十二話 観戦
「なぁ、見ていたか」
「ああ、もちろんだ。弟の試合だぞ」
「だが、お前が見ていたのはあの子鬼人だろ」
「……否定はしないが自慢の弟も見ていたぞ」
王立魔王学園の制服を来た少年二人がリングを見下ろしながら、言葉を交わす。
「けど、その自慢の弟も負けたけどな」
「……しょうがない。ゼライセは騎士としての剣は学んでいたが、経験が足らない。それに冒険者たちがよく使う小手先の業にも慣れていないからな」
「まぁ、それを学ぶためにこの学園に入るから当たり前なんだがさ。にしても、上手かったよな、あのライゼって子」
青髪の少年が感心したように呟く。
「ああ、最初に魔力弾を使ってゼライセの意識を魔法に警戒する様に誘導し、だが、その後数分間は近接戦闘をずっと挑んだ。だからこそ、ゼライセは最初こそ魔法に警戒していたのにも関わらず、あまりにも来ない魔法に油断した」
「そして僅かに自分が押してきたと思った瞬間、ライゼって子が大きな隙を見せたから、思わず攻めきれると思って攻撃を仕掛けた」
「そしてゼライセが左足を踏み込んだ瞬間、〝土を操る魔法〟か何かで左足の下の土を浮き上がらせて、ゼライセは体勢を崩して倒れる」
若干、紺が混じった金髪の少年がそう締める。
また、二人は少し大きな声で話し、今の試合を理解していない子たちにも教えていく。優しいというわけではなく、癖というかそういうものである。
「まぁ、けど、ライゼって子の魔法技術はかなりのものだよな」
「ああ。というか、俺達の学年でも無詠唱ができるやつがいるかどうかだ。入学もしていないやつができる方がおかしい」
「そうだな」
そして少し大きな声の二人の会話によって試合を理解した少年少女たちが、騒めいていった。
Φ
『で、乙女ゲ―って何なの?』
『試合が終わって早々それか。感慨とかはないのか?』
ゼライセって子の試合が終わり、控室に戻ったライゼは開口一番、俺にそう言ってきた。せっかく勝ったっていうのに、ライゼはどうでもいいらしい。
『いや、だって、今日のゴブリンの群れの討伐の方が大変だったじゃん』
『いや、そういう事を言っているわけでは……まぁ、いいか』
こう試合に勝った嬉しさとかはないのかと思ったのだが、ないらしい。そういえば、ライゼは魔法を使った戦いは好きだが、勝ち負けにはあんまり興味がないんだよな。上手く戦略を立てられたかどうかは気になるらしいが。
『それで乙女ゲーっていうのは、俺のもと居た世界にあったゲームでな、美少年やイケメンを一人の女の子が攻略するっているゲームだ。いわゆる逆ハーレムもののロマンス小説をゲームにした感じだな』
俺はライゼに前世の記憶がある事を話している。そうでなくては、数学や科学などは教えられなかったし、話しても問題ないと思ったのだ。
『ん? でも、内容って決まってるんだよね? だったら小説を読めば』
『ああ、そのゲームはどのキャラクターを攻略するかによってシナリオが分かれていて、プレイヤーが途中途中に提示される選択肢を選ぶことによってラストが変わるんだ』
『ふーん。ヘルメスの世界にはそんなゲームがあったんだ』
ライゼは控室から観戦でききる場所に移動しながら、不思議そうに頷いた。
『お、まだ、始まってなかったな』
『そうみたいだね』
そして、丁度ライゼが移動し終わったら、試合が開始した。戦っているのはアウルラとバラン・ハランという茶髪の魔法使いである。
この試合は準決勝である。次のライゼの試合も準決勝だ。
『拮抗しているね』
『両方とも魔法使いだからな。しかも同レベルの』
『うん、それにあのバラン君は〝魔法を反射する魔法〟にもある程度対応しているし、あのお姫様もバラン君が使う〝鋼鉄の花を咲かす魔法〟にも対応してる。両方とも魔法をキチンと勉強してきたって感じだね』
そう、彼女たちは百人の中から残った四人のうちの二人である。魔法が得意なのだろう。
アウルラはお姫様だから質の高い講義は既に受けているだろうし、あのバランも魔法専門の貴族の子なのだろう。他の受験者たちよりも魔法技術が高い。
だが、戦略性はまだ高くないし、戦闘にも慣れているわけではない。そういうのも学ぶためにこの学園に入ってくるのだろう。同年代というのは成長するにはとっておきの劇薬だからな。
けど。
『あのままだと彼の魔力が先に尽きるね』
『ああ、バランの魔力量もあの年にしては高い方だが、姫様は別格だな』
『そうだね。あの魔力にものを言わせて飽和攻撃をしてきたら対応に困るね。決勝で気を付けないと』
ライゼは既にこの試合にも、そして次の自分の試合の結果も決めつけている。
これは油断でも何でもなく、今戦っている彼女たちも、また、ライゼが戦う対戦相手も魔法使いであるからそう断定しているのだ。
ライゼの魔力感知能力は高い。また、それによる相手の魔法技術を見極める能力も高い。それは〝魔法を解析する魔法〟を使わなくても、相手の力量をほぼ丸裸にできるくらいには。
熟練の魔法使いならばその上での駆け引きがあるのだが、受験者たちは魔法を習っていようと実戦経験が足らない。冒険者の依頼で実戦経験を積んできたライゼとは踏んだ修羅場が違うのだ。
だからこそ、油断でも何でもなく試合の結果を断定しているのだ。まぁ、ライゼに近い程の戦闘能力や経験がある相手だと違うが。
そしてライゼが予想した通り、この試合はアウルラが勝った。
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