ちょっとした変化の兆し
シュウマツさんは語る。
「人口の“門”は本来、錬金術の集大成だった。魔法を使用する疲労や、個人の体調を考慮せず、誰でも行きたい場所に飛べる通路を繋げるのだ。かなり大掛かりなものだが、歪んだ時空を無理やり制御するのなら、これくらいのものは必要だろう」
「うーん。私にはよくわかんない。カノーはわかる?」
「……旅の扉を作ると、時空の穴をふさげるよ。ルーラやキメラの翼じゃこうはいかない?」
「ものすごくわかりやすいのかわかりにくいのか微妙なラインの説明をするね」
「よくわからないが……とにかくあれだけの大きさの“門”を作るにはいつものように一朝一夕にとはいかない。安全まで考慮するとかなり高度な魔法と錬金術による緻密な魔法回路が必要になるだろうね」
「えーっと……普通のどこでもドアならすぐ作れるけど。大きなのを作るにはビックライト使ったり手順を踏まないといけない……かな?」
「なんか違わない?」
「逆にわかりにくい気もする」
「とにかく! 小分けにパーツを作っていくから、現地で組み立てだ! あと妙な例えはもう結構!」
「「「はい……」」」
というわけで、動き出したワープゲート建築なのだが、現在はあんまりすることがない僕である。
ひとまず僕はいつもの日課として宇宙遊泳をしているわけだが、もちろん楽しみにしていない訳がなかった。
一体何が出来るのかと期待は大きいわけだが、冥界なんてぶっ飛んだものがすぐ出来るのに、ワープゲートを作るのには時間がかかるというのは今一納得できない僕だった。
「まぁ仕方ないか。旅の扉だもんな。そんなに簡単に作れないよ」
設置型ギミックともなるとそれはもうプレイヤーではなくクリエイターの領分。
シュウマツさんには是非とも効率的でストレスにならない大作を期待したいところだった。
馬鹿なことを考えつつ、ふと眺めたシュウマツさんの枝がなんとなくいつもと違う感じがして、僕はその場でシュウマツさんの木を見上げた。
「ん? なんか違う?」
一見するといつもと変わらない、とても大きな木なのだが。何かが違う。
僕はしげしげと眺めていると、ようやくその違いに気が付いた。
「あれ? 実が生ってない!?」
そう、前見た時はただの枝だったのに、シュウマツさんの枝にはたわわに実った果実がドドンと沢山生っていたのだ。