第38話 【星と誓いのアルシェリア】
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──夜が、静かに明けようとしていた。
戦火の名残がまだ地を温めるなか、レオルたちは村の広場に集まっていた。
魔族の撤退から一晩。
アルシェリアは、確かに“守られた”のだ。
「ふわぁ……ようやく落ち着いたぁ~……♡」
ディアボラが焚き火のそばで大きく伸びをする。
「油断は禁物だけど、今回は本当に……よくやったな」
レオルが笑みを浮かべ、仲間たちに視線を送る。
夜空には、まだ星がない。
それでも、その空はどこまでも澄んでいた。
「そういえばさ〜……」
ミルがそっと手を空に上げる。
「この世界には、まだ“星の輝き”がないんだよね?
なら、、今夜から、名付けて輝かそうよ!」
「んっ?名付け?」
レオルがきょとんとする。
「うん。だって、ここは“創ったばかりの世界”でしょ? だったら、名前をつけて、記録して、それをみんなで覚えていけば、もう“私たちの空”になるじゃん!」
「あははっ……いいね」
ファルが笑う。
「“観測”は存在を定義する。
名前をつければ、星は“在る”ことになるね」
「なるほど。なら一番明るいのは……《ミル星》だなっ!」
「えっ、私!?」
「ああ!発案者の特権だよ」
セラは静かに星のない空を見上げながら呟いた。
「じゃあ……この空の東に、一番小さく輝く星を……《セラの祈り星》に」
「そうだな。それじゃ、俺は“でっかいヤツ”を《バンザイ恒星》にするわ!」
「えっ……それって、恒星の使い方あってる……?」
「気にすんな! 我はでっけぇから!」
ルーナがぼそりと呟いた。
「……なら、私は《ルーナの月影》。
誰も見ていなくても、ちゃんと“そこにいる”って意味で」
「意外にロマンチックなんだな…」
「うるせー!パンダッ!!」
ノアは記録紙を開きながら、このやり取りを満足そうに記していく。
「この瞬間、この記録が“星図”になる。
神の観測ではなく、私たち自身の、、“未来の地図”よ」
最後に、レオルが手を挙げた。
「じゃあ、俺も!
空の中央に……一番目立つ星を、《希望》って名付けよう」
仲間たちが顔を上げる。
「希望……?」
「俺たちは、いろんな過去を抱えて、争って、でも……今、同じ世界を見てるだろ。
なら、その中心にあるのは、“希望”であってほしいって思うんだ」
「レオルらしいな」
エルフィナが微笑んだ。
「あなたがいたから、私は今ここにいる。
私の望む星も、“希望”って名前をつけるよ」
仲間たちは笑い合い、やがて一つの輪になる。
レオルは手を前に出し、全員が手を重ねた。
「この世界を守る。“アルシェリア”を、争いのない場所にする」
「“共に創る”、だね」
ファルが静かに続ける。
「“名前のある世界”は、“守る価値のある世界”になる」
ノアもまた、記録紙にその誓いを刻む。
その時だった。
空に、一つの光が走った。
白く、小さく、でも確かに揺らめくそれは、、
“最初の星”。
「……見えた!」
セラが指さす。
「……これって、本当に……星?」
「いや、違う。これは“星になろうとしてる光”だよ」
ファルが答える。
「私たちの想いが、“空に現象として刻まれた”んだわ」
ノアが解説する。
それは、確かに始まりの印だった。
“世界を創る”とは、戦いではない。
名前をつけ、笑い合い、守り合うこと。
それこそが、レオルたちの“創造”の本質だった。
その夜。
レオルは一人、丘に立っていた。
星のない空に浮かぶ、たった一つの光。
「……ありがとう、みんな」
彼はそっと夜空に手を伸ばし、呟いた。
「俺は、“モンスター”として生まれて、“半神”になって、、
でも、本当に欲しかったのは、“ただ誰かと笑い合える場所”だったんだなぁ」
彼の掌に、再び創造の光が宿る。
「この世界を、もっと輝かせよう。
仲間たちと共に、、“希望を描く創造者”として」
そして、彼の背後に、そっと仲間たちが集まってきた。
「な〜に、ひとりでカッコつけてんのよ♡♡」
ディアボラが抱きつくように、胸をぎゅうぎゅうと押し付け肩を抱き、、
「レオル、早く戻ってよ☆夜食、作ってるんだから」
ミルがスープを掲げて笑う。
「“祝、みんなの星記念”の、夜食だよ!」
レオルは笑った。
「あははっ!!そうだな……行こう。
一緒に“星を作った仲間たち”のもとへ」
こうして、新たな夜が始まった。
名もなき空は、名前を与えられ、、
“希望”という最初の星を灯した。
レオルたちの旅路はまだまだ続く、、
続