女神。
もう一人は、無貌の仮面をつけた数式の使徒。
そして最後に、異形の幼子の姿をした“死と再生”の化身、《エフ=ラーグ》。
彼らは口々に言う。
『この世界に“意味の座”を設ける。
創造の資格がある者よ、名乗りを上げよ』
『この世界の神々の座は空白だ。
ならば、その権利を持つ者が、新たなる“神”となる』
まるで、神になる“試験”が始まるかのようだった。
「選定……?つまり、“レオルが神の代行者になれるか”試すってこと?」
ディアボラが身構えながら言う。
「そうだね。でも、それだけじゃないよ」
ファルが続けた。
「この選定に、“創世の敵”も干渉してくる。
旧神ですら存在を避けていた、“無名”の存在がね」
「“神ですら知らなかった敵”……?」
レオルが呟く。
アウレリアが歩み出る。
「記憶には、ほんの一行だけ、書かれていたわ。
“名前なき破壊者”、、
記録も観測も拒絶し、存在だけが痕跡を残す者」
ノアがハッとする。
「記録にも拒絶にも反応しない……それ、観測不能な“喪失の核”……!」
「その存在が、この選定の場に現れたら?」
ファルは、微かに震えていた。
「秩序は崩壊し、“創造”そのものが喪失する。
選定とは、神を選ぶ儀式であると同時に、“敵”の侵入を許す契機にもなる」
沈黙が落ちる。
「んー?……じゃあ、やるしかないってことか?」
レオルが拳を握った。
「この世界を、想いと意味で守る。
そのために、俺は……この選定を受けて立つ!」
◇ ◇ ◇
その夜。
レオルは一人、星のない空を見上げていた。
隣には、そっとアウレリアが座る。
「あなたは、変わってるわね」
「んっ?そうか?」
「創造者って、もっと冷たいものだと思ってた。
記録を壊せる私を、怖がると思った。でも……」
アウレリアは小さく笑った。
「あなたたちは、“私の過去”じゃなく、“これからの選択”を見てくれてる」
「あははっ!そういう奴らばかりさ。
仲間って、そういうもんだろ!」
アウレリアは、手を胸に当てる。
「この胸にある記憶は、もう“兵器”じゃない。
今は……“想い出”として、ここにある」
「なら、それを守ろう。一緒に!」
レオルが優しく言った。
「たとえ、神だろうと、敵だろうと。この世界は、
“俺たち”の手で創る」
、、選定の刻は迫る。
新たな敵、選ばれる神、記憶と意味を巡る戦いが、再び始まろうとしていた。
続