第53話 【星の下、もう一度あの村で】
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それは、“世界が少し落ち着いた日”のこと。
レオルは、静かな湖畔のほとりで、空を見上げていた。
創造されたばかりのアルシェリアの夜空に、“星の芽”と呼ばれる光が浮かび、それを反射して水面が優しく揺れている。
「……村のみんな、元気にしてるかな〜?」
ぽつりと呟いたその声に、背後からぴょこりと角が飛び出す。
(それ、わたしのセリフ~!)
「わっっ!ポポ!? なんでここに!?」
振り返ると、そこには懐かしき、魔獣•ポポが立っていた。
モフモフの先に花を咥え、丸い目でにこにこしている。
(来たよーっ! “次の世界”って聞いたから、匂いクンクン嗅いで、村のみんなと一緒に!!)
後ろから、懐かしい顔が次々と現れる。
薪割り担当、畑の精霊、鍛冶屋、木工職人、そしてパン屋さんまで。
「「「レオルさーん! やっと会えた!」」」
「遅れてすまん! アルシェリアって場所、なんか空が不思議でな……ポポに匂いを辿ってもらって、やっと来たんだ!」
「ふふ、けどここ、本当いい匂いがする。
レオルの作った村の匂いだねー」
皆が口々にそう言って、レオルの周りを囲んだ。
「うわぁ……みんな、、
ほんとに……来てくれたんだな!
てか、ここに来れるポポ凄いな…」
レオルは、こみ上げる感情をこらえきれず、満面の笑みを浮かべた。
◇ ◇ ◇
そしてその日、、、
アルシェリアに“第二の村”が正式に創られた。
名を、「カミノソラ村(仮)」
創造の拠点から少し離れた、小さな川のそばに、レオルが創った温かな土地。
最初に植えられたのは、ポポが持ってきた“思い出の木”。
かつて旧村にあった、大きな花を咲かせるあの一本の木だった。
(根っこはね、ちゃんと覚えてるんだよ。
どんな場所でも、大事な人の気配を)
ポポは大きな前足で穴を掘り、苗を植えながら言った。
(ここでも、また咲くね)
レオルは、そっとその苗に触れ、
「ああ、咲かせよう」と答えた。
◇ ◇ ◇
その日の夕方。
村の広場では、久しぶりの“食の祭典”が開かれた。
「焼ききのこの実ー! 焼きフルーツ! 創造野菜のグリルだよー!」
「バンザイさんの鍋からまた湯気出てるぅ! 超でっかい鍋!」
「焼きたてパン、焼きたてパンだよぉ~!」
笑顔、笑顔、笑顔。
湯気と匂いと光に包まれ、世界は“失った何か”を取り戻したようだった。
セラは湖に浮かぶ氷のランプを創って、夜の宴を照らし、
ルーナは村の子供たちと影のかくれんぼをして遊んでいた。
ディアボラとリリムは、“爆乳組”として胸比べをしていたが、ポポはディアボラの爆乳に顔をうずめ、、
(久しぶりのおっきいと柔らかさの共演、ディアボラ優勝)の一言で場が和む。
エルフィナは静かに焚き火を見ながら、
「あーあ!……こんな時間が、永遠に続けばいいのにね」と小さく呟いた。
その隣で、ファルがそれを記録しながら笑って言う。
「永遠にできるように、きっと僕たちが作っていくんだろうね」
ミルは、ノアと一緒に“星の芽”の観測ログを村に転送していた。
「ほら、みんな見てー。この光……これが、私たちの“未来記録”だよ♪」
「記録は、“未来”に残すもの。
でも、思い出は“今”を重ねるもの」
ノアの言葉に、ミルがにっこりと笑う。
そして、夜が更ける頃。
レオルは湖畔に座り、ポポと並んで空を見上げていた。
(レオル、どうしてこの世界を作ろうって思ったの??)
レオルは少し考えてから、答えた。
「みんながさ……帰ってくる場所が欲しかったんだ。
戦いのあとも、泣いたあとも、どんなに世界が壊れても。
……戻ってきたら、“ただいま”って言えるような場所」
ポポはしばらく黙って、それから微笑んだ。
(うん。じゃあ、言うね)
(ただいま、レオル)
レオルも、肩をすくめながら返す。
「おかえり、ポポ」
星の下。
生まれたばかりの世界で、小さな“永遠”が確かに始まっていた。
続