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64) いざいざ、勝負!!





 どうやら先方は、ムッと顔をしかめた俺を見咎(みとが)めたらしい。

険悪ムード先輩が、今度は俺の頬を木剣でペチペチやってくる。

「少しばかり見た目は良いようだが、どうせ辺境伯閣下に取り入った阿婆擦(アバズレ)れな後妻(ははおや)にでも似たんだろうよ。せっかくの美人だが、こうも可愛げがねぇと憎たらしいぜ」

言いたいことを言いやがってから、ハッハッハー……なんて高笑い。

更にムムムッと目を細めて奴を見上げた。




 (にら)んだら、睨み返してくる険悪ムード。

ここまでされたら、もはやコイツは先輩なんかじゃないよね。

新入りとしての節度は守ってきたつもりだが、自分の立場を(かんが)みれば放置するわけにもいかないだろう。

末席の末っ子とはいえ、お(いえ)沽券(こけん)に関わる案件だ。

家族までもを虚仮(コケ)にされちゃ敬い続ける義理もねえ。

「…………」

無言で見上げる俺。

その態度もお気に召さないらしい険悪ムード。

「何だよ、やるのか? 来るならコイやぁ……返り討ちにしてやんよ」

フフンっと鼻で笑う。

なるほど。もしかしてこれは、俺の方から仕掛けるように挑発してるのかな?

いやいや。いちおう今は自習時間で、喧嘩じゃなく試合なのだ。

そう考えたら、多少は冷静になった。



 そうそう、喧嘩じゃなくて試合だよ。

だから、審判の開始宣言を待たなくちゃ。

顎割れ先輩に視線を移すと、彼はコクリと頷いた。

「ひとつ忠告しておこうか、無駄口は閉じたほうが身のためだ。それと、相手を見て賢明な判断をするべきだな。あ、二つになったがまぁ良いか」

余計なことで今更かも知れないがと、苦笑交じりに意見を述べる審判係。

それから表情を引き締めて、二回戦の開始を宣言する。

「それでは双方構えて、……始めっ!!」









 じつを言うと、俺もペルタも素振り(基本の型)受け流し(パリィ)しか教わっていないんだよ。

毎日、ほとんどが例の体操と素振りと走り込みだけだった。

オルンさんたちがときどき切り込んできて、咄嗟(とっさ)にそれを受け流す。

やり返そうとしたら、まだ攻撃は駄目だって止められたんだ。

訓練中も他のときにも、オルンさんが許可するまで禁止を言い渡されている。

何でだよって聞いたら、危ないからねって。

……そりゃぁ、攻撃って危ないだろうけどさ。

それじゃ、いざってときにやり返せないじゃないか。

そう言い返したら、攻撃はまだ早い護りだけで充分だ、だってさ。






 まぁ、とにかく俺たちまだまだ初心者なんだよ。

そもそもが、試合なんて無茶振りなんだ。

だいたい、試合の作法すら知らないんだからね。

そんなの実戦じゃ役に立たないんだろうけど。



 表向きは試合で内情は、険悪ムードの鬱憤(うっぷん)晴らし。

奴らは俺とペルタが気に入らないらしいのだ。

そんなワケで、俺はともかく相手は喧嘩腰みたいだね。



 こちらから適当に突っ込んでいっても良かったが、オルンさんの言いつけどおりに守備だけで何とかしたいと考えていた。

言いたい放題言われて腹立たしいが、やっすい挑発にのってやる気はさらさらない。

要するに、攻撃方法を知らない俺はペルタ同様に棒立ちだったわけなのさ。




 向こうさんからしてみれば、じつに無防備。

何処からでもかかってきやがれって言っているようなもの。

繰り返すけど、仕方がないじゃん? 俺ってば初心者だもの。

案の定、険悪ムードが先制攻撃を繰り出した。



 カ、カ、カ、カカカカカカカ……カカッガガガ ────


 初手からの連撃。

防戦一方な俺。

奴は余裕そうな表情で攻めてくる。


 ズガガッ、カカカッ、ガッガッガガガ ────────


 初めての試合で戸惑いがあり、ちょっとだけ後退しつつ受け流す。

それから、踏みとどまって耐え忍ぶ。

そんでもって……ふと、何だコレっていう違和感を覚える。

何だか知らんけど、いつもの自主練習の方がしんどいよなぁって思い至ってしまったのだ。

先ず、踏みとどまれてるのがおかしいなって。

オルンさんたちが相手だと、(いや)(おう)でも後退するしかないんだよ。

んで、追い詰められて降参させられる。

ヘロヘロに疲れて防ぎようがなくなり、参りましたって言うまで攻撃が続くんだ。

ホントあの人たち、情けも容赦(ようしゃ)もあったもんじゃないんだよ。




 それが、今はちがうんだ。

最初こそ数歩ばかり後退(あとずさ)ったが、そのあとは動く必要を感じない。

踏みとどまり、全ての攻撃を跳ね返すのみ。



 あ、そういえば。

最近は手元近くのヒルト辺りで受け止めるっていう練習もやったっけ。

せっかくだから試してみようか。




 木剣の手元部分で、ガシッと相手の攻撃を受け止めた。

互いの剣を交えつつ、双方の力が拮抗した状態に持ってゆく。

あえて鍔迫(つばぜ)()いのかたちにしてみた。

そうしたら、険悪ムードの表情が間近に迫って睨まれた。

目玉が血走ってて、ちょっと怖い。めちゃ怖い。

うわぁ、やだなー、益々険悪になってるぞ。

「こんのぉぉ、小癪(こしゃく)なっ。打ち返すしかできない小僧のくせに、無駄(むだ)(ねば)りやがってっ……」

うぐぐぐぐって唸りながら忌々(いまいま)しそうに文句を言われるが、まぁ言い返す言葉もないね。

仕方がないさ、事実そのとおりなんだしさ。






 腕にグイっと力を入れて、相手の身体ごと跳ね返す。

再び、連打連打の連続攻撃。


 カカカッ、カカカッ、カカカカカカカ……───────


全てを返し、どんなに打ち込まれても耐えるのみ。

ひたすらに、そうやっていたら。

……おやっ、対する険悪ムードが!?

何だか…………ちょっと、様子がおかしいな!??








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