62) 再びの険悪ムード先輩
すっかりご無沙汰をしております。
何とか書けた一話分を、できたてホカホカ誤字盛りだくさんで投稿しちゃいます。
滅多に投稿できなくてノロノロで、申し訳ねぇっすぅ(´;ω;`)ぅぅぅぅ。
いつも作品を読んでくださりホントにありがとうございます。
まだしばらくノロノロが続いてしまいそうですが、ノロノロがんばりますので……どうかよろしくお願いいたします(_ _)☆
さて、今日も訓練の時間になったので騎士団訓練場にやって来た。
騎士団候補生の訓練場は街外れの場所に設置されていて、走って行っても半時くらいかかる。
広い場所を柵で囲っただけのその場所に、俺やペルタを含めて候補生が数十人ほど集まって毎日の訓練に勤しんでいるわけだった。
木造平屋の事務所兼教官室と掘っ立て小屋みたいな倉庫が建っているだけで、他には何もない。
担当教官は三人で、全員揃って熊のような大男。
もちろん騎士団本部から派遣されている人たちである。
彼らが候補生たちに指示を出すときには、大声で怒鳴るのが当たり前のようだ。
たぶん、そうしないと言うことを聞かない奴らが数人ばかり居るからかも知れないね。
少しばかり前に、オルンさんが喉に良い薬はないかと相談されて、喉を労わるキャンディを大瓶で売りつけたと言っていたっけ。
ついでに出来の悪い候補生が言うことを聞かなくて困る……なんていう、愚痴まで聞いてあげたのだとか。
先生も薬師さんも、どちらもお疲れさまと……その時の俺は他人事のように聞いていた。
それが今、ちょっと他人事じゃなくなりそうなんだよね。
目の前に立ちはだかるのは、俺が初日に木剣をぶつけてしまった険悪ムード先輩だ。
え? 先輩の名前はって? じつは、まだ知らないんだよ。
なぜか知らないけれど、俺とペルタは目の敵にされているみたいでさ……名前を尋ねても教えてくれるどころか、まるっと無視され続けていたからね。
そういえば、この人も教官が言うところの“怒鳴らないと言うことを聞かない奴ら”の一人だった。
むしろそういう輩の親玉らしい。
この険悪ムード先輩は、数人の腰巾着を従えて訓練場内でやんちゃな振る舞いを繰り返しているんだよね。
この数日間だけでも、この人達のおかげで連帯責任という名目のもと場内駈歩訓練が十周追加なんてことが何度かあった。
賢明な騎士団候補生の皆は文句も言わず黙々とそれに従っているのだが、おそらく彼らに対する相当な反感が燻っているだろうとは思う。
でも、誰も文句を言ったりしないのだ。
俺がこんな風に奴らにちょっかいを出されそうでも様子見を決め込んでいる。
珍しく候補生たちに自習を言い渡し、教官たちが事務所に引っ込んで直ぐにこの騒ぎ。
それなのに。
あのちょっと、皆さんってば見てないで誰か助けてくれませんかねぇ。
険悪ムード先輩自らが、俺の肩をバシッと突き飛ばす。
おっとっと。面倒くさい事態に考えごとで現実逃避をしていたよ。
「おい。領主の子どもだからって年上に生意気な態度をとってんじゃねぇよ! この訓練所じゃ俺様が最年長の古株だ。ちゃんと敬え。礼儀をわきまえろ」
ほほう。いつまでも正規騎士団入りできない古株ってのは、やっぱりこの人だったのか。
最年長って、あんた。
ソレを自慢しちゃいますか。
いやさ、ちょっと初日に木剣をぶつけちゃっただけじゃないか。
それに俺、あのときにちゃんと謝ったよ?
あとは良い子に大人しくしていたはずだけどなぁ。
腰巾着どもは、周りで囃し立てる。
「どうせ直系じゃない後妻夫人の連れ子なんだから、ほぼ庶民だろが。俺らと何が違うってんだ」
「しかも、最近になって引き取られたってさ。本物かどうかもあやしいぜ」
「そうだ、そうだ。ちょっと痛い目にあわせて躾けてやれ」
おやおや皆さんったら、俺の事情をよくご存知で。
険悪ムード先輩が悪い笑顔で、それも有りだななんて言ってるよ。
無いからね? それをやっちゃうと拙いと思うよ、俺は。
「訓練を始めたばかりのヒヨッコが。ちょっとばかり筋が良いなんて教官たちに褒められてイイ気になるなよ? あぁん?」
えぇぇ、そんなの知らないし。
もしかして、それで僻んじゃってるの!? えぇぇ。
「そっちのソバカスも同罪だ。気に入らねぇ。お前も最近生意気なんだよっ」
えぇぇ、ペルタまでイチャモンつけられちゃったよ。
「ご領主様のご子息だか何だか知らないが、たかがヒョロヒョロの弱っちい子どもじゃないか。世の中カネと実力がモノを言うんだぜ。そこんところを辺境一の大店の跡取り息子である俺様が、直々にお前たち二人を指導してやる」
ふーん。先輩ったら、お金持ちのお坊ちゃんなのか。
それにしてはガラが悪い。
ちょっとばかり親の顔が見てみたいもんだ。
行けいけアニキ〜、生意気な新入りを叩き直せ〜、ソーダソーダ〜……などなどと、楽しげな野次が飛び交う訓練所。
依然として自習時間になっているらしく、教官たちが戻ってくる様子はない。
ねえ、ちょっと、ワザとだろ。
これ、ワザと自習時間にしやがったんだろが。
よぉし、覚えてろよ。
キッチリと騎士団本部の教官殿に言いつけてやるからなっ。
訓練用の木剣を持たされた俺とペルタは、険悪ムード先輩たちと向き合った。
奴らが言うには、どちらの実力が勝っているのかここで白黒つけようじゃないかってことらしい。
そんでもって、こちらが二人なので、あちらも先輩の腰巾着が追加で参戦するらしい。
相変わらず先輩方の名前がわからないので、もうひとりは腰巾着先輩とでも呼んでおこうか。
たぶんペルタに聞けば名前くらい教えてもらえるんだけど、面倒くさいと思ってしまう。
聞いても一晩寝たら忘れそうだし、とくに覚えなくても問題なさそうなんだもの。
険悪ムード先輩が手慣れたように場を仕切る。
「ソバカスとヒヨッコ組、俺様たちの二人組。この二対二で勝負しようじゃないか」
「……先輩、お言葉ですが……おれたちみたいな初心者相手で勝負に勝っても、何の自慢にもならないと思いますよ?」
ダメ元で止めてくれないだろうかと言ってみた。
「うるせぇ。俺様は勝負よりも生意気な奴らを叩き潰すことの方が大事なんだ。お前ら、今更になって怖くなったからって尻尾を巻いて逃げるなよ?」
やはりダメだった。
これは受けて立つしかなさそうだ。
仕方がないから、ごめんねって意味も込めて隣の相方にボヤいてみる。
「うわぁ。後輩を指導するんじゃなくて、叩き潰すって言っちゃってるぅ。……ペルタ、巻き添えにしちゃったみたいでゴメンよ。……どうする? この人たち、棄権させてくれそうもないぜ? 仕方がないから、おれと一緒にボコられてくれる?」
ふと見れば、どうやら彼も彼で苦笑いするしかない様子。
「木剣を振り回し始めてまだ数日だってのに……若様、ホントいい度胸してるっすね。ここまでされたら引けないっす、お付き合いするっすよ……怖いけど。ハハハ……」
結果的に俺が巻き込んじゃったみたいなので、ペルタには詫びるしかないんだけどさ。
彼は引きつった笑顔ながらも俺に付き合ってくれるらしい。
互いに顔を見合わせて頷いた。
ははは。顔色が良くないぞ、大丈夫かペルタよ。
俺は大丈夫じゃないけどな。




