53)荒野の都へ
お久しぶりでございます(>ω<)
9月再開を目標としてチマチマ書いてまいりましたが、なかなか書き貯めができずにおりまして今のところは目処がたたずにおりまする……ごめんなさいです(T_T)
とりあえずは手元にある三話分を、週一くらいで投稿してみまっす。
そのあとは……もしかしたら、また期間があいちゃうかもでございます。
不定期投稿ながらもまだまだ書くつもりでおりますので、ぜひぜひ時々気が向いたときにでも覗いてやってくださいませ。
今後ともどうぞ宜しくお願いいたします(_ _)☆
ダンジョンの話で盛り上がっているうちに、領地内の中継都市に到着していた。
都市とは言っても殺風景な荒野の中にある素朴な街で、王都への中継地点として栄えている宿場町なのだそう。
今夜はこの街にある伯爵家御用達の宿屋に宿泊するとのことだった。
旅の間にすっかり豪華な食事にも慣れてしまって、贅沢は駄目だと思いつつも美味しいごはんを目の前に出されると無抵抗でホクホク味わってしまう俺。
今となっては元の食事事情には戻れない……いや、戻りたくないはないんだけどさ。
具沢山のスープや骨付きの鶏肉を焼いたものなど、今回も宿屋の料理人が腕を振るってくれたようだ。
オルンさんと相部屋で夜を過ごして、翌日には領都であるフォルテンス卜の街に到着する予定とのことだった。
朝早い時間に出発だというので早めに寝台に潜り込み、消灯の時間とあいなった。
日中は座り通しだが、なんのその。徒歩じゃなく、馬たちが運んでくれているのだからありがたい。
お腹いっぱい食べてしっかり睡眠をとって、沢山の景色を見て色々な話を聞いた。
そんな馬車の旅ももうじき終点なのだった。
宿屋のご主人一家に見送られ、八台の馬車が街道を進む。
街を出れば、見渡す限りの荒れた草原。
この街道の先に宿場町よりも更に大きな街である領都があるなんて、説明されてもちょっと信じられない俺だった。
「お兄様、ここまで来れば領都は目の前も同然ですわ。日暮れまでに屋敷に着くはずなので、今夜からは宿ではなく自分の寝台で安眠していただけます」
「馬車の旅も今日までなんだね……そう思うと、ちょっと名残惜しいかな」
「私は窮屈な乗り物に大人しく座っているのは性に合いませんの。ですから屋敷に着くのが待ち遠しいですわ」
「お嬢様には、もう少し落ち着きというものを身につけていただきたいものでございますね。道中の坊ちゃまのお行儀の良さを見習っては如何でございましょう」
「まあ、ひどいわ。私、今回はこうしてちゃんと大人しく座席に座っているじゃない」
「休憩停車の度にウロウロ出歩いて行方知れずになられると、使用人である私共がハラハラしながら探さなければならないんです。もしくはお嬢様が変な場所に行かないようにピッタリ張り付いて監視していなければならないんですから、できれば休憩時間中も大人しくなさっていてほしかったですね……」
フフフ……って、疲れたような笑顔で遠くを見つめる侍女さん。
たしかに彼女はユリアナにピッタリ張り付いて見張っていたのに、我が妹は天才的な落ち着きの無さを発揮して、休憩の度に居なくなっていたんだよ。
その度に使用人さんたちが総出で探し回って大変なんだ。
よほど手に余ったみたいだね……ファルンさんったら淑女はひとりでウロウロしないものですよってブチブチ小言を漏らしているし、お祖父様も隣でウンウンと頷いていた。
「それにしても、末若様は不思議な方ですね。皆で探し回っても中々見つけることができないのに、お嬢様が何処にいらしても貴方には何故かすぐに居場所がわかってしまうみたいです」
侍女さんが首を傾けながら俺の方を見る。
「うーん……なんとなくだけど、ユリアナが考えそうなことって自分と似ている気がするんだよ。だから、他の人を探すのは無理かもね……」
何ていうか、場面ごとに彼女が言いそうな言葉とかやりそうな悪戯とかが脳内に浮かんでくるんだ。
よくよく考えると、それって今までの自分の行動パターンだったりしたものだから……ちょっとばかり複雑な心境になった。
俺ってこんなに落ち着きがない奴だったっけかってさ……いやいや、もうちょっと考えて行動していたとは思うんだけどね。
なるほど流石は双子ですねぇって感心しきりな侍女さんを眺めて、落ち着きのない似たもの兄妹っていうのはちょっと微妙だから今後はもうちょっと大人になろうと決めたのだった。
そういえば、数日の馬車旅で一緒に過ごしているうちに、辺境伯家での俺はいつの間にか使用人たちに末若様なんて呼ばれるようになっていた。
どうやら末っ子の若様ってことらしい。
女の子のユリアナはただ一人のお嬢様で間違えようがないから問題ないが、辺境伯爵家には男子が五人も居るんでややこしいんだってさ。
長男から順に一番若様、二番若様、三番若様、四番若様で……最後が俺というわけだ。
厳密には末っ子は妹のユリアナなんだけれど、男子では末っ子という扱いなんだろうね。
そんな感じで、家族内での新入りな俺の立場も少しずつ確立されているようだ。
すれ違う馬車や旅人はチラホラで、街道は地平線の彼方へと伸びている。
俺にはこの道の先がどうなっているのかわからないので、なんとなく延々と同じ風景が続いている気がしていたんだよ。
のんびりと居眠りしたり会話したりしつつ、何度かの休憩を繰り返した。
道中では馬車を引く馬たちは長旅で疲れないのかと心配になったが、御者たちがちゃんと面倒を見ているから問題ないと教えてもらって安心したり、一緒に水を飲ませたりブラッシングをさせてもらったりしたのも良い経験だった。
大きくてはじめはちょっと恐かったのが、いつの間にか平気でグリグリ撫でたり鼻先でグイグイされたりする仲に。
馴れるとけっこう可愛い奴らなんだよね。
日が傾き始めて空に茜色が滲んでくるころに、街道の先にボンヤリとした建築物群の影が映し出された。
王都みたいな堅牢な城壁都市ではないけれど、あの街も石造りの外壁に囲まれているとお祖父様が教えてくれた。
「さあ、あれが我らが領都フォルテンス卜だ。たいして大きな街ではないが、領民とともにつくり上げてきた自慢の都なのだよ」
「……領都、かぁ。どんなところかな……」
「お兄様、私が色々と案内いたしますから楽しみにしていてくださいませね」
「うん……」
ユリアナと二人で馬車の窓から身を乗り出して夕日に映る街を見た。
御者さんに危ないから引っ込んでてくださいと厳重注意されるまで、うっとり見惚れていたんだよ。
「一面が荒野ばかりなのに。いや、見晴らしの良い荒野だからなのかな……すっごく綺麗な景色だね……」
「……ええ。とっても……」




