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遭遇4回目

五日後、エレベーターホールにまた不審者がいた。


「はーーーーーーーー」


「人の顔見てため息つくな!」


「顔、見えてませんけどね」


「誰がうまいこと言えと」


「言った覚えはありません」


床にしゃがみ込むの癖なのかな?

指で床になんか書き始めた。と思ったら急に顔をあげた。


「ああ、そうだ。おまえちょっと俺の部屋に来い」


「!?」


身の危険を感じて、とりあえず距離を取る。


「なんですか、欲求不満ですか。他を当たってください」


「ちっげぇよ!実家からみかんが箱で届いたんだけど食い切れねぇからちょっと持ってけって話だよ!!」


なんだ、そういうことか。


「ああ、ぼっちあるあるですね」


「誰がぼっちだ!!」


「数回顔を合わせただけの、友達でもなんでもない人間におすそ分けしようとする人のことですかね?」


がっくり項垂れた。

しまった。正論過ぎたか。


「まあ、そういうわけで、私は結構ですから他の方へどうぞ」


「他に当てがあればおまえなんかに声かけねぇわ!」


本当にぼっちだったらしい。

少し憐れみの目で見てしまった。


「そんな目で見るくらいなら受け取れ」


一理ある。


「はー。しょうがないですね。わかりました」


「ほんとか!?」


ええ、そこで嬉しそうにしちゃうの…。

まあいいや。みかん好きだし。


「じゃあ行くぞ」


「いえ、ここで待ってるんで持ってきてください」


「え?なんで?」


「野郎は全員クズ虫だ、って兄に言い含められてますんで」


「…………………。まあ、いい。すぐに持ってくるから待ってろ」


ポーン


ひらりんが乗ったエレベーターを見送る。

うーん、なんだろう。これだけ言いたいこと言ってるのにメゲずに話しかけてくるひらりんとの会話に、少しだけ心地よさを感じ始めている。まあ、いいか。


ポーン


ちょっとボーッとしてたら、ひらりんはすぐに戻ってきた。袋にいっぱいみかんを詰めて。


おお、大きくて艶々してて美味しそう!


一気にテンションが上がった。


袋を受け取りお礼を述べる。


「わあ、立派なみかんじゃないですか!」


「そうだろう、そうだろう」


ひらりんもよくわからないけど満足気にしている。うん、こんな良いみかんを腐らせちゃいけない。

いつもスーパーの袋入りの小さくて皮の薄いのしか食べてなかったからなー。あれはあれでいいけど、これ絶対美味いやつだ!

知らず笑顔になる。


「これで夕食後にこたつでみかんが楽しめます!」


「こたつ、あるのか?」


「ありますよ。ないんですか?」


「ない」


「いいなぁ、買おうかなぁ」などとつぶやいている。

うん、買ったらいいよ。どうせ金持ちなんでしょ?むしろ今まで何故買わなかった。


「なんで持ってないんです?」


「だってオシャレじゃないだろ」


うわぁ。


「その考え方がダサいです」


「ぐっ!?」


「どうせ誰が来るわけでもないんでしょう?」


「ぐはあっ!!………おまえ言っていいことと悪いことがあるぞ!」


「……………」


「憐れむなぁっ!」


なんか肩で息をしている。


とりあえずお礼は言ったしエレベーターに乗り込む。

ひらりんは「ちょっと行く所ができた」とマンションを出ていった。



うむ。みかん、ゲットだぜ!


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