四話 完璧には程遠い
だが、その雷と氷の花吹雪の拮抗を回転しているライゼが崩す。
“森彩”から爆発する“宝石銃弾”を数発、連射したのだ。
――キィェッーー――
それによって、纏っていた氷が溶け、それにより防御力が低下して、主に中位の魔物である氷結花鳥が雷に貫かれて落ちる。生き残った凍結華鳥と氷結花鳥は一瞬で散開し、また、高速で旋回し始める。
また、雷に貫かれて死んだ氷結花鳥は、落ちながらホロホロと黒い煙に変っていき、ついには魔石だけになる。
それをレーラーが〝魔石を仕舞う魔法〟で回収していく。
レーラーはこの戦闘すら、ライゼに任せるつもりである。急いでいるとはいえ、しかし、ライゼの師匠として命のやり取り内での魔力操作は確実に魔法技術を向上させる。
既に達人以上の魔力操作技術を身に付けている才能のないライゼが、それ以上の魔力操作技術を身に付けるには命のやり取りという極限の状態でなければならい。
それくらいにライゼの魔力操作技術は収斂されているのだ。
それにレーラーが魔法を使うと、ここら一帯が消えてなくなってしまうかもしれない。
いや、魔法技術が既に神がかっているレーラーがそんな事をする筈はないが、しかし、力が強いのは確かだ。少なくとも聖位以上の魔物でなくてはレーラーの相手は務まらない。
しかし、ライゼの猛攻を余裕で耐え抜いた凍結華鳥は聖位であっても、それでも上位に近い聖位だ。
ライゼの相手としては強敵だが、レーラーの相手としては雑魚にしかならない。瞬殺で終わる。
つまるところ、レーラーはこの戦いを傍観するのだ。
「ふぅ」
空中でスピンをしていたライゼは、足元に〝防御する魔法〟を作り出し、空中で立つ。そして、高速でライゼの周囲を旋回している凍結華鳥と氷結花鳥を油断なく、深緑ゴーグルの下のこげ茶の瞳で睨み付ける。
また、ライゼによって氷結花鳥の半数を落とされた凍結華鳥たちはライゼ以上に警戒を募らせ、氷の竜巻を作り出すように高速で旋回を続ける。
寸秒後、氷が吹き荒れる吹雪の竜巻が完成する。
その中心にいるライゼは、しかしながら落ち着いている。
凍結華鳥の〝凍結華を咲かせる魔法〟と氷結花鳥の〝氷結花を咲かせる魔法〟の花弁が嵐のように降り注ぐ。氷の花の壁が凍結華鳥と氷結花鳥を覆い、生半可な攻撃では通らなくなる。
「フッ」
ライゼは息を吐くと同時に、足元の障壁を蹴り上げ、嵐の上部へと昇りつめる。
だが、四方八方から降り注ぐ刃物よりも鋭い氷の花弁はしかしながら、ライゼに当たることはない。氷の花弁がギリギリでライゼを避けているのだ。
〝誰か魔法を操る魔法〟によって、ライゼは〝凍結華を咲かせる魔法〟と〝氷結花を咲かせる魔法〟の花弁が当たるギリギリで操作して、逸らしているのだ。
完全に乗っ取って操るのではなく、一瞬だけ逸らす術をライゼは身につけたのだ。
そして、ライゼは上部に“森彩”を向け、爆発する“宝石銃弾”を撃った。
氷の花弁の狂飆はそれによって中央が一瞬だけ開け、ライゼはその間を通り過ぎる。そして、氷の颶風を見下ろし、柄を内側へ折り曲げた“森彩”を構える。
再び爆発する“宝石銃弾”を乱射する。
氷の嵐は消え去り、しかしながら、凍結華鳥も氷結花鳥を殺すことは叶わない。
けれど、ライゼの目的は凍結華鳥たちを殺す事ではなく。
「ハッ」
陣形をとらせず、ばらばらにする事だ。
乱戦にしたかったのだ。
爆発する“宝石銃弾”を乱射した反動で上に吹き飛んだライゼは、その勢いを利用したまま反転して頭を地面に向け、足元の障壁を召喚して、思いっきり撓む。
そして、反動の勢いをそのままに、氷の大地へと落ちるように障壁を蹴る。
体制を崩し、陣形が乱れている凍結華鳥たちに突っ込んでいく。
「シッ」
そこからは、凄まじい近接戦闘の始まりだ。
ライゼが履く〝物体を射出する魔法〟が組み込まれた魔道具の靴で、変体的に空中を飛び回り、“森顎”のアンカー機能で凍結華鳥たちにアンカーを打ち込み、近づきながら、銃弾を撃つ。
“森彩”の〝魔力を刃にする魔法〟の機能で氷結花鳥を斬りながら、しかし、魔力による柄のギミック操作を使って、雷の“宝石銃弾”と爆発の“宝石銃弾”を撃ち出し、凍結華鳥たちを攪乱、もしくは撃ち落としていく。
もちろん凍結華鳥と氷結花鳥も負けてはおらず、反撃を試みる。
それによってライゼは額や足から血を流し、深緑のローブをボロボロにするが、一筋の深緑の影となり、空に浮かぶ氷の間を素早く駆けていく。
流れる血も身体に走る撃つも知ったこっちゃない。そんなものはねじ伏せる。
懐にいる俺はその音速にすら届きそうな空間的な動きに揺られ、レーラーの方に付いておけばと若干後悔しながらも、もうすぐ戦闘が終わる予感を持っていた。
ついでに、二日間は戦闘の疲労などによって真面に動けそうにないライゼをどのように背負おうかを考えていた。
しかし。
「あ」
スカッと言う音と共に、ライゼが間抜けな声を漏らした。
いつもはポワポワと笑っているか、もしくはすまし顔のライゼが阿保面を晒している。
ライゼは、“森彩”の回転式の“宝石倉”に入っている“宝石銃弾”を使い切ってしまったのだ。今、ライゼが使っている回転式の“宝石倉”は、雷の“宝石銃弾”と爆発の“宝石銃弾”だけの組み合わせだ。三つ三つに計数百発入っている。
だが、中位と聖位の魔物の群れ相手に命の危機を接しながら戦闘していたライゼは、“宝石銃弾”の残弾を読み間違えた。
まだまだ、慣れていないのだ。
一瞬一瞬に命の危険がある戦闘。普通の戦闘ならば兎も角、その中で残弾を把握することはまだできていないのだ。
訓練不足だ。
つまり。
「〝防御する魔法〟ッ!」
その一瞬の隙を逃すことなく、凍結華鳥たちはこの戦闘で一番鋭く堅い氷の花弁の吹雪を発動させる。全方位の氷の嵐ができあがる。
ライゼは、“森顎”に装填されている“宝石銃弾”でそれを排除することはできず、咄嗟の思いで〝防御する魔法〟を張る。
しかし、ライゼの全周囲に張られた〝防御する魔法〟は直ぐに軋みを上げ、ついには割れた。
氷の花吹雪が、“森顎”と“森彩”の銃身で体の重要な部分を守るライゼを襲う。
レーラーはまだ助けようとしない。
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