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57)辺境騎士団の訓練場で




 辺境騎士団……お祖父様(いは)く、彼らは荒野と迷宮の番人である。


領地内に点在する村や町の治安維持を担い、迷宮(ダンジョン)の均衡を保つ。


辺境伯爵家直轄の屈強な男たちなのだ。


彼らの強さは一朝一夕にして成らず。


子ども時代から日々鍛錬(たんれん)(はげ)み互いに競い合い、長じては危険な任務遂行という(ふる)いにかけられた精鋭たちだという。


「あのさ……そんなエリート騎士と俺を、いきなり混ぜちゃうのは無謀なんじゃないかな。鍛錬のタの字も知らない素人が精鋭部隊の訓練についていけるワケがない」


俺は必死に訴えた。


なのに騎士団の教官とやらは聞き耳を持たないし、オルンさんなんか面倒くさそうにポンと背中を押して早く行ってこいという態度だ。


そして、案ずるより産むが(やす)しだよって言うんだよ。


「いやさ……案じてるけど産めないんだよ。あのムキムキでごっつい筋肉の塊たちと何を産み出せと?? 向かっていって弾き返される以外に何が起こるっていうのさ」


「ん〜、ちょっと揉んであげたら良いんじゃないかな? 案外と良い勝負になるんじゃないかな〜」


しまいには、ワケのわからないことを言ってけしかける始末だ。


大人と子どもで良い勝負になるわけがない。


ここで何時までもゴネていても取り合ってもらえないと諦めた俺は、渋々と柔軟体操をしている団員たちに近づいて、彼らの真似をして身体の緊張を(ほぐ)すことにしたのだった。







 いちおうだけど、早朝に日課にしている院長先生直伝の体操で体調の調整は済んでいる。


今のところ身体の動きに不備はない。


柔軟体操は騎士団の訓練項目になっているので、皆に倣って覚えることになったのだ。


隣に並んでいた若い騎士……まだ見習いらしいが、彼が俺の面倒を見てくれるらしい。


「末若様、今日からよろしくおねがいします。ボクのことはペルタって呼んでください」


「えっと、よろしくおねがいします。それなら、おれも名前で呼んでほしいんだけど……」


「えっ。いやいや、無理っすよぅ……教官にシバかれますって」


「シバ……?? しばかれるって何されるの!?」


「ええと……ボクの育った地方で叩かれるっていう意味の言葉っすよ。故郷では、よくそんな感じの言い方をするんす」


「ええっ。でも、訓練中に若様呼びはちょっとなぁ」


「それは(こら)えてくださいっす。騎士ってのは主従関係や上下関係にはことさら(うるさ)いんっすよ」


「それじゃぁ、せめて様づけは止めてもらおうか。末若(すえわか)とか(わか)だけでよろしく〜」


「ええええ〜」


呼ばれ方なんてどうでもいいけどね……面倒を見て貰う立場だし対して偉くもない子どもなんだよ、俺はさ。






 体操を終えて、訓練場の外周を走り込む。


思っていたよりも緩やかな速さでゾロゾロ進む数十人の男たち。


その最後尾にくっついて走りながら隣のお守り役(ペルタ)に問う。


「ペルタさんは、まだ入団したばかりなの?」


「……さんづけはいらないですよぅ。ペルタでよろしくっす……ロベルト=ペルタ。ボクは入団一年目の、見習い騎士です。一番年下で若と年齢が近いってことで、お役目を(おお)せつかったってわけですわ」


「ふぅん。あんたが一番若い騎士なんだね……よろしくペルタ」


「ははは……初日の走り込み中に雑談する余裕があるなんて、さすがっすねぇ。……こちらこそ、よろしくお願いするっす」


外周を十周くらい回って、息切れを落ち着かせる。


さり気なく周りを見れば、座り込んでいる騎士もいた。


教官が、さっさと次に行けと指示を出す。


「こんなもんで音を上げてるんじゃねぇ! 次は素振りだ!!」


各自が体格にあった木剣をとり、型通りに振り始めた。


ちなみに、俺は型のカの字も知らないお子さまである。


なのに誰も教えてくれないし、教官も知らんぷりだ。


とりあえず、隣でビュンビュン木剣をうならせているペルタの真似をしてみることにした。


「っわ……!!!」


握り方があまかったのか、俺の手から木剣がスッポリ抜けた。


「ギャッ!! いってぇな……」


前に居た騎士の背中に当たってしまい冷や汗をかく。


「ごめんなさい。怪我はないですか?」


「……ったく、だから子どもと一緒に訓練なんて嫌だったんだよ。事前に木剣の握り方くらいは予習してこいっての」


「……そうですね、心得不足でした。申し訳ありません」


彼の言い分は(もっと)もだと感じたので、ここは素直に謝罪する。


振り返って悪態をつく元気があるようだし、どうやら怪我の心配もなさそうだ。


「……ふん。ご領主さまのご子息だか何だか知らねぇが、甘ったれんじゃねえぞ」


「はい、先輩」


「……っ、わかりゃいいんだよ、わかりゃ」


ペルタのように好意的に面倒を見てくれる人も居れば、厄介者扱(やっかいものあつか)いをしてくるこの先輩みたいな人も居る。


初日としては、こんなものじゃなかろうか。


うん。握りがあまかったのと、勢いよく振り回しすぎたのがスッポ抜けの原因かもね。





 ペルタってば騎士たちの中では年少なのに、他の誰よりも熱心に素振りをしているんだよ。


脇目も振らずひたすらに、綺麗な剣筋を描いているんだと思う。


入門初日の俺には全然判別できないが。


何となくだけど、他の騎士先輩たちとは心構えが違って見える。


そんなわけで……隣で俺と先輩騎士が険悪ムードになってても、ちっとも気がつかなかったみたいなんだ。


あとになって、配慮が足りず申し訳ありませんでしたと平謝りされてしまった。


いやいや、問題ないさ。




 ところで、この俺に木剣の握り方をガッチリしっかり教えてもらえませんかね。


険悪ムード先輩に言われっぱなしは嫌なんだよ。


だってさ、ちょっとは挽回したいじゃないか。




いつも幻想百貨店を読んで頂きありがとうございます。

今回でとうとう作者の書き貯め文書が底をつきまして、とりあえずこちらの投稿を少しの間お休みをさせていただくことに致しました。

ノロノロ展開&カタツムリ投稿でまことに申し訳ございませんです(_ _;)

粘り強く日々ちまちまと生産する予定でおりますので、ときどき思い出して覗いてくださるとうれしいな。

今回は12月中ごろ辺りの投稿再開をめざして頑張ってみます。

ちょっと寄り道で別ジャンルの短編(スンマセン別サイトさんに投入予定っす)に挑戦しておりまして、予定は未定な状態ですが……作者のクマがお気に入りなこちらのシリーズ(……にする予定っす)も、まだまだ書き続けてまいりたいと思っております。

予定ばかりで大変に予定がこんがらがっておりますが、今後ともどうぞよろしくおねがいいたします(_ _)☆

読者の皆さまのご健康とご活躍を、なろうさんの片隅から何時もこっそり応援させていただいておりまする♪


2022年10月 吉日


代 居玖間

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