第41話 【決別の一矢、リリムの選択】
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それは、まるで“儀式”のようだった。
《アルシェリア所有権決闘》と名付けられたこの戦いは、ただの力比べではない。
“この世界が誰の手にあるべきか”を示す象徴的な戦いであり、相手を倒すことよりも、理念を問う“公開の意志表明”だった。
レオルたちは、村の西に新たに創った決闘場に立っていた。
円形の闘技空間。その中央には“創造の石碑”があり、勝者には一時的なアルシェリアの主権が与えられるという、、
対するは、魔族軍団。
先陣は“裏切りの粛清者”
《厄災の魔王•爆焔姫グロリア》
そして、その後方には、、
《イシュ=ヴァルト》、《ゼルダ》が控えていた。
「まさか、本当に受けて立つとはね。あんたたち、面白すぎでしょ」
グロリアは楽しげに双剣を構える。
「おあいにくさま。“面白い”がこっちの本質なんでね♡」
ディアボラがにやりと返すと、火花が弾けた。
「では、戦闘開始!!」
ノアの宣言と共に、戦いが始まる。
まず飛び出したのはグロリア。
紅蓮の大剣【爆裂双断刃】を振り下ろす。
迎え撃つはディアボラの拳、【紅蓮獄鎚】!
炎が天を裂く中、レオルたちも周囲から援護に入る。
セラが氷壁を張り、ミルが魔法陣を重ねる。バンザイが飛び跳ねながら敵の側面を撹乱していた。
だが、、
その背後に、もう一人の影があった。
「……リリム、、何故そちらの味方につく?
私が頼んでいた、“創造者の始末は”、、?」
イシュ=ヴァルトが静かに娘に呼びかけた。
リリムは強い目でイシュ=ヴァルトを見る、、。
「ふふっ、決めたのね。なら来なさい。
あなたは私の“娘”であり、“魔族の血統者”。
この場に立つべきなのは、あの“人間たち”ではなく、私たち魔族なのよ!」
その声に、リリムの肩が震える。
「ずっと……あなたの背中を見てた。
強くて、美しくて……魔族として、魔族である事が誇りだった…」
「なら、なぜ魔族を裏切るような真似をするの?」
イシュの言葉に、リリムは拳を握った。
「、、でも、私は、あなたに聞いて欲しかった。
“母親として”……一度も、私の話を聞いてくれたことなんかなかったじゃない!」
イシュが目を見開く。
「私ね、本当は魔族の力なんて怖かったの。
だけど、あなたが言うから、強くなろうとした。
けど、違った……
私が本当に欲しかったのは、“誰かと一緒に笑える強さ”だったの!!」
リリムが、レオルたちの方を見る。
ディア姉、セラ、バンザイ、ミル……皆が笑ってくれた。
「ここで私は、“自分で選ぶ”。
あなたじゃなく、私の生き方を!」
次の瞬間、リリムの背から漆黒の羽が広がった。
「[影喰い(シャドーイーター)]……!」
ルーナが思わず息を呑む。
「それは……魔族の影術と、レオルの創造術を混ぜた……!」
「そう。これが私の新しい力、、ここで見せる!」
リリムの手に黒炎の矢が生まれた。
狙いは、イシュ=ヴァルト。
「いくよ、お母さん、、!」
「……来なさい、リリム」
母と娘、血を分けた者同士の一撃が交差する。
黒炎の矢と、黒炎の鞭がぶつかり、空間がねじれる。
だが、押し返したのは、、、
リリムだった。
矢は地面に突き刺さり、巨大な黒花を咲かせる。
それは、怒りではなく“悲しみ”を燃やした火だった。
「……強くなったわね」
イシュが初めて、母の顔で呟いた。
「けれど、私たち魔族は退かない。
これは“侵略”ではない。“奪還”なのよ!」
「お母さん、、それでも、、私は、もう戻らない!」
リリムの叫びと同時に、地面が揺れる。
その中央、石碑が閃光を放ち、全域に「意思」を問う声が響いた。
『アルシェリアの所有権を求める者たちよ。
その“心”が、真にこの世界の未来を願っているかを、今、問う、、』
その時、リリムの矢に込められた“感情”が石碑に届いた。
その光が、レオルたちの創造記録と共鳴する。
『判定、、レオル=アーク陣営、意志確認。
創造と共存を望む未来、認定。』
爆発のような光とともに、石碑が青白く輝く。
、、それは、レオルたちの勝利の証だった。
「勝負あり、ですね」
ノアが静かに告げる。
イシュはしばらく立ち尽くしていたが、やがて背を向ける。
「……これが、あなたの選んだ“未来”なのね。
なら、せめて強くなりなさい。後悔しないように」
そう言い残し、イシュ=ヴァルトは虚空へと消えた。
「……お母さん……ありがとう」
リリムは涙を拭いながら、仲間たちのもとへ戻っていった。
「おかえり、リリム♡」
ディアボラがそっと頭を撫でた。
「うん、ただいま……♡」
その夜、レオルたちはまた一つの勝利を祝う。
けれど、それはただの勝利ではなかった。
“誰かが、誰かのために、居場所を選んだ”、、
それが、アルシェリアに刻まれた最初の“人の歴史”だった。
続