59)再び自主練習……の前に、お喋りというか打ち合わせ
またまたのお久しぶりでございます〜☆
12月中頃を目標に連載再開を予定しておりましたが、ちょっと無理そうな感じでおりまする。
大変申し訳ございませんですっ(_ _)
この回と、あともう一話分のストックしかございませんので……本年度中の投稿は、今回と来週辺りにもう一回の予定とさせていただきたいと思います。
いつも幻想百貨店を読んでいただきありがとうございます(>ω<)☆
寒さが本格的になってまいりましたので、皆さま風邪などに気をつけて元気にお過ごしくださいませね。
相変わらずのノロノロ展開でございますが、お楽しみいただけたら嬉しいです♪
ペルタの話から、少しだけ見習い騎士の現状を知った。
せっかく騎士を目指そうと入団した年少者たちが長続きしないので年々人数が減少しているし、やる気がないから質も低下しているというわけなのだ。
そこのところを辺境騎士団の教官殿に話してみると、彼からはそのままで良いのだという返答をいただいた。
候補生を指導している教官殿の、そのまた上官にあたる人らしいんだけど……彼は正騎士団の教官で騎士団幹部の一人でもあるらしい。
ファサードさんっていう、けっこう偉い人みたいだよ。
自己紹介してもらったんだけど、俺の脳内では名前よりも特徴的な語尾の方が印象に残ってしまっている。
そのファサード教官殿が言った。
「辺境伯爵家のご子息であられる貴方様は別として、見習いたちは篩い落としが必要なのですよっ。候補生を指導する教官たちにもワザと単調で物足りない訓練内容にするよう指示を出しておりますからっ。さすがは末若様、もう物足りなくなったのですねっ」
いやいや……俺は木剣の振り方も知らないような素人で、問題外だから。
物足りなさを感じているのはペルタだし。
っていうか、意外にもワザと数を減らしているっていうことなのか。
「篩い落としているんですか? せっかく集まった候補生の人数が減っちゃうのに?」
「はいっ。そうですね、ボンクラを数だけ揃えても何にもなりませんからねっ」
「……ボンクラ……」
「はいっ。半年も同じ訓練をやらされているだけの奴らはボンクラでしょうっ? 任務や戦闘は生易しいものではありませんっ。耐えられる者だけを残すのですよっ」
うわぁ……なるほど。
けっこう厳しいな。
「でも、候補生たちの質が落ちてるって聞いたけど……その辺はどうお考えですか?」
「ほほぅ。末若様の耳にまで、そのような良からぬ噂が入りましたかっ。質が落ちているというのはたしかな話ですが、問題ございませんぞっ。一部分の見習いたちの素行が悪くて苦情が来ておりますが……質が悪いなんて言っていられるのは見習いのうちだけですからねっ。入団後に正規の騎士たちに揉まれて向上するか落ちこぼれるかは本人次第ですし、まぁ……落ちこぼれるような奴は、端から正式入団できんでしょうっ」
あちゃぁ、断言しちゃったよ。
「要するに……騎士団候補生の訓練内容は最低限どころか、ほとんど内容がない。やる気のある奴は自主的に動いていかなきゃ成長できないってことですね……一応は理解しました」
「はっはっはっ……若様には馴染みのない考え方かも知れませんなっ。候補生としての在り方そのものから、既に入団試験が始まっているのですっ。もう少し大きくなられて辺境に馴染まれれば、きっとわかっていただけると思いますぞっ」
「……っと、そうですね……おれも頑張ります……」
「はっはっはっ。何を仰いますかっ、貴方様は騎士の上に在るべきお立場でしょうにっ」
にこやかにバシバシ背中を叩かれて、ちょっと前のめりになっちゃった。
オルンさんとペルタと三人で、次の日も訓練後に自主練習をすることに。
その前に、ファサード教官との話を聞かせたんだよ。
「おぉっふ……やっぱり一筋縄では騎士になれないんすねぇ」
って、ため息混じりにペルタが言う。
「思っていたよりも放任主義だったから、正直驚いたよ」
ぽろりと俺が本音をこぼす。
「なぁーんだ、わりと面倒見が悪いんだねぇ」
薬師さんは苦笑い。
教官殿の話だと、騎士団に正式に入団できたら滅茶苦茶シゴかれるんだってさ……そっちは面倒見が良いっていうことかな。
どちらにしても、あんまり嬉しくないような?
ペルタが再びため息を吐き出す。
「たしかに、今も残っている連中は正規騎士団に兄貴が居たり先輩騎士に知り合いが居たりしている奴ばかりっす。ってことは、訓練以外でも自主的に鍛えているんすよね。はぁ……やっぱり伝手がないと厳しいかぁ……」
彼は途方に暮れた様子で虚空を見上げた。
「ペルタは先輩や正規騎士に知り合いは居ないのかい?」
一応だけど、確認だ。
「残念ながら居ないっすよぅ。地位あるお方の伝手っていえば末若だけです」
「ははは……よせやい。おれは勘定に入れるなよ。見た目は多少なりともマシになったかも知れないが、孤児院育ちの野生児なうえに何の権限も持ってない末っ子だ」
ないとは思うがアテにされても困るので、己の立場を自己申告しておこう。
放浪の末に行き倒れ予定だったのが、運良く拾ってもらえた五男坊なんだよ、俺は。
そう言ったらガバっと振り向いて、ジトッと俺を凝視するペルタ。
「えっ!?」
俺は何事かと、ちょっと首を傾げた。
「ん? 何か?」
オルンさんは隣で黙って話を聞いている。
「ちょっと、何なんすか……孤児院て。…………最近まで行方知れずだったとは聞いてましたけど、どんだけ過酷な幼少時代だったんすか……」
あ、何か盛大に勘違いされてるかもって思って焦りまくる。
「違うちがう。あぁーもぅ、余計なことを言っちゃったなぁ……おれの幼少期は幸せいっぱいだったからご心配なく。武術の心得はないって事を言いたかったんだけど、とにかく孤児院は関係なくって、貴族とはいっても何の仕事も担当していない末っ子のおれには何の権限もないっていうことが言いたかったんだ。えっと……家族に頼めなくはないんだろうけれど、それは奥の手っていうか、他の奴らに対してちょっと卑怯な気がするっていうか…………ペルタにも失礼かも知れないっていうかさ…………だって、君はそういうの好きじゃなさそうだもの。出会ったばかりでよく知りもしないんだけど、そんな気がする。……違っていたら、ごめん?」
ワタワタと喋りまくる俺の言葉を、びっくりした表情で聞いているペルタ。
相変わらず隣で黙っているオルンさん。
いや薬師さんのこれは、ちょっと笑いをこらえてる顔だ。
「いやいや、違わないっすよ。特別扱いして欲しいわけじゃないっす。まして領主様方のお力添えなんて、これっぽっちも望んじゃいないですよ。ただ、他の人と同じような環境や条件が揃っていたらなぁって……ちょっとばかり僻んじゃいました。無いものねだりしてても仕方がないんすけども。こればっかしはねぇ……」
「そうだねぇ……おれにも騎士の知り合いは居ないんだよ。護衛とかでお世話になることはあっても、気安く何かを頼める間柄じゃないっていうか。あ、教官殿は何考えてるのかわかんないし立場的にも公平性を保たなくちゃならないだろうから、頼れないんだよね」
「そりゃぁそうっすよ。騎士団の主任教官殿なんて、ふつうは恐れ多くって話しかけられないっすからね?」
「え? そうなの? ふつうに教官室に乗り込んでいっちゃったんだけど、まずかったかな? ……とくに怒られたりしなかったから大丈夫かなぁ……」
「……ははは。いくら何でも領主子息に怒ったりはしないと思うっすよ……」
「そうかな?」
「そうっすよ〜」
おっと、話が脇道にそれてしまった。
とにかくペルタと、ついでに俺にも剣の扱い方を教えてくれる先生役を調達しなければならないんだよ。
「どうしようかねぇ……」
「……そうっすねぇ」
「困ったな」
「……はい」
「「ふぁーーっ……」」
二人揃って大きなため息を吐き出した。
ふと、肩をちょんちょんと突付かれた。
ごっほんゴホンって、かなり大げさな咳払い。
「ん? 何?」
見れば薬師さんが不敵な笑顔をたたえていた。
「フッフッフッ……お二人さん。ここにオレが居るのを忘れちゃいませんかねぇ? これでもベテランの薬師兼冒険者ですよ〜〜……騎士団とは無関係だけどさ」
「!! おお。……たしかに、そうだった」
「うぇっ!? ……そうなんすか!?」
「じつは、そうなんですよ〜〜」
エッヘンと胸を張る薬師さん。
うん、悩むことなかったな。
先生役は何とかなりそうだ。




