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大きな荷物の運搬にいかがですか?

「よし! これで大丈夫かな?」


「いいじゃないか。荷台を接続できるんだね」


「そうだよ。金属生命体用の鞍だから金属は使ってない。せっかくだから防衛だけじゃなくて、有効活用してみようって案だけど……こいつは中々ロマンがあるよ」


 僕とシュウマツさんは、出来上がった新しい作品の出来に大いに満足していた。


 続々と発見されている金属生命体だが、今回製作したのは新たなタイプ専用の鞍である。


 金属生命体は虎を皮切りに、Tレックス、ライオン、シャチなどなど……種類はてんでばらばらだった。


 しかしそれは水陸様々な形態を獲得していて幅があるということもできる。


 そこで考えたのが移動手段としての活用法というわけである。


「よしよし……じゃあ、乗っけてみようか」


 鞍は巨大でシート付きだがそのスペースは自動車よりも広いくらいでなかなか快適そうだ。


 僕は大人しくその場に伏せている新種―――トリケラトプスタイプの金属生命体に歩み寄って、新しい鞍を装着した。


 サイズはバッチリ。


 留め具でしっかり固定して、これで準備は完了である。


 鞍を乗せた状態で改めてその巨体を眺めるとすごい迫力で、僕はブルリと思わず震えた。


「僕……小さい頃恐竜に乗ってみたかったんだよ」


 それは本当にとても小さい頃の思い出である。


 恐竜図鑑を見て目を輝かせていたあの頃、遺伝子工学の発展で恐竜が復活するかもなんて話にワクワクしていたのはいい思い出だ。


 しみじみする僕の傍らに浮かぶシュウマツさんも興味深そうにトリケラトプスを観察していた。


「それは何よりだ。この個体はかなり大人しいようだね。角は中々危険そうだが」


「この角が人気があるからなぁ……というか恐竜なんてどこで知ったの?」


「たぶん、君からだ。長く一緒にいれば、影響くらい受けるさ。君が興味がある事なんかは特にね。まぁ私の歩み寄り精神の賜物かもしれないが」


「なんだいそれ? 心が読めるとかそういうこと? そういうのわかる物なのかい?」


 月人の能力みたいなことかな?と首をかしげると、シュウマツさんは似たようなものだと言った。


「うっすらとだがね。そんなに便利なものではないよ。たまに夢で見る感じだ。もちろん知る方法もあるが……とんでもないことがわかると君も都合が悪いだろうからやめておくことにするよ」


「ははっ……それはありがたいかな?」


 精霊達かそれともシュウマツさんにかはわからないが、印象的な思い出が情報として伝わっているということか。


 それなりに交流はしているつもりなのだが、まだわからないことは沢山あって何とも奇妙な気分だった。


 ただ、そのおかげでこうしてメタリックだとしてもトリケラトプスに乗れるのなら悪くない。


 僕は鞍に乗り込むと、トリケラトプスはのそりと動き出した。


「お、お、おお~!」


 鞍が揺れ、ゆっくり視線が上がる。


 生き物の背中っぽい振動に僕は不思議と感動した。


 シュウマツさんは、なじみのない生き物が僕に通用したことがうれしいようだった。


「しかし、こんな大型の生き物がいるなんて君の世界も中々豪快じゃないか」


「ああいや、大昔に絶滅しちゃってるんだけどね。今は化石でしか見れないんだ」


「……私の歩み寄り精神、詰めが甘いな」


「まぁ……歩み寄りは気持ちが大事だから。それに僕はとても嬉しいよ。じゃあさっそくドライブといこう」


 僕はドキドキと高鳴る胸の鼓動を感じながら、しばらくメタルトリケラトプスの背に揺られることを楽しんだ。


 ほんの少し視点が高いだけなのに印象は変わるもので、今日のニライカナイコロニーはいつもより広く見えた。


 「それにしても、ニライカナイはどんどん変わっていくね。もうこれ以上はないだろうと思ってもすぐに想像の上を行く」


 実際その発展速度はすさまじいもので、限られているはずのスペースコロニー内部をよくこんなに変化させられるものだと感心し通しだった。


 ただそれは、リクエストする方にも原因があるらしい。


「ああ、うん。そうだね。君の家の周りなんてカップラーメンの果樹園もどんどん規模が大きくなっているし。私もまったく飽きないよ」


「……うん。シュウマツさんの歩み寄り精神にはいつも助けられてばかりだよ本当に」


 そこのところもまぁ、完全に趣味趣向のお話なのだけれど、こちらはシュウマツさんの思念に若干あきれが含まれて聞こえるのは気のせいだろうか?


 恐竜が良くってカップラーメンがダメだと言うことはないと思うのだけれど、さすがに専用果樹園まで作ったのはやりすぎだったかもしれない。


 僕はとりあえず、いつか恐竜の上でカップラーメンが食べたいななんて明日にでも実行できそうな夢を夢想した。






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