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17-婚約者として

 トーマは結婚後、新たに公爵を 叙爵して臣籍降下することが決まっている。領地も授かり邸も既に建築済みらしい。


 領地は王都に隣接しており、馬車で片道半日程で行けるそうだ。婚姻の儀は三ヶ月後になった。通常だと準備期間に一年は要するのだが、トーマの強い希望で直近で可能な時期になったそうだ。


 既に第一王子である王太子、第二王子が結婚していることも婚姻を早める事が出来た要因のようだ。


 これまで遠くからしか拝謁出来なかった陛下夫妻を始め、王太子夫妻と第二王子夫妻に挨拶した時はかなり緊張した。晩餐会形式の顔合わせで、あまりにもガチガチの私に気さくに声をかけて下さった陛下の笑顔に安堵した。


 王族の結婚は以前は政略が多かったけど今ではそんなことはなく、殆どが恋愛結婚らしい。どうしても伴侶が見つからなかった場合だけはお見合いとかするそうだが、陛下夫妻を始め、王太子夫妻、第二王子夫妻も恋愛結婚のせいか、それぞれのカップルの周りにはハートが飛び交うほど甘々だった。


 そうか、トーマは彼らの様子に感化されて私に対しても甘い態度を取るのかと納得してしまった。


 正式に婚約して1週間程が経ち、今日から私は王子妃教育が始まった。何れは公爵夫人になるとしても曲がりなりにも王族の一員になるのだ。その為、王子妃教育は必須事項となる。


 とは言え、王太子妃、第二王子妃よりも簡易なものらしいが。


 初の王子妃教育の授業を終え、僅かな疲労も感じつつ気分転換の為に庭園を散策していた。王宮の敷地内だけあって、しっかりと手入れされた木々や様々な花で彩られ、まるで絵画のように美しい。


「本当にむかつきますわ。本来でしたら私がトーマス様の婚約者でしたのに」

「そのとおりですわね。アリシア様ほど王子妃に相応しい方はいらっしゃいませんわ」

「きっと、身体を使って籠絡したに違いありませんわ。何てったって下位貴族子爵の娘ですもの」

「そうに違いませんわ。なんて卑怯なのでしょう。まるで娼婦のようだわ」


 私が話し声がしたほうに目を向けると三人の侍女達がお喋りをしていた。彼女達も私に気がついたようだ。足早にこちらに近づくと金髪に翡翠の瞳の女性が目を細めて私を見据えた。


「あーら、噂をすればなんとやら。あなた自分の立場をおわかりなの?」


 私に話しかけているのかしら? 何か見た事が有ると思ったら第二王女セレーナ様の直付専属侍女だわ。高位貴族で私よりも立場が上なのは間違いないわね。えーと確かローラン侯爵のキャロライン様と……後の二人は伯爵家のご息女だったかしら? うーん、私名前覚えるの苦手なのよね。


 なんか私を睨んでいるわね。さっき、トーマの婚約者とかどうとか言っていたけど、トーマは私と婚約する前は誰とも婚約していないって言っていたわよね。


「貴女、どんな手を使ったの?」

「どんな手と言いますと?」

「まぁー白々しい! 今まで何の噂もなかったのに、何で貴女がいつの間にトーマ様の婚約者になっているのかしら?」


 何て答えたらいいのかしら? 前世のことを言うわけにも行かないし……まぁ、なるようになれだわ。ここはトーマのせいと言うことにしてしまいましょ。


「だって仕方が無いわ。トーマは私にベタ惚れなんですもの。私がいないとダメみたいなの。トーマは私にぞっこんなのよね」

「何て図々しい! そんなこと有るわけ無いじゃない! それにトーマ様を呼び捨てにするなんて! もう少しご自分の立場を考えたらいいんじゃなくて?」


 あら、どうしましょ。何だか面倒くさいことになってしまったわ。


「立場を考えた方が良いのは君たちなんじゃないかな」

 困惑していると、私の背後から話題の人物の穏やかに響く声が聞こえたのだった。


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