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転生トカゲは見届ける。~戦えない俺は旅の足となる~   作者: イノナかノかワズ
第一部 幕間:gear

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今後、よく活用させてもらいます

 ポップはしがない商人である。

 とある大商会で修行し、ある程度の知識と経験と人脈を身に着けた後、商会長に申し出て、独立した。


 それからはゆっくりではあるが、順調に魔道具産業を中心に商売を広げていき、アイファング王国の王都では名の売れた商会となった。王宮にも品々を献上できるほどに成長したのだ。

 そんなポップ商会の商会長であるポップは、悩んでいた。


 数年前まで、ポップ商会は確かに通常の商会よりは大きな商会としての力はあったが、それでも王宮へと自由に出入りするほどの力は持っていなかった。

 そもそも、王宮へと出入りできる商会は、長年王国で商売をしていた老舗が殆どである。


 たまに、素晴らしい商品を作り上げ、売り出したことによって王宮入りが認められる事はあるが、それはごく一部。

 通常の商会では夢見ることはできても叶う事はないのだ。


 しかし、ポップ商会はそれを成し遂げた。

 それにはある魔導写本師と魔道具師の力添えがあった。


 数年前、商会にとある品が持ち込まれた。

 ポップは趣味として、魔道具、もしくはそれに関連する自作された品々を、どんな無名の者がもちこんだものであろうと、特別に買い取り、販売するという事業をしていた。


 もちろん、それは趣味ではあるが、ポップは商人だ。利益があってやっている。

 というのも、魔道具師を育てるにはとてもお金と時間がかかる。元々、魔道具師としてやっている者たちは大抵、所属している工房があり、魔道具を発注する時は、その工房を通さなければならない。


 しかし、老舗と呼ばれる大商会は、大商会自体が囲い込んでいる魔道具師がおり、そのものらによって新たな魔道具の開発が為されていた。

 工房に所属しているものは他の商会からも仕事を受けるため、極秘の開発にはあまり向いていないのだ。


 信用はあるが、万が一のための信頼はない。

 そして、新たな魔道具を作るという事はとても大変で、重要な事だ。一大事業なのだ。信用だけでは成り立たない部分がある。


 それに工房を通すと、開発料と技術料にかなりの中抜きをされ、新たに魔道具を作り、売っても大した利益にはならないのだ。

 そのため、青田買いではないが、自作した魔道具などを持ち込む事業を趣味との両立のもとやっていた。

 独学で売れるほどの魔道具を作れる者など殆どいないので、本当に趣味に近かった。


 だが、それでもたまに熱意と才能のある平民や貧民層の者が持ち込むことがあり、持ち込まれた魔道具自体は大したことなくても、その平民と家族を養うことによって、信用以上の価値を生み出すのだ。

 そして、ポップはその魔道具を作った者の才能を見抜く目があり、また、熱意を読み取る耳があった。


 そして数年前、息抜きも兼ねて魔道具の買取受付にいたポップはとある子鬼人の少年と出会ったのだ。

 

 最初、その子鬼人を見たとき、ポップはまずとても不審に思った。どうして、放出魔力が極端に低いと。

 しかしながら、魔力の揺らぎはなく、単に魔力量が低いのだろうと推測した。

 が、それでも腑に落ちない点が幾つかあった。


 放出魔力は極端に低いとはいえ、魔力の練度がとても高かったのだ。これは魔道具を長年見定めてきたポップだから分かる事で、普通は分からない。

 熟練の魔法使いでも分からない事らしく、ポップはひそかにそれを誇りに思っていた。

 そのため、放出魔力と魔力の練度が釣り合っておらず、とても奇怪だったのだ。


 だが、それもその子鬼人の少年が出した品によって納得がいった。

 子鬼人の少年は魔導写本を取り出したのだ。


 魔導写本とは、魔導書の原本を写したものである。

 ただし、単に写せばいいわけではない。


 魔導書とはある魔法の全てが記された本である。だが、その記すとは文字だけでなく、魔力によっても記されている。

 これは魔法を扱い学んだことのある人間にしか分かりづらい感覚なのだが、確かに魔力によって、それが一つの言語として記されているのだ。


 であるから、魔導書を写すには、文字だけでなく、魔導書に記されている魔力言語を読み取り、それを寸分違わず魔力を精密操作して記す必要があるのだ。

 熟練の魔法使いでないとそれができないと言われている。


 だが、目の前の少年が出した魔導写本は、確かに目の前の少年が写したものであるとわかる。直感的にポップはそう悟ったのだ。

 だからこそ、放出魔力の低さと魔力の練度の差に納得がいったのだ。


 それから、ポップはその少年と月に一度、魔導写本を買い取る契約を結んだ。

 といっても、向こうは長期的な拘束を嫌がり、また、家族もおらず、自分一人の力で生きていた事もあり、囲い込むことはできなかったが、それでも彼と繋がりを持てたことは、最大の利益になるだろうとポップは考えていた。

 それに、時折、少年が魔道具を持ち込むこともあり、その魔道具も今までにない発想ばかりで、技術料を格安で払い、買い取ったりしていた。


 そして、その魔道具と少年が持ち込む魔導写本によって、ポップは王宮商人になったのだ。


 まぁ、その代わり、少年にはポップ商会での、全商品が半額になるという権利みたいな物を与えた。

 それでも問題なく、というか詐欺まがいと言えるかもしれないくらい元が取れていた。


 もちろん、ポップは最初は悩んだ。しかし、少年がそれを理解していながら、提案してきたので受けたのだ。

 その代わり、ポップは少年に何かあっても絶対的な味方になると個人として決めた。


 そう決めたのだ。


 決めたのだが、しかし、その少年は王都を追い出されてしまった。

 少年に非がない事は、王宮の知り合いという名の情報を伝って知りえていた。

 しかし、少年を擁護することはできなかった。


 何故なら、少年がそれを望んでいなかったからだ。

 少年が王国に出る前に、冒険者ギルド経由で手紙を渡された。そこには、簡単な別れの挨拶と、もし他国で商会の支店ができたら寄りますという事が書いてあった。


 そして、今回は自主出国という形にしたいという要望があり、ポップは泣く泣く少年を擁護することをしなかった。

 

「……ん? いや、少年の助けはできるか」


 と、思っていたのだが、今までの状況を振り返っていたら、我に返った。さっきまで悩んでいたのが馬鹿らしい。


「よし、ファッケル大陸中に儂の支店を作ろう。いや、世界中にだ」


 白髪のオールバックの中老が立ち上がる。

 瞳には強大な野心の炎を宿し、言葉には覇気が宿る。


「おい、大至急、集まれ!」


 そして、ポップが丹念に育ててきた弟子たちを呼びつけ、そして、数年後。

 たった数年で、ファッケル大陸にポップ商会の支店が誕生した。


 しかし、彼の野望はまだまだ遠い。

いつも読んでくださりありがとうございます。

面白い、また読みたいなど少しでも思いましたら、ポイント評価やブックマークをお願いします。

また、感想や意見があると励みになります。


ポップは今後登場しないかも知れませんが、ポップ商会は度々出てきます。

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