第10話 【王国の目と、二刀の料理人パンダ】
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村を訪れた謎の仮面の男、、、王国の調停者。
彼が去ったあと、村には静かな緊張感が流れていた。
「……王国が、この地に興味を持った」
レオルは村の中央に全員を集め、そう伝えると、ミルやセラ、エルフィナの顔に不安が走る。
「やっぱり……見つかっちゃったのか」
「うう……こわいよぅ。戦争とか、イヤだよぉ」
「大丈夫だ。今すぐ何かが起きるわけじゃない。ただ……備えは必要だな!」
レオルは創造スキルを使い、村の周囲に簡易的な防壁と見張り台を構築した。
さらに、地下に避難通路となる通路も掘り進めていく。
だが、、村に足りないものはまだ多い。
「戦う力も足りねぇ。なにより、食料が単調すぎる…」
「ひどっ! あたしの実スープが単調って言った!?」
「いや、ありがたいけどな!? でも体力が必要になってくると、さすがにタンパク質とか……」
そのときだった。
森の方から、ドッゴーン!という爆音とともに、煙が立ち上がった。
「な、なにごとっ!? また魔物!?」
「ふぅ、……ちょっと行ってくる」
レオルはそう言って、駆け出した。
向かった先にいたのは、、、
モフモフの、どでかい、白と黒の毛並み。
腹にはエプロン、背中には二本の刀。
そして手にはフライパンを持ち、倒れた巨大イノシシの上に誇らしげに立っていた。
「……なんだ、あいつ」
レオルが思わず声に出すと、パンダらしきその存在はくるっとこちらを振り返った。
「やぁ! ここらに“文明の匂い”がしたから来てみたら……案の定、何か始まってるじゃないか!」
「お、お前は……誰だ」
「俺の名前はバンザイ! 旅する戦闘料理人、兼・自称最強の二刀流パンダさ!はーはっはっ!」
「なんだその肩書き!?」
パンダのバンザイは大笑いしながらイノシシを持ち上げる。
「こいつ、調理して振る舞ってやろう。
挨拶がてら、村に一品献上させてくれ!」
そして、レオルとバンザイは村に帰って行った。
その晩。
村は“初めての宴”に沸いた。
バンザイが調理したのは、香草イノシシのローストと、キノコのポタージュ、焼き果実のデザート。
「んっまっ!!な、なにこれっ! 美味しすぎる!」
「ほわぁ〜ん……これは幸せになる味ですぅ……」
ミルもセラもエルフィナも、幸せそうにほっぺたを落としかけていた。
レオルも静かに目を見張る。
(……うまい。これ、確かにただの旅人じゃねぇぞ)
「バンザイ、お前……只者じゃねぇな…」
「ふははっ! 料理と剣は似てるからな! どちらも“斬るべきもの”を見極めるのが肝心さ!」
バンザイは刀を腰に戻し、ふと真剣な顔になる。
「それに……この村、放っておけない匂いがする。
何か、大きな戦いに巻き込まれそうな“匂い”だ」
「……ああ。わかるか?だから今、仲間が欲しいんだ」
レオルは正直に語った。
「俺は、村を作りたい。モンスターでも、魔族でも、人間でも、誰でも“居場所”を持てる村を」
「はははっ!!……おもしれぇな、それ」
バンザイは、フライパンを肩に乗せながら豪快に笑った。
「じゃあ、しばらく居させてもらおう! 実はこう見えて、厨房だけじゃなく、戦場でもやるときはやるんだぜ?」
その言葉に、村の皆が笑顔になる。
新たな仲間、バンザイ。
戦えて、料理もできる二刀流のパンダ。
そしてその晩、夜空を見上げたレオルは、村の成長を静かに噛み締めた。
(もう一度、ここから始めよう。今度こそ、何も失わないために)
その瞳に宿る光は、まさに“半神”の使命に目覚めたようだった。
続