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44)国王陛下と初対面の甥っ子な俺




 (ようや)く室内が落ち着いた。


辺境伯夫人は俺の手をぎゅうっと握って離してくれないが、とりあえず泣くのをやめて落ち着いてくれたようである。


こちらの様子を見て侍女さんたちもひと安心したようだ。


背後からは、辺境伯閣下が夫人と俺とを護るように両腕で囲っている。


「これで家族全員が揃うことになった。とても嬉しく思う」


低めの落ち着いた声を背後に聞いて、そうか父親ってこんな感じなのかと考えた。


孤児院には大人の男が居なかったのだ。


院長先生や若先生に母親や姉を想像することはあっても、俺にとって父親ってやつは未知の存在だった。


そっくり顔四兄弟たちが両親の話をすることがあったが、そんな存在がいるんだなっていう話に聞いた知識だけだったわけで。


閣下は実の父親ではないらしいが、俺を家族だと言ってくれたことは嬉しかったし安心できた。


同時に自分がこうして触れ合って父を実感できるとは思っていなかったので、面食らったし照れくさい。


結局はどうして良いのやらわからないまま、大人しくされるがままになっていた。





 いつの間にか魔術師団一行は退去していて、入れ替わりに謁見(えっけん)の間から侍従さんが呼び出しにやってきた。


「フォルティス辺境伯爵ご一行、お時間でございます。どうぞこちらへ」


通路に出て、対面したての親子三人で一際大きな扉の前に立つ。


内側からゆっくりと左右の扉が開かれる。


案内役の侍従さんが俺たちを先導しながら、入室前に大きな声を張り上げた。


「フォルティス辺境伯爵並びに伯爵夫人と伯爵子息、入場いたします」


すると、すぐに応答が返された。


「入場を許可します」


返事の主はかなり奥の方に居るようだ。


開かれた扉の向こうに広がる空間は広く豪華な場所だった。





 壁や天井には綺羅(きら)びやかな装飾が施され、(こぼ)れそうなほどに沢山の光が(とも)った照明が輝きを放っていた。


ピカピカに(みが)き上げられた石の床には、入り口から奥の方へと深紅の敷物が伸びている。


その敷物の上をゾロゾロと進む。


ふわふわフカフカで土足で踏んじゃって良いのだろうかと不安になりながらも、今更になって逃げ出すわけにもいかず諦め顔で進むのみ。


夫人が未だに手を握ってるんで脱走不可なのさ。


そうじゃなくても駆け出した途端、入り口に控えてる兵隊さんに取り押さえられそうだけれどね。


 



 敷物の終点は、大きな広間の最奥だった。


一段高くなっている場所に玉座があった。


その立派な背もたれの椅子(いす)に、引きずるような長いマントと王冠(おうかん)をつけたヒョロリと背の高い人物が座っている。


その少し手前で一行全員が腰を屈めて敬意を表す。


目の前に座るこの人が王さま……じゃなくって、国王陛下だろう。


その両側に貴族服の男たちが数人立ち並んでこちらを見ていた。


「一同、面を上げよ」


国王陛下の右側に立つ人物がこちらに向かって声をかける。


声色から判断すると、先程入場の応答をした人物らしい。


「筆頭魔術師殿、此度(こたび)の証明について貴殿(きでん)見解(けんかい)を申されよ」


「はい。この方は間違いなくフォルティス辺境伯爵子息だということを確認いたしました。辺境伯閣下の魔術痕跡を解析し、貴族家独自の文様魔術も照合いたしまして、全てが一致という結果にございます。嘘偽りなくここにご報告を申し上げまする」


背後には、いつの間にか魔術師団の一行が控えていたらしい。


筆頭魔術師の爺ちゃんが、堂々とした声で報告をしてくれる。


それを聞いた国王陛下と貴族の人たちが、それぞれの反応を示していた。


玉座に座るお方はすんなりと納得したようで、小さく(うなず)いている。


右側の人も同じような態度だ。


他の人たちも概ね似たような感じで俺を見ている。


あまりにもジロジロ見られるので、ただでさえ強張っていた身体を更に固くする。


伯爵夫人に握られていたままの手を、思わずぎゅっと握り返してしまったのだった。





 そっと腕に囲われ我に返る。


ふと顔を上げれば夫人に優しく微笑まれ、ドギマギして(うつむ)く。


肩を抱かれて小声で大丈夫よと(ささや)かれ……あぁ、これって励ましてくれているんだと心を強く保つことができた。


両足をグッと踏ん張り、姿勢を正す。


とにかく胸を張っていなければ。


この新しい家族の一員として。


どんなに見られたって(やま)しいことは何もない。







 そんな決意を心のなかで固めていると、玉座から愉快そうな声が響いた。


「ハッハッハ。この子が十年ぶりに見つかった我が甥っ子か。少しばかり貧弱だが、なかなか利発そうじゃないか。第八王女よ、良かったな……これで長年の心配事が解決したな」


うぅぅ……王冠をのっけた高貴な人から貧弱だって言われちゃったよ。


でもさ、アンタだって背は高いけどヒョロヒョロじゃんか。


よく見ると顔色はすぐれないし、かなりお疲れのご様子だし。


喉元(のどもと)まで出かかったけど、それをそのまま発言するわけにはいかないぞ。


いや、言えないよ。


不敬罪とかで処罰されたら嫌だもの。


だってさ、商会でエリゼさんに散々脅かされたんだもの。


俺は貧弱だけれど、せめて利発な子でありたいんだよ。













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