遭遇3回目
三日後、一階のエレベーターホールにどこかで見たようなマスク+メガネ+帽子の不審者がいた。
無視しよう。
そう思ったのに向こうから声をかけてきた。
「おう」
無視しよう。無視だ無視。
「無視すんなおい」
仕方なく嫌々視線を向ける。
「何ですか?」
「くっ、虫ケラを見るような目ぇしやがって。この俺がせっかく声かけてやったっていうのに」
「不審者に声かけられて喜ぶ趣味はありません」
「誰が不審者だこら!」
「そこの鏡で確認したらどうです?」
エレベーターホールの鏡を示したら、ちらっと見て「くっ」とか呻いた。自覚しろ。
ポーン
エレベーターが到着した。
やっぱり帰宅時間帯はたまに待たされるよなー。
「お先にどうぞ」
そう言って、不審者もといひらりんがエレベーターに乗るのを見送る。
扉が閉まりかけたところで、なぜかひらりんが扉に手をかけて止めた。
「何してるんです?」
「なんでおまえ乗らないの!?」
なんか慌ててるけど、そんなの決まってる。
「不審者と一緒はちょっと…」
ひらりんはその場にしゃがみ込んでしまった。
邪魔だなー。
「ちょっとおまえ、俺に厳しすぎない?」
「そうですか?(不審者には)こんなもんだと思いますけど。あ、それからおまえって呼ぶのやめてくれません?さっきからぞわぞわして気持ち悪いんですけど」
「ほんと、もう…じゃあなんて呼べばいいの」
うーん、名前教えるのも嫌かもしれない。
「やっぱりおまえでいいです」
「名前教えるのも嫌っておまえもう本当どんだけ…」
エレベーター止めたままいじけるのはやめた方がいい。
「そこいたら邪魔ですよ」
隣のエレベーターが到着したのでそれに乗り込んだら、なぜかひらりんもこっちに乗ってきた。降りようとする前に扉を閉められてしまう。
どうでもいいけど私の階のボタンまで押すのやめてほしい。
嫌そうな目で見たら、なぜか得意げな顔をされた。
「なんです?」
「ふふん、俺は誰かさんと違って記憶力がいいからな」
「正直、気持ち悪いです」
あ、またしゃがみ込んだ。
まあ、静かになったからいいか。
ポーン
自分の階に着いたので、さっさと降りた。扉はすぐに閉まって、上の階へと移動していった。




