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モンスターテイマー、仲間と共に敵を倒す

 ヨルムンガンドにドロップキックをかまし、攻撃を退しりぞけたレナ。

 彼女は二人に振り返ると、困ったような笑顔を浮かべる。


「申し訳ありません、少し寝坊をしてしまいました」


「よくこの中で眠れたな……」


 呆れ笑いし、彼女に感謝を伝えるハリス。

 リンゴに背を向け立ち上がった彼は、身体を持ち上げる大蛇にレナと肩を並べて対峙すると、背後に声をかける。


「まだ戦えるか、リンゴ」


「……はい」


 服の袖で涙をぬぐい、彼女は立ち上がる。

 強気な表情は変わらないが、雰囲気からは憑き物が少し剥がれ、立ち姿も堂々としている。


 全員の戦闘態勢が整ったところで、ハリスは二人に命じる。


「敵と和解は不可能。レナと俺は前衛に立ち、中近距離で仕掛ける。リンゴは例の光魔術で俺達の援護を頼む。遠距離系はお前に任せた」


「畏まりました」


「了解です!」


 全員役割を理解すると、ハリスはヨルムンガンドを睨みつけ、告げる。


「……行くぞ」


 号令と同時に、ハリスとレナが地面を蹴り、前方に大きく跳躍する。


 仕掛ける二人に、大蛇は大きく口を開き、牙から毒液を噴射した。

 霧状の毒液が二人を包もうとするも、後方で杖に光を集めたリンゴが、カウンターするように叫ぶ。


「『ライトレイ』!」


 放たれた光線が、毒液を飲み込んで蒸発させる。

 危険の無くなった二人は勢いを止めず、少し先行したレナが、ヨルムンガンドの顎へ潜り込み、拳を突き上げる。


「はあぁッ!」


 放たれたアッパーは、ヨルムンガンドを打ち上げる。

 上空高く飛んでいく頭部。それに繋がって長い胴体が、足元の葉からとめどなく伸び続ける。


 いくら世界樹が巨大といえ、どこにその体躯を隠していたのだと驚くハリスだが、すかさず彼も攻撃を繋げる。


「リベイルケイン!」


 振り上げられ、空高く伸びる硬鞭の先。

 ヨルムンガンドの頭にそれが巻き付くと、ハリスは強制的に寄せる。


 流星のように戻ってくる大蛇の頭部へ、拳をぶつけるハリス。

 瞬間、ズドン! という音と共に、衝撃が世界樹の葉を舞い上げた。


 食らったヨルムンガンドも、度重なる衝撃に目を剥き、持ち上げていた長い胴体を横たえる。


 ハリスが鞭を縮め、レナと共に様子を見ると、後ろからリンゴが呟く。


「やりました、か……?」


 不安げに漏れるその言葉は、不幸にも的中する。

 気絶していたかのように見えたヨルムンガンドは、突如頭を持ち上げ、激しく咆哮する。


 それを合図にするように、全身を纏っていた鱗が次々に剥がれ、宙を舞う。

 濃紺の鱗を脱ぎ、白く柔らかな新しい鱗を覗かせる大蛇は、三人を睨む。


『キシェアアアァァァァァァッッ!』


 叫んだ瞬間、舞い散る鱗が、一斉に彼等へ放たれる。


 一面に広がる藍色の弾幕に気を取られ、動作が遅れ無防備になるリンゴ。

 しかしそんな彼女の前に、ハリスとレイが背を向けて立ちはだかる。


 ハリスはリベイルケインを高速で振るい鱗を弾き、レナは防御姿勢を取って自ら壁となり、揃って少女を守る。


「ハリスさん! レナさんっ!!」


 リンゴの声を背に、二人は回避不能の攻撃に立ち向かう。


 レナの纏う買ったばかりのメイド服は、鋭い鱗にズタズタに引き裂かれていくが、彼女はそれすら厭わない。

 少女の瞳に映る二人は、過去に出会った誰よりも、頼もしく映る。


 彼等に守られて、ただ見ているだけにはいかない――瞳にプライドの炎が灯ったリンゴは、二人の背から大蛇の頭に照準を合わせる。


「あなたが弾幕なら、一点集中で――ッ!」


 呟いたリンゴは、杖の先に眩い光を灯し、突き出す。


「『ライトレイ・メーサー』あああッ!」


 絶叫と共に放たれる、一閃。

 通常の『ライトレイ』を極細に収束した光は、ヨルムンガンドの瞳を容赦なく撃ち貫く。


『ギェシャァァァァアアアアアアッッッ!?』


 雄叫びを上げ暴れ出す大蛇。

 同時に鱗による連撃も停止し、防戦のハリス達も解放される。


 弾幕をその身で受け切ったレナは、服がほぼ機能していない程に、大きな胸や臍、太ももが露出してしまっている。

 それでも肉体は一切傷ついておらず、ハリスへ顔を向ける。


「今です!」


「ああ、行こう!」


 合図を交わした二人は、ヨルムンガンドへ走り出す。

 頭を上げてのたうち回っていた大蛇も、迫る彼等に気づき、機能している片方の目で見下ろす。


 金色の瞳には、同時に跳びあがった二人の姿が映り込む。

 リベイルケインを構えるハリスは、跳躍しながらイメージに至る。


(突き立てて魔力を漏らすことができるなら、その逆もできるのではないか?)


 確かな閃きが脳を駆ける中、ヨルムンガンドは二人に食らいつこうと、口を大きく広げる。

 だがそれを見たレナが、空中を蹴って加速し、開かれた両顎を上下で掴む。


「ハリス様を食らおうとするなど、随分貪欲な口だな!」


 威圧する声で告げると、レナはヨルムンガンドの顎を無理やり開き、外す。

 攻撃手段を失い、頭を持ち上げ無防備になった腹が、ハリスの眼に移る。


 瞬間、彼はリベイルケインを勢いのまま、大蛇の胴へ突き立てる。

 そして先ほどのイメージを頼りに、シンクロによりヨルムンガンドと同量になった魔力を全て、相手の体内へ流し込む。


 青白く光る硬鞭の先。枯渇すれば動けなくなる魔力を、逆に許容量を超えて過剰注入されるとどうなるか。


『ギィェェェエエアアアアアアアアアアアアアッ!?』


 悶絶の声を上げるヨルムンガンド。

 同時にハリスはリベイルケインを引き抜き、着地する。


 遅れてレナも彼の隣へ戻ると、彼等の背後で全身から光を放った大蛇が、粉々に吹き飛んだ。


 激しい炸裂音に、レナはハリスが何をしたのか察する。

 そして彼女は薄く微笑み、話しかける。


「やはりハリス様であれば、使いこなせると思いました」


「ああ。まあ相手の魔力が少ないときは、回復させるだけになってしまうがな。改良が必要な技だ」


 決着をつけてすぐ、自身の戦闘を反省するハリス。

 それを聞いたレナが顎に手を当てると、何かを思いつき告げる。


「技名は『リベイルクラッシュ』などいかかでしょうか?」


 妙なことを言い出すレナに、きょとんとした顔で振り向くハリス。

 激闘を終え、気の抜けた二人の元に、逆転の功労者であるリンゴが駆け寄っていく――。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[一言] これはいつの日か、 リベイルケインを抜いて後ろを向くハリス>かっこいいポーズをとるハリス>敵大爆発 という黄金パターンが描写されるに違いない>リベイルクラッシュ
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