七話 “森彩”と傍観
次に“森彩”だが、基本的に機構や性能は“森顎”とほぼ同等だ。
違うのは銃口の口径と数、そして取り外しと分解可能な回転式弾倉がある事だ。
回転式弾倉は銃身の根元にあり、グリップを少し上に握れば、触れるようになっている。
まず、口径は二十八口径で銃口は一つである。
また、“森彩”の“宝石銃弾”は“森顎”よりも小さいが、しかし封印されている魔法の種類は同等で、効果は決して低くない。むしろ、飛距離や弾速、回転数は“森顎”の“宝石銃弾”を上回っている。連射性もある。
ただ小さいため、軽く威力は低い。貫通性は弾速と回転数、それと強度があるため問題はない。
そして回転式弾倉だが、そもそもの“森顎”と“森彩”のコンセプトは、“森顎”は威力重視で、“森彩”は多様さ重視だ。
そのため、“森彩”は『彩』が入っている通り、多種多様な種類の“宝石銃弾”が放てるようにしてある。
それを可能にしているのは回転式弾倉だ。
ただ、地球の回転式弾倉とは全くもって違う。弾丸を打てば自動的に弾倉が回転するわけではないのだ。
“宝石銃弾”を収納する“宝石倉”は一種類の“宝石銃弾”を収納できる。“宝石銃弾”に自由に込められる魔法は一種類のため、込めた魔法の種類によって種類は変わる。
雷の弾丸だったり、毒の弾丸だったり、火の弾丸だったり、込める魔法によって様々だ。まぁ、どんな魔法込められるかはライゼが行使できるか如何かで決まる。
ということで、回転式弾倉にすることによって六つの“宝石倉”を付け、六種類の弾丸を操れるようにしてある。そしてグリップ部のギミック操作を使って、回転式弾倉を自由に回転させて、好きな弾丸に変える。
また、回転式弾倉自体がギミック操作で簡単に外れ、また、簡単に装着できるため、六種類の“宝石銃弾”のグループを幾つか作り、それを瞬時に取り替えることが可能なのだ。つまり、敵の種類に応じて戦い方を変える事ができる。
そして更に、一つの回転式弾倉に組み込まれている六つの内の一つの“宝石倉”を取り外すことも可能で、ある一種類だけ使い切った場合も問題ないようにしてある。頻繁に使う宝石の弾丸もある。
“森彩”にこんな自由な回転式弾倉を組み込めたのは、“森顎”の様に銃口を二つ付けていないため、その分の幅があったからだ。
“森顎”ではこのようにいかない。
『ヘルメス、ヘルメス!』
『んぉ、なんだ』
と、現時点での俺の最高傑作に想いを馳せていたら、ライゼに思いっきり尻尾を叩かれた。びっくりした。
ライゼを見ると、呆れているような表情を浮かべている。
『点検してくれるのは嬉しいんだけど、改良とかは後で考えてくれる? 時間的にレーラー師匠を起こして、朝食を食べなきゃいけないし』
太陽は既に水平線の上にあり、人の数も多くなってきた。
『分かった。ただ、あとでキチンと修正点とかを聞かせてくれよ』
『うん、もちろんだよ』
俺達は借家に戻った。
Φ
『ヘルメス、自分の鱗を剥がすのはやめた方がいいよ』
『ん? なんでだ、レーラー』
水の上で乱舞して、飛雷魚を討伐しているライゼを港で眺めながら、レーラーは忠告する様に言ってきた。
レーラーは飛雷魚を積極的に討伐しない。やろうと思えば、一日もかからずに増えすぎた飛雷魚を全て斃せるだろう。
だが、レーラーはそれをしない。飛雷魚の討伐はライゼにほぼ任せてある。
ライゼの訓練のためだ。
『なんでって、いくら身体が魔素で構成されてるとはいえ、“森顎”と“森彩”を作る際に相当な鱗を使ったでしょ』
『まぁな。鱗が魔素でできてるから、鉱物とかにもなじみやすいし、何故か俺の鱗は、俺から離れても消えたりしないからな』
通常、魔素で構成されている身体は、千切れたり、取れたりした場合、消える。死んだ場合も消える。
魔素で身体を構成しているレーラーがそういうのだから間違いないのだろう。
だが、俺の場合は違う。
俺の身体から鱗が剥がれても消える事はないし、たぶん、俺が死んでも消える事はない。理由は分かっていない。
なので、時間さえ経てば再生することもあり、俺は相当数の鱗を“森顎”と“森彩”に組み込んである。
魔素で構成されているからか、好物などに溶け込んで混じり合う事ができるため、魔力伝導率やその他諸々の性能が上がるのだ。
まぁ、もちろん、鱗を剥がすのはとても痛い。激痛が走る。
が、ライゼの命を守れるのだ。背に腹は代えられない。
『でも、やめた方がいい。いつか取り返しの付かない事をやりそうだし、それにペレグリーナーティオトカゲは、自分の身を犠牲にして死んでいった数が多い。人間に飼われていたのに、滅んだのはそれだし』
『……まぁ、気を付けるよ。ありがとな』
『仲間だから。それにヘルメスはもっと周りを見た方がいい』
確かに血肉を切り売りするという事は、身を滅ぼしかねないからな。
ただ、まぁ、ライゼには俺の鱗を持ってもらいたいと思っている。お守りというか何というか、安心できるのだ。
酷く醜く可哀想な感情かもしれないが、それでもそう思う。
けど、レーラーのように心配してくれる仲間もいるので、控えようとは思うが。まぁ、俺の魔道具師としての技術があがれば、俺の鱗を使う必要はなくなるのだが。
つまり、俺が未熟なだけなのだ。
けど、俺はよく回りを見ていると思うんだが。
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