二話 依頼
港町にはすんなり入れた。
衛兵などもいたが、手続きが簡単だった。
なんでも、夏場なら兎も角、冬の時季に来る旅人はそこまで面倒な手続きを課さないらしい。
面倒な手続きを課すのは、犯罪を起こされた時に町の外に逃げられても捕まえやすくするためだ。
冒険者ギルドなどを通じて、国中に指名手配を出せる。
ただ、冬場は道が雪に閉ざされることも多く、また、普通に外にでれば死ぬので多くの人たちは安全に過ごす。
なので、犯罪も起こりにくく、手続きが簡略的になるそうだ。初めて知った。
こういうのを旅して知るのは楽しい。
たぶん、俺は一生誰かと旅して色んな事を知るんだろう。
「このような時期にようこそおいでくださいました」
そして、俺達は港町の町長にある依頼ごとがあると相談されていた。
元々は、この町にある冒険者ギルドに寄ったのが始まりだった。
二ヶ月ほどこの港町に滞在する予定なので、そのための長く借りられる宿屋や、もしくは借家を探すために、冒険者ギルドに行ったのだ。
冒険者ギルドは、流浪の冒険者が訪れる場所でもあるため、そういう冒険者のための宿屋や借家の斡旋なども行っている。
なので、滞在場所を斡旋してもらい、とある平屋を借り、滞在料金を払った後、二カ月間も滞在するのでその間に旅費などを稼ぐため、長期依頼がないか訊ねた。
そしたら、長期の指名依頼が丁度依頼されたらしく、レーラーは依頼主に仔細を聞くために移動した。
つまり、依頼主は町長だ。
そして、町長がレーラーに指名依頼を出したのは、たぶんCランク冒険者は少ない、いや、いなかったからだろう。
DランクとCランクには大きな差があったりするのだ。
なので、たぶん、Cランク冒険者のレーラーが来た情報を掴み、飛ぶように指名依頼をだしたのだろう。
情報のアンテナ力はとても高いと思った。
「それで依頼は?」
レーラーは淡々と訊ねる。
老人の町長は少しだけびくびくする。禿げた頭が何度も小刻みに下がったり、上がったりしていて、目も伏しがちだ。
レーラーはデフォルトが無表情で半眼なのだが、それを知らない町長は機嫌を損なったと思ったのだ。
そんな町長は少しだけ声を吃らせた後、咳払いして一枚の紙を出す。
「毎年、この時期になると飛雷魚という魔物が港にやってくるんですが、今年は数が多くて困っているのです。なので、その討伐を依頼したいのですが」
「何匹程度でしょうか? それと期限はいつ頃までですか?」
レーラーが訊ねる前にライゼが訊ねる。ここ三ヶ月で成長したとはいえ、見た目的には小五、六程度である。しかも童顔だ。
可愛らしい子供という感じしかない。
そんなライゼが柔和に笑いかけて訊ねるので、町長も少しだけ落ち着く。
「およそ、数十万程度かと。例年だと、一万匹程度なんですが、何故か今年は多くて。それで、年の終わりに港で終祝祭をやる予定なのですが、流石にその数の大群が港付近にいますと……」
終祝祭が開けないのか。
確かに、一年を感謝する終祝祭は重要な祭りだ。それに、終祝祭が終わったら、始祝祭だってあるだろう。
それを邪魔されるのは死活問題だ。
「……うん。受けよう」
それに思い当たったのかどうかは分からないが、レーラーは出された一枚の紙をしっかりと読み込んだ後、頷いた。
ライゼもニコニコと頷いた。
レーラーが依頼を受けてくれて嬉しいんだろう。ライゼはレーラーが受けなくてもこの依頼は受けるつもりの様だったし。
祭りなのだ。魔法を披露する絶好の場所だ。
まぁ、けど、レーラーは基本的に依頼された仕事を受ける。お手伝いとも言える依頼すら受ける。それは、彼女が他人との関わりを大切にしているからだと思う。
そうしようと努力しているからだと思う。
なので、依頼は必ず達成される。
「……ありがとうございます。よろしくおねがいします」
「こちらこそ、よろしくね。それと、報酬もお願いね」
そして報酬は、大銀貨十六枚と、魔導書が三冊である。
しかし、魔導書三冊のうち、二冊は偽物である。よくあるものだ。
だが、レーラーはその偽物の魔導書を集める事すら趣味にしているので、レーラーにとっては良い報酬になる。
ライゼは祭りが開かれること自体が報酬だ。
「はい、分かっております」
町長は老いた身体で精一杯頷く。
そうやって、ここ一ヶ月近い長期依頼を引き受けたのだった。
Φ
二週間が経った。
ライゼはいつも通り早朝前に起きる。寝たのは深夜に近かったが、子鬼人の種族特性によって眠る時間は少なく済む。
まぁ、それだけなのだが。
そして、俺もトカゲなので実際、眠る時間はとても少ない。
少ないのだが、しかし、惰眠を貪りたい欲求がとても高い。特に雪が降り始めたここ最近では。
それでも、ライゼが起きたのと同時に目を覚ます。
まぁ、それでも身体を起こしたり、目を開けたりはしない。
ライゼが寝間着から着替え終わってから起きるのだ。
『ヘルメス』
『ああ』
そしてライゼが着替え終わり、いつもの深緑ローブ姿になったところで、俺はトカゲ専用ベットから跳び起き、ライゼの肩に乗る。
それから、横でスースーと寝息を立てながら寝ているレーラーを見る。これもいつも通りの光景だ。
『じゃあ、行くよ』
『ああ』
そうして、ライゼはいつも通り魔法の訓練と、戦闘訓練をしに港へ出かけた。
港の一部は砂浜になっていて、ライゼはそこを訓練場として使ってる。朝日も綺麗だし。
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