第43話 【旧神の祭司と、知恵の鍵】
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その日、泉ルミナの光が微かに陰った。
リリムが気づいたのは、朝の祈りの最中だった。
「……あれ、光の流れが……少し、違う……?」
泉の水脈に微細な“逆流”が起きている。
すぐさまノアが解析に入り、顔を曇らせる。
「アルシェリアの創造波が“何か”に干渉されている……!」
「干渉……つまり、“外部”から引かれてるってことか?」
レオルが顔を上げたとき、空に“灰色の瞳”が浮かび上がった。
それは一瞬だった。
次の瞬間、空間が割れるように“門”が開き、一人の人物が現れる。
「……ようやく会えたな、“創造者”よ」
現れたのは、黄金の仮面を被った男
《ゼル・エグレイル》
全身を黒と金の僧衣で包み、異様な威圧感を放っていた。
「あんた……魔族じゃないな……」
ディアボラが一歩前に出る。
だが、ゼルは笑わない。
「我は《旧神の祭司》、、
失われた神々の記録を継承する者だ」
「旧神……!」
ノアが目を見開いた。
「まさか、“観測系統外”で神の記憶を保持していた者がいたなんて……!」
ゼルはゆっくりと、泉の前へ進み出る。
「これはこれは、見事な“始源”だ。
この泉は、創造の純度が高い……
だが、その分、非常に“壊れやすい”」
「なんだ?警告しにきたのか?」
レオルが警戒を強める。
「いやいや、、ただの“忠告”だ」
ゼルは静かに手を差し出す。
「アルシェリアを“守りたい”のであれば、我が手を取るべきだ」
「どういうことだ……?」
「“創造”には“鍵”が要る。
その鍵は、神々の記憶を継ぐ“知恵の書庫”、、
旧神の遺跡に封じられている」
「つまり、その鍵がなければ、アルシェリアは完成しないってこと?」
ミルが訊ねると、ゼルは仮面の奥で目を細める。
「創造とは、幾重にも重なる積み重ねだ。
古きものを知らずして、新しき世界は描けぬ。
……それが“神の失敗”だった」
レオルはしばらく沈黙した後、問う。
「その“鍵”を手に入れたら、俺たちはどうなる?」
「すべての選択肢を得る。
創造の完成も、破壊の統制も」
「……あんた、一体何が目的なんだ?」
「我の目的はただ一つ。“知恵”の継承だ。
旧き神々の思想と記録、それを次代の創造者に託す」
そして、仮面の奥からぽつりとこぼれた。
「……我々は、神々の“最期”を見た。
ゆえに、お前たちに賭ける価値があると判断した」
その言葉に、仲間たちがざわつく。
「信用できないけど……でも、知識は欲しいわね」
ノアがぽつりと呟く。
「このままだと、アルシェリアの“深層”は未完成のままになる。エネルギー構造が不安定よ」
「だったら、行くまでだな」
レオルが静かに言う。
「この世界を創った以上、その“礎”を知る責任がある」
「ふっ……良き覚悟だ」
ゼルが僅かに口元を緩めた。
「では、案内するとしよう。
“知恵の扉”の元へ」
その瞬間、泉の奥にあった岩盤が裂け、地下への“螺旋階段”が現れた。
「まさか、泉の下に通じていたとは……!」
「ははは!驚いたか?神の創造物は、常に“下”に秘密を持つ」
階段の先に広がる、太古の遺構。
壁一面に古代神文が刻まれ、記録のオーブが宙に浮かぶ。
レオルたちは、一歩ずつその空間へと足を踏み入れた。
その奥、誰かの気配があった。
「……ようやく、来たか…ずいぶんかかったな、、」
低く、力のこもった声が響く。
影の中から現れたのは、白銀の甲冑を纏った人物。
その瞳は、どこかレオルに似ていた。
「お前は……?」
「かつて“神”の片割れとして創られた者。
“記録されなかった創造者”、、《ゼロ・エルド》」
レオルの足が止まった。
「お前……名前が……何故か知ってる?」
「そう。“レオル”と“ゼロ”、、、
我らは、原初の“創造双子核”だ」
仲間たちが息を呑む。
「まさか……レオルに“対”がいたなんて……!」
「この記録は観測されていない……世界すら、知らなかったのか……」
ゼル・エグレイルが静かに言った。
「これより始まるのは、“記憶の階層”を巡る試練。
お前たちは、自らの記録と向き合い、創造の“知恵”を得ねばならぬ」
「……“過去の記録”を読み解く旅か」
レオルが目を細める。
「ははっ面白い。、、やってやろう!」
仲間たちも、一人、また一人と頷いた。
こうして、、レオルたちは、“旧神の知恵”へと挑むことになった。
その先にあるのは、創造の深淵か、破壊の真理か。
続