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転生トカゲは見届ける。~戦えない俺は旅の足となる~   作者: イノナかノかワズ
第二部 五章:困惑と藻掻きに似ている

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エピローグ Expand――b

 目の前は銀の世界だ。

 全てが銀色に煌き、だが、点滅したり瞬いたり、命を持っている。


 先程までの激情も苦しさも嘘だったかのように、銀の麗しさに過去が欺かれ、清らかなる聖銀が全てを上書きする。 

 全てが清浄化され、融け去って――

 

『ヘルメス、ライゼ、戻っておいで』

「ッ」

『ぁ』


 ――しまう前に、葉っぱから落ちる雨水の如く、煌く小さなレーラーの声に引き戻された。

 俺もライゼも呆然とする。


 そんな俺達をレーラーが強く照らしてくれる。世界を染め上げる聖銀の輝きにも負けないレーラーの温かな手が俺達にゆっくりと染み込んでいく。

 心が落ち着く。無になるわけではなく、凪いでいく。


「落ち着いたようだね、ライゼ、ヘルメス」

「……うん……」

『ああ……』


 レーラーはゆっくりと俺の背から降りた。

 今、俺達がいる場所はとても広い。さっきまで気付かなかったが、小さな教室くらいの広さがある。


 レーラーは少しだけ頬を動かし微笑む。

 深緑の瞳は慈愛に満ちていて、表情はとても穏やかだ。


「二人とも、よく頑張った。特にライゼ。死ぬよりも辛い違和感と苦しみによく耐えた。ヘルメスもあの苦しみの中でよく私たちを運んでくれた」


 レーラーが銀を背負う。

 さっきとは違う塗りつぶすような恐ろしい強い銀ではなく、優しく温かく見守る清らかな銀がレーラーの後ろで光る。


 というよりは、地面、壁、天上。

 全てから、銀色に輝く結晶が突き出ていて、死に際の命の煌きを表すかのように点滅しているのだ。というか、俺の知識にこの結晶の情報がない。


 なんだ、ここは。


「……レーラー師匠、どういうことなの?」


 ライゼが額に冷や汗を流しながら、戸惑いがちにレーラーに訊ねる。

 俺は銀の結晶に目を奪われている。


「……何から説明しようか」

「……じゃあ、この銀の結晶は何?」


 だが、ライゼがレーラーにそう訊ねたから、俺は結晶に吸い寄せられる目をレーラに向ける。

 先程の慈愛はすでに浮かんでいないレーラーの深緑の瞳が、考えるようにゆっくりと動いた。


「んー、『女神の御心』って言えば分かる?」

「……神話にでてくるあの?」


 『女神の御心』という名で、結晶を指すのはあれしかない。

 女神教が布教している神話の第二部、四章、一節、『ムティーヒの槍』に出てくるムティーヒの槍という全てを貫く槍を作るのに使われた鉱石の事だ。


 ……流石に嘘――


「うん、そうだよ」

「ぇ」

『んなぁ』


 ――じゃないよな。

 レーラーが言うのだ。嘘を言う必要がない。


「まぁ驚いているところ悪いけど、これは神話の『女神の御心』じゃなくて、現実世界の『女神の御心』だからね。希少性とか、特性が違うし、普通にこれは超希少な鉱石ってだけだよ」

『どういうことだ、レーラー?』


 レーラーは、足元にあった『女神の御心』をへし折り、弄びながら言った。

 冷たい瞳と表情が、銀の結晶に映る。


「どうもこうも、女神が作った鉱石じゃないんだよ。魂持つ生物が死んだとき、魂が拡散して放出された魔力が地上に満ちて、それが大地に満ちる。大地に満ちれば星に魔力が満ち、満ちた魔力が新たなる魂を創り出す」


 急に何を言い出すのだろ。 


「……それってレーラー師匠が研究している魂の」

「うん、魂の始まりと終わりの循環だね。言っとくけど、間違ってないからね、この研究結果」


 レーラーがライゼを疑わしそうに見ている。

 ライゼは未だにレーラーの魂に関する研究を疑問視している。魂について詳しく知りたいとは思えないんだそうだ。


「……まぁ、いいや。だけど、魂が新たに創り出されるとき、たまに大地の力が混ざりこむ。その力が闘気。ほら、トレーネが使ってたでしょ」

「……いや、使ってたでしょって言われても、感じられなかったから分からなかったんだけど」

『あの超人的な力って神聖魔法と身体強化によるごり押しじゃねぇの!?』


 マジか、魔力反応があったしそれだけだと思ったんだが違うのか。

 というかキチンと聞いておけばよかったな。


 にしても闘気って俺も感じなかったけど、大地の力って言うくらいだし生命力に溢れてるのか?

 いや、どうなんだろ。


「……そういえば言ってなかったね。まぁ、いいや。それでその闘気を持った魂の生物が死んだとき、通常の魂の循環と同じように魔力が拡散するんだけど、拡散した魔力は星には満ちないんだよ」

「……闘気のせい?」


 ライゼが必死に頭を回して訊ねる。

 大地の力だし、大地に満ちた時に別の何かに……


「うん。拡散した魔力には闘気が混じり合っていてね。大地に満ちる時に、大地の力と共鳴しちゃって、そこで違う物質へと変換されてしまう」

『それが『女神の御心』ってわけか』

「当たり」


 つまり、銀の結晶は魂が放出した混じり合った魔力と闘気の結晶というわけか。

 

『じゃあ、なんでそれがこんな場所で結晶化してるんだ。普通、闘気を持った多くの生物が……つまり、そういう事か』

「そういう事。六百年前かな。エンテ森で人類同士の大戦争があってね。闘気を持った優秀な戦士と魔法使いたちが争ってね。そして、たぶんだけどコーレアクスが作った洞窟がエネルギー自体を持ってたから、大地の力をため込みやすい構造になっていたんだと思う」


 石炭か。

 いや、それ以外のエネルギーかもしれない。エネルギーって前世で考えられる物じゃなくてもいい筈だ。


「そして、ここに『女神の御心』の結晶群ができたんだよ」

いつも読んで下さりありがとうございます。

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