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転生トカゲは見届ける。~戦えない俺は旅の足となる~   作者: イノナかノかワズ
第二部 二章:独りはあっても孤独はない

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エピローグ Together――b

 喜び疲れ、今年最後の食事を食べれるだけ食べつくした子供たちの殆どは寝てしまった。起きているのはライゼよりも年上の人たちばかり。

 あと一時間ほどで今年が終わる。


「ライゼ、今年もよく頑張ったね」


 そんな夜中に、中天へ昇ろうとする満月を眺めていたライゼに、レーラーが後ろから近づき、頭を撫でた。

 深緑ローブを纏ったライゼはくすぐったそうに身を捩る。


「こらこら、逃げない」


 ただ、今やライゼの方が身長が高い筈なのに、レーラーは身を捩って逃げようとするライゼを捕まえ、つま先立ちでライゼの頭を優しく撫でる。

 灰が混じったこげ茶の髪がボサボサになるが、とても温かい。


 そして、ライゼは諦めたのか、それとも羞恥心を受け入れたのか、為すがままに撫でられていた。

 けれど、夜空に輝く星々を見て、何かを思いついたのかクルリと体を反転させて、レーラーに向き合う。


 それから、深緑ローブの内に入れていた左手を取り出し、レーラーの頭を撫でる。

 夜空に輝く銀に負けないくらいの黄金が、ライゼの肌に触れて、艶めく。


 ライゼの頭を撫でていたレーラーは突然の事に驚き、けれど、ライゼが頭を撫でてくれたことに、心地よさそうに翡翠の瞳を細めて少しだけ頬を緩めている。

 無表情に見えて、よく動いているのだ。


「……でも、今年いっぱいかな」

「どうしたの、レーラー師匠?」


 そんなレーラーは感慨深そうに満月を仰いで呟いた。

 ライゼは不思議そうにする。


「いや、止まったとはいえ、もう少し伸びるでしょ。座っているライゼの頭を撫でる事はできても、立ってるライゼを撫でられるのはたぶんない」


 この世界では、不思議な事に子供に分類される、いや、正確にはだからこそ子供に分類されるといった方が正しいのだが、とある年齢まで年が変わる瞬間、子供たちは少しだけ身長が伸びたり、体が大きくなったりするのだ。

 そして、種族によってそのとある年齢は変わるが、その年齢を越えたら大人として分類されるのだ。


 女神が子供たちに贈る成長の祝福なのだとか。

 そして、子鬼人は十三歳になる年が子供としての最後の年だ。つまり、来年からライゼは大人に分類される。

 そして、ライゼは最後の女神からの成長の祝福を一時間後に賜るのだ。


 だから、そうすればレーラーが全力で体を伸ばしてもライゼの頭には届かなくなるだろう。

 確かに感慨深い。ライゼが大人になるのか。


『なら、俺の背に乗ればいいだろ』


 なので、ライゼの肩にいた俺はレーラーにいう。

 “身大変化”で大きくなった俺の上にレーラーが乗ればいい。


 まぁ、けれど。


『うん、それはいいかな』


 それは違うのだろう。これは喜びと若干の寂しさだ。

 気持ちの問題で、優しい問題だ。


『ああ、だろうな。……けど、来年でライゼも大人なのか』

『そうだね』


 俺とレーラーは寂しそうに言った。

 レーラーは自分の頭を撫でていたライゼの左手を両手で掴み、愛おしそうに見つめる。俺はライゼの頭に登り、こげ茶の角を見つめる。


 感慨深い。


「ぅ、ふ、二人ともっ、くすぐったいよっ!」


 ライゼが無邪気に声を上げる。

 けれど、嫌そうではなく、むしろ嬉しそうだ。


 そうして、三人で寄り添って笑い合って時を過ごしていたら、満月に輝いていた月が紅く染まり始めた。

 今年が終わる合図だ。


 冬の寒い海から吹く小夜風がライゼとレーラーの髪を靡かせる。夜なのに海から風が吹くのは珍しく、この年越しの瞬間だけだ。

 奇跡によって起こされる風だ。月だ。


 そんな女神による今年への感謝と来年への願いの風は、港を、町を優しく包み込んで、抱きしめていく。

 ライゼはそんな抱かれた風の中、紅く染まっていく満月を見ながら、白シャツの下に下げていた蒼い蝶が描かれた懐中時計を取り出し、蓋を開ける。


 首と懐中時計を繋ぐ銀の鎖が紅い月光によって、妖しく煌き、そして蓋に付いていた蒼い宝石(アクアスカイ)が、紅い月光に負けないくらい強く輝き始める。

 その光は青空だ。天穹だ。


 その光を大事に抱きしめるように握りしめたライゼは、揺らめくこげ茶の瞳で強く紅い満月を見つめる。

 レーラーはそんなライゼの隣に立ち、俺はライゼの角の上に乗る。


 そして紅い満月は中天に輝いた。

 

「今年もよろしくね、ライゼ、ヘルメス」

『ああ、よろしくな、レーラー。それにライゼ』


 俺とレーラーは一斉に言葉を交わした。

 その瞬間、ライゼの体が光に輝き、一瞬だけ眩しく当たりを光が埋め尽くした。


 そして。


「うん、やっぱり届かないね」

『だな』


 ライゼは大きくなった。身長は五、六センチくらい伸び、角が一センチくらい大きくなり、また、太く鋭くなった。

 体も未だに細身ながらも、力強さがあり、成長したんだなと思った。


「レーラー師匠、ヘルメス。今年も、これからもよろしくお願いします」


 そんなライゼは大人びて少しだけ低くなった声で、深く謳い、頭を下げた。

 俺とレーラーは少しだけ世界を濡らした。


 それから。

いつも読んで下さりありがとうございます。

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