宇宙王者メタルキング
なんだか決闘みたいな流れになってしまったが、その場の勢いということもある。
謎の生命体同士の宇宙戦争は収まったのだし、これ以上続けるのか確認に行ったところ、青い髪の少女は、フンと鼻息を荒くして妙に目を輝かせて力説した。
「ふっふっふっ。いい機会です! この子達のすごいところを見せてあげましょう!」
あ、フーさんかなりやる気だ。
僕はどうにか落ち着かせようとたどたどしく言葉を選んだ。
「でも戦うってさっきみたいな本気の集団戦は困るよ? 危ないからね……」
「ああ、それだったら。自慢の一体同士を戦わせようってことになってるから大丈夫」
「いつの間に? ……でも自慢の一体? 個体差とかあったりするんだあの魔法生物」
初耳だけど、聞き捨てならない話だった。
あの魔法生物は鉱石を吸収する生き物だし、それによって見た目はかなり変わるのは知っていたが、みんな同じものだと思っていたんだけれど、一概にそういうわけではないらしい。
「もちろん。だからね? 実は一度資材倉庫で、分裂しているところを厳選したことがあって」
「……厳選したんだ」
「コアの透明度が高い子を集めてみたら、合体しちゃって」
「……」
「こう……来るべき時のために切り札になるんじゃない? と思って温存しておいた子を出してみようかなと思ってるんだ!」
「そ、そうなんだ」
なんだか恐ろしいことをサラッと言うフーさんは、そういえばとっくの昔に魔法生物を武器にして使いこなす、スペシャリストだったことを僕は思い出していた。
「大丈夫! シュウマツさんの名に懸けて! 絶対勝ってみせるね!」
「が、頑張ってね?」
―――これはダメだ。
僕はまずい流れだなと思いつつ、もう一人を訪ねていた。
対戦とは2人いて初めて成立するもの。
つまり一人がやめようと言えば、たちどころに成立しなくなってしまう儚いものである。
普段から大人の振舞いを心がけていると思う白熊さんに会いに行くと、白熊さんは大量の捕獲用具をいじりながら、すでにハンターの顔をしていた。
「ああうん。いいと思うよ? 何せどっちのアレも生き物かわからないことが沢山ありすぎて、強さとか危険性とかは早めに調べておいた方がいい。今実戦投入できているのが虎っぽい子なんだけど、他にも形態の違う子だっているんだ」
「形態の違う子?」
「そう、予想はしてただろう? 今回はその中でも一番凶暴そうな子を投入してみようかなと思ってる」
「……大丈夫? 本当に?」
「? 大丈夫だよ」
やはり、種類が沢山いたか金属生命体。
一度精霊と話し合いをしなければなと思いつつ、もう存在するのなら確かに速やかな調査が必要かもしれないと僕は思った。
でも別に戦わせなくてもいいと思うんだけれど……。
そう口にし掛けた僕は、その時巨大な刃物を片手にとても好戦的な笑みを浮かべた白熊さんを見てしまった。
「一対一だと戦力差が付きすぎると思うんだけどいいのかな? 魔法生物って、絶対群れでヤバい奴だよね?」
「……そこは……何か秘策があるみたいでしたよ?」
「へぇ……。それは楽しみだな」
「……」
ああダメだこれ……。
どうやらこいつは必要なイベントみたいである。
のこのこと何もできずに僕が帰って来たのは、早々に宇宙空間に製作されていた、特設実況席である。
まぁ薄々わかっていたんだ、この流れはとても止められないと。
僕は自分のあまりの無力さにいっそ笑ってしまった。
「はっはっはっ。どうしようシュウマツさん。フーさんと白熊さんが、クラスで昆虫バトルが流行った子供みたいになってる」
「君のコロニー、昆虫がいるのだね」
「人気があるのだけいたよ。カブトムシは人気があった」
たぶん過去のスペースコロニー移住者の中に甲虫に魅せられた勢がいたんだと思う。
夏の巨大甲虫は人を狂わせる。
魔法生命体と、金属生命体も同様の魔力を備えているのかもしれない。
いやまぁ一般人は普通に食われると思うんだけど、危険だからこそ惹かれてしまうのも人の業。
危険だからと納得できるくらいなら、人類は宇宙になんて出てこないという話である。
「ただ……どうも嫌な予感がして仕方がないんだよシュウマツさん」
「中々どうして、君の予感は侮れないからね。私は実は結構楽しんでいるのだが」
「実況席が出来上がってる時点で楽しみなのはわかってたよ」
みんな楽しみにしているのなら仕方がない。中々クレイジーな植物さんだ。
まぁ、なるようになるかと僕は早々に匙を投げた。
そして対戦当日、僕は実況席にてさっそく悪い予感の的中を確信した。
「よし! いくよ! 君の力を見せつけてやろう!」
フーさんの元気のいい声で、そいつは隕石の中から飛び出して来る。
ギチギチギチギチ。
水晶の突起がいくつも飛び出た、輝く金属の外骨格を形成しているそれは、普通の魔法生物とはフォルムがまるで違う。
それはまるで意図して魔法合金だけを摂取させ、特別に手を加えたような形状の魔法生物は、ムカデのように長く大きな体をうねらせて飛んでいた。
「よし……こっちもお披露目だ。ニライカナイ最強は君だと証明しないとね!」
「ギャオオオオオ!」
もう一方はコロニーのハッチが開き、中からのしのしと巨体を揺らして現れる。
やたらとトゲトゲした全身黒っぽいメタルボディに、巨大な砲身を背中に背負ったメタルTレックスは高らかに咆哮を上げていた。
それはまるで、最近ワープゲートにも多用されている冥界の金属を意図的に大量に摂取させたかのように黒光りするモンスターは、明らかに高い戦闘能力を意識して作られた化け物だった。
「ワァ……」
僕は喉の奥から、一声そう鳴いた。




