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転生トカゲは見届ける。~戦えない俺は旅の足となる~   作者: イノナかノかワズ
第二部 二章:独りはあっても孤独はない

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三話 黎明の砂浜

「はっ、はっ」


 一定の息遣いが聞こえる。纏まった空気が吐き出され、(から)の白が宙に溶ける。それと同時に小波の安らかな水音が、静と動を繰り返して鳴り響く。

 されど、海は黒だ。白波もなく、透き通るような蒼でもない。海は黒だ。まだ、朝は来ない。


 そんな浜で黒い影の子鬼人の少年が走っている。隣では大きなトカゲ、つまり俺も走っている。走り始めてまだ、十分も経っていない。


『や、休まないかっ!』

『えー、まだまだ、身体は温まってないよ』


 しかし、俺は既に息切れしている。

 ライゼは涼しい表情で、安定した呼吸で走っている。

 

 砂浜の上を豪速で走っている。


 俺だっていつもレーラーを乗せて、荷物を背負って歩いている身だ。体力はあるし、今は身体強化をしているので、脚力だってある。

 しかし、俺とライゼは砂吹雪を巻き上げながら、某短距離世界最速の雷さんと同等の速さで十分近く走っているのだ。

 疲れるに決まっている。


 しかし、ライゼは疲れていない様子。

 体力お化けである。


 まぁ、ライゼは体力があるだけではなく、走り方が綺麗なのだ。身体の力を抜き、最低限の動きで最大限の速さを実現している。ここ半年近くでようやく動き始めた俺とは違うのだ。

 俺は、ヴァンズン山脈の件があってから、速く走って逃げられるようにしようと思ったのだが、それでもライゼには敵わない。


 それに、身体強化も最近はライゼの方が得意になってきている。

 レーラーの指導もあるし、ライゼが前以上に魔力操作技術の向上に力を入れていることもあるんだろう。格段に魔力操作のレベルが上がっている。

 そっちに力を入れるしかないのだ。


 “魔倉の腕輪”の魔力も大分溜まってきている。現時点ではAランクほどである。これなら一発くらいは大魔法が放てるだろう。

 ただ、一回放てばチャージに数ヶ月かかるので、使い勝手は良くない。

 Aランク魔力量の保持者は、魔力を使い切っても二日足らずで全回復する。ライゼの魔力回復速度を使っても、Aランクの魔力量を持つ存在の回復速度には敵わないのだ。


 魔力回復には二種類ある。覚醒時の魔力回復と睡眠時の魔力回復だ。


 ライゼの覚醒時の魔力回復速度は途轍もなく速い。Eランクの魔力量を回復させるのに、数分かからない程度だ。

 例え、Aランク魔力量保持者の回復速度でもそれには敵わないほどだろう。


 しかし、それは覚醒時である。

 睡眠時は別だ。


 そもそも、覚醒時の魔力回復速度は睡眠時の魔力回復速度に比べて圧倒的に低い。そして、睡眠時の魔力回復速度を鍛えることはとても難しい。

 ぶっちゃけ、睡眠時の魔力回復速度は魔力量に依るからだ。


 なので、Aランク魔力量保持者の覚醒時の魔力回復速度が、いくらライゼより劣っていても、睡眠時の魔力回復速度はライゼよりも優れている。それはもう圧倒的に。

 そして、ライゼの覚醒時の魔力回復速度は睡眠時の魔力回復速度を上回ってしまっている。異常である。


 まぁ、そんな事もあって、“魔倉の腕輪”によって大魔法をぽんぽんと使える事はない。下級魔法がある程度使いたい放題になる程度である。

 だから、ライゼは魔力操作技術でどうにかするしかないのだ。


 なので今も、超精密な魔力操作による身体強化によって、身体強化の限界ギリギリをせめている。肉体が壊れず、また、直ぐに回復する程度に身体強化を制御しているのだ。

 また、砂浜を蹴る一瞬だけ、その足にかける身体強化をオーバーロードさせる。そして肉体が壊れる前に解除する。

 それを何度も繰り返しているのだ。



 Φ



 そして、一時間後。

 海が白み始め、ライゼはランニングを終えた。俺は数十分前にリタイアしている。

 砂浜で、行ったり来たりする波を眺めていた。


『お疲れさん』

『ありがと、ヘルメス』


 俺は白み始めた海と空を眺めながら、ライゼに金属の水筒を渡す。中には俺特性の魔法ポーションを薄めたスポドリが入っている。

 身体に染みて、体力の回復にも最適な逸品である。


 ライゼはその薄めたポーションが入った金属の水筒を受け取り、ゴクゴクと喉を鳴らして飲む。

 首にかけているタオルで吹き出る汗を拭きながら、俺と同じく白み始めた水平線を眺めている。


 そして、太陽が昇った。

 空の澄み切った蒼が水平線に向かうにつれて白く薄くなり、しかし、途中から暁色に代わる。海は黒く、また、蒼く凪いでいて、そして暁色の線が引かれている。

 揺らいでいる。


 太陽は白い。赤くもなく、青くもなく、白い。

 眩しい。


 綺麗だ。ここ二週間、この景色を見ることが楽しみになった。

 雪で見れなかった日もあったが、それでも朝日は美しい。


「よし、次だね」


 ライゼは、その景色を眩しそうに目を細めながら、俺に水筒を渡す。

 そして、少しだけ身体をほぐした後、砂浜に小さな宝石をばら撒き始める。


 宝石は朝日によって色彩豊かに輝き、眩しく光る。

 それは大きな楕円を描いていき、最後にはライゼを中央に巨大な楕円が描かれる。まぁ、楕円に中央はないんだけど。


 そして、深緑ローブの懐から二本の棒を抜く。

 訓練が始まる。

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