SFロボにファンタジーロボが通用するかは世界観によるとしか
宇宙空間に投射された巨大画面に、でかでかと僕の顔が映っている。
まぁヘルメットだが……まずは挨拶と思ったらこれである。
スペースコロニーよりもでっかく映し出された僕は、最初の挨拶というには威圧的に艦隊を見下ろして、言うべきことを伝えた。
『ようこそおいでくださいました。月の皆さん。ここはニライカナイコロニー。どの国家に所属しているわけでもない、個人所有のコロニーです。こちらに戦闘の意志はありませんが、コロニーを無条件で明け渡すことは拒否します。僕らの望みは対話です。応じていただけるのなら、我々はあなた方を歓迎します』
でもまぁ僕への返答に、月の艦隊からは無数のドローンが放たれた。
しかも極悪に武装された大群は、まさに人を殺すマシーンだった。
うーんこれはかなり舐められている。
ひょっとすると金持ちの変人がこっそりスペースコロニーを作ってて、知らない技術やデータが転がってたら儲けもの位に思われているのかもしれない。
それはまぁ確かに? 8割ほどは趣味が反映されているわけだが、それはシュウマツさんの性格にも原因があるわけだし、色物扱いは心外である。
僕はフゥとため息を吐くと、オペ子さんがどこか楽し気に次々流れ込んでくる新しいデータを整理しながら声をかけて来た。
「どういたしましょう? こんな雑な無人機で偵察とは、まさに様子見です。叩いても叩かずとも向こうにとっては情報の山ですね」
「無人ならちょうどいいさ。それに存分に見てもらおうよ。そうじゃないとフーさん辺りはストレスでギリギリだろう?」
一番に武装して飛び出して行ったフーさんは、口調こそ明るかったがどうしようもなく落ち着きがなかったのはわかっていた。
それは古巣が軍隊を連れて、遠路はるばる戦争しにやって来たなんて冷静でいられるわけもない。
今安心する方法があるとすれば、そう、例えば……ひとまず自分達には抗う術があるのだと、身をもって確信を育ててもらうしかないだろう。
スクリーンに映し出されたフーさんは初陣を飾るアウターを着込み、宇宙空間に浮かんでいた。
それは彼女のアーネラをベースにこそしていたが、中身は別物と言ってよかった。
装甲のほとんどすべてを魔法金属に置き換え、より精霊との親和性を高めるべくフレームの一部にシュウマツさんの枝を採用している。
そして一番目に付くのは、やはり巨大な弓だろう。
相変わらずダークマターを感じる上半身むき出しのフレームの中で、フーさんは目を閉じ、腕を組んでその時を待っていた。
「そのようです。宇宙空間で仁王立ちとは勇ましい。武装の制限だけでも伝えておきますか?」
「無制限だ。時間もない」
「それはまた……前々から思っていましたが、貴方は実は博打好きですね?」
「……日頃の行いからの言葉なら否定はできないかな! 貯金は好きなんだけどなぁ」
僕だって軽口を叩いてはいるが、緊張でガチガチである。
我ながらすごい物を作ったという自信はあった。
けれどそれがどこまで通用するのかはまさに、異次元というか異世界というか……未知の部分が多すぎるわけだ。
ただひとまず今までの戦闘経験から考えて、数対数の戦いならフーさんは適役に違いない。
彼らがやってくるまでの時間に質のいい鉱石を存分に喰らって、彼女の弾丸は順調に増えているのだから。