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転生トカゲは見届ける。~戦えない俺は旅の足となる~   作者: イノナかノかワズ
第二部 序章:どこにだって光はある

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二話 お酒の良さは分からない

「ライゼ、代わるよ」


 昼過ぎになってようやくレーラーが起きてきた。

 しかし、身なりは整っておらず、服には皺だらけ、髪はボサボサでポニーテールも上手く結べていない。

 そして明らかに眠そうだ。


「はぁ、レーラー師匠。こっち来て」


 ライゼはそんなレーラーを見て深いため息をついた後、レーラーを自分の前に来させる。レーラーはライゼの前に座る。

 最近はライゼも成長期に入ったのか少し伸びたが、それでも二人の身長は近い。慣れた手つきで髪を梳かし、服を整え、レーラーの身なりを整えている姿を見ると、兄妹みたいである。


「うん、これでよし」

「ありがと、ライゼ」


 レーラーは、ライゼに礼を言った後、何処からともなく魔導書を取り出して読み始めた。

 ライゼはそれを見ながら、座っていた席を立ち、露店を出て行った。

 俺はついて行かない。スルリとライゼの肩から椅子に飛び降りる。


 ここ最近は、ライゼと常に一緒に過ごすことは少なくなってきた。仲が悪くなったわけでもなく、普通にそれでも問題ないと思ったのだ。

 俺はライゼの家族だが、家族が常に傍にいなければならない理由もないし、逆もしかりだ。

 だが、年頃のライゼにはプライベートの時間も必要だろうと思ったのだ。


『なぁ、前までどうやって身なりとかを整えていたんだ?』

『ん? いや、魔法で』


 そんな便利な魔法があるのか。


『そうだ、今度、ライゼにそれを教えよ』


 レーラーは思いついた様に頷いた。俺は椅子からレーラーの肩に飛び移る。


『……いや、というかなんでレーラーはその魔法で身なりを整えないんだ?』

『それは、ライゼがいるからさ。ライゼがやってくれた方が確実だし、変化があって楽しいんだよ』


 そういったレーラーの髪型はポニーテールではなく、三つ編みである。大抵三つ編みの時はライゼの機嫌が少しだけ悪い時だ。

 

『それに、ライゼがどういう気分なのかも分かるし』

『……そういうもんか』


 そう頷いて、話は止まる。

 俺はレーラーが黙々と読み進めている魔導書を肩の上で読む。

 

 それにしても相変わらず変な魔法の魔導書を読んでいるな。

 〝ワインを甘くする魔法(ワインズゥース)〟って誰に需要があるんだ。いや、あるからこんな魔法があるんだろうが、しかし、そんな魔法の魔導書を持っているレーラーも大概だと思う。


『ヘルメスはお酒は飲まないの?』


 甘くする理由が感覚的に分かっていないのだが伝わったのだろう。

 レーラーは訊ねてくる。


『……トカゲだから、飲むわけないだろ』

『あ、いや、前世の話。前世があるんでしょ?』


 レーラーにも前世は話してある。というより、レーラーは魂の研究をしているらしく、普通に前世がある事がバレた。

 魂の研究をしているのは、数百年前に友人から頼まれたかららしい。

 

 まぁ、頼んだ友人は死んでしまったらしいが。


『まぁ、あったはあったが、その頃の記憶って結構薄れてるんだよな。お酒を飲んだことを覚えているんだが、味は全くだな』

『……ちょっと待ってて』


 記憶が薄れるのは仕方がない。

 どうも、トカゲとしての記憶は八十年近く経った今でも鮮明に思い出せるのだが、人間の記憶は、何というかビジョンは覚えていても感覚とかの記憶は忘れているのだ。

 多分、トカゲの感覚に引っ張られていて記憶が上書きされてしまったからだと思うが。


 だが、レーラーはそれを聞いて目を瞑って唸っている。何かを思い出そうとしている。眉間に皺を寄せて、腕を組み、ウンウンと唸っている。

 時折、ああーと声を上げては落ち込んでいる。露店の前を歩く人々が、遠巻きに見ている。まぁ、見た目が森人(エルフ)のレーラーが声を出して唸っていたらそれは気にあるだろうし。


『あ、思い出した』


 そしてポンと手を打ち、スッキリした様に頷いた。

 それから、肩に乗っている俺に手を当てる。


「〝ワイ()ンの()味を()思い()出さ()せる()魔法()〟」


 そして新緑の光が俺を纏う。

 と、同時に口の中に懐かしいような、新しいような感覚が、味覚が蘇ってくる。


『どうだい。いい気分だろ』

『……すまん、やっぱり分からん』


 どうも、お酒の味が分かってもそれがいいとは思えなくなってしまったのだ。味覚が蘇っても、何とも言えない気分になってしまう。


『……そうか、いい案だと思ったんだけどね。まぁ、宿る肉体が変わると色々と問題なんだね』

『それは確かにそうだな』


 そうして、お酒はもう飲んでも意味がないんだなと、若干項垂れつつ、夕方になった。

 レーラーはその間、ずっと“魔導書庫”という祝福(ギフト)から魔導書を取り出して、読んでいた。レーラーは魔導書の収集を趣味の一つにしている。


 俺も、レーラーに頼んで面白そうな魔法が記載されている魔導書を出してもらい、読んでいた。

 そして、この魔導書で覚えた魔法は今度、魔道具として作ろうと思った。


 ライゼにとっていいものになるのではないかと思ったのだ。

 

 そして、結局魔導写本や魔道具が売れることなく、今日は過ぎていった。

 ライゼも、俺達が露店から撤収する頃には戻ってきて、夕食を近くの食堂で食べた後、夜遅くまでレーラーの魔法講義を受けた後、寝た。


 何でもない一日だった。

いつも読んで下さりありがとうございます。

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