婚約破棄をした大公殿下の子息のその後
「イザベル、君とは婚約破棄をする」
ザワザワザワ~
ここは、王宮のパーティー、いきなり。婚約者がこの国で、王、王妃の次に尊い王女に、宣言をした。
「理由をお伺いしても?」
「真実の愛を探しに行く」
・・・そう。馬鹿な男ね。貴方が、貴族社会に残るには、この私と結婚して、王配になるのが唯一の条件なのに、今更、他の家門に婿入れなどできないでしょうに、
「いいわ。誰か、婚約の契約書と破棄の契約書を持って来なさい」
「おう、用意がいいな。さすが、イザベルだ」
「・・・・」
「気前がいいな。賠償金は無し。破棄されたのだぞ」
「いいから、早くサインしなさい」
・・・ごねられても困るからね。プレゼントやお茶会も義務程度、愚者の考えることはお見通しよ。
愚者であるお前に破棄されるとは、女が上がるわ。
それに、一応、こいつ、まだ、一代限りとはいえ大公家の息子だからね。
さあ、家に帰ったら、さぞ、慌てるでしょう。見物よ。
フフフフフ
☆大公家
「ふう。母上は、一緒に来た使用人たちと、実家の侯爵家に帰し、他の使用人たちには、紹介状と慰労金を渡し・・・弟妹は、養子縁組でとうに各家に入った。
亡き父上は功績を立てておられなかったから、近い将来、こうなると分っていた。計画が少し早くなっただけだ」
「若、よろしいのですか?」
「ああ、これでいい。イザベルとは昔から気が合わなかったし、俺には王配は無理だ。それに、公爵家出身の護衛騎士と恋仲だ。やだよ。後ろからバッサリ斬られるのは」
大公家では、後始末が淡々と行われていた。
「王家より、使者が参りました!」
「おう、思ったよりも早いな」
使者の口上は、
屋敷を国へ返上すること
家禄はなくなること
婚約破棄を機に、大公家は無くなり。その嫡子である身分は喪失。
「順当だな。早急に屋敷を退散する」
「えっ」
・・・イザベル様の話では、ここで大慌てになって、王宮に殴り込みに来るとのことだが、やけに聞き分けがよい。
しかし・・・
「王命であります。しかし、亡き大公殿下の功績に鑑み。その子息に、男爵位を授けます。領地は辺境開拓村のザクソン村、そこで開拓の指揮を執るように」
「ええ、何故?なんの功績?」
「・・・・文書業務の業績でございます」
「それって、明らかに年功序列的な何かだよね!」
☆王宮
「父上!何故、彼奴に、男爵位を渡しましたか?私に恥をかかせました!惨めな平民生活でも事足りないぐらいです!」
「イザベル、事足れ」
・・・ああ、見限られたか。
「お前は護衛騎士と恋仲であろう!」
「秘めた恋ですわ!」
「・・・王族にプライベートはない。丸わかりだ。宮廷雀どもから庶民にまで、知れ渡っている。せめて、隣国の王子に出来なかったのか?!」
「そんなこと・・」
「ああ、出来ないな。吟遊詩人どもに、真実の愛が実って、護衛騎士と婚姻と広める計画しているだろう」
・・・何故、知っているのよ。
☆10年後、開拓村
「お~よし、よし、良い子だ!」
「パパ、パパ」
俺は辺境に行って開拓の指揮を執った。山林藪沢、之、宝の山なり。
木材、皮、魔物から取れる素材で財を為した。
そして、冒険者ギルトを呼び込み商人も集まり。
税を安くした。
父上から、下級貴族の生活を仕込まれたのが良かったな。
「旦那様・・・その王宮から使者が来ておりますが」
「ええ、ソフィア、追い返してあげられない」
「もう、いると言ってしまいましたわ」
☆
「俺に、王位を継げって、無理でしょう?イザベル女王陛下がいるでしょう?」
「それが・・・女王陛下は、政に疎く。誰の意見も聞きません」
「王配は?護衛騎士がいたでしょう?護衛騎士の後ろ盾の公爵家は?」
「はい、女王陛下と公爵家で争いが起き始めています。王配は、女王陛下の言いなり。その場を納められるのは、貴方様しかいません」
「無理」
・・・俺は断った。一応、先々代の王の血は受け継いでいるから資格はあるだろう。
イザベルは、自分を賢いと思っている。そして、実際に賢い。だから、妥協が出来ない。
「まあ、国が滅んだら、考えるよ。しかし、もし、亡命をしたければ、俺が窓口になるよ。ソフィアを通せば、爵位は下げるけど、隣国で、貴族の身分は保障されるよ」
「・・・分りました」
・・・ソフィアは隣国の公女様だ。森で一行が迷っているときに助けた縁で結婚までした。
これが、真実の愛か?
イザベルは、俺を愚者だと思っている。そう思っているうちは安全だ。
「よし、学校を作るぞ!学校に通う子には、昼飯をごちそうしよう」
俺は、領民を教育した。そして、王都の役人に登用をさせるつもりだ。
イザベルは、各国に、援助と言う名目で、金を配り影響力を強めようとしている。
結果、国内の物価が上昇しても興味を示さない。
いづれ、沸点を超えるであろう。
「さて、俺はこのままでいいや」
やがて、息子の代で、辺境出身の王が誕生することになる。