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42)親子対面と魔術師団来訪

☆自主開催の連続投稿三日目でございます☆

 どうぞよろしくおねがいします(_ _)♪




 王都の中心である白亜の王城。


その荘厳な城門を辺境伯爵家の馬車がゆっくりと通り抜ける。


城の入り口には衛兵がずらりと立ち並び、誰一人として微動だにしない。


置物のように視線すら動かさず、ただ宙の一点を見ている。


そんな彼らの目前を、執事さんと二人で歩く。


優雅に歩く老紳士のあとにギクシャクした怪しい動きの子ども(おれ)が続く。


はじめに右手右足が同時に出ちゃってから、そのまま修正できずにいたりするんだけど、置いていかれちゃ嫌なので前に進むことが最優先。


格好悪いったらないんだけど、しょうがない。


だってさ……ただでさえ場違い感が半端ないのに、物々しい雰囲気が怖いんだもの。


(ちな)みに薬師(オルン)さんは部外者ということで、御者さんと一緒に停車場の馬車で待機中である。






 建物の中へ入ると、正面にそびえる大階段。


途中から二手に分かれて緩やかに左右に曲線を描いている。


階段近くに控えていたらしい衛兵さんがこちらに歩み寄って来た。


「近衛騎士団第一近衛隊セルゲイと申します。辺境伯爵家の関係者様でよろしかったでしょうか」


老執事が身分証明としても使われるらしい家紋の入った懐中時計を提示すれば、キビキビとした会釈とともに案内すると宣言された。


執事さんの時計は、信頼する召使いに与えられる貴族家の一員だと認める証のようなものらしい。


侍女頭さんという人は、同じ家紋入りの手鏡を賜っているという。


「拝見します……はい、確かに。フォルティス辺境伯爵の御印ですね。お二方の入場を許可いたします。上階にて辺境伯閣下がお待ちでございます。お部屋までご案内いたしましょう」


「お願いいたします」


「はっ。かしこまりました」


場馴れた感じの執事さんが、さっと(ふところ)に時計を仕舞う。


キビキビとした足取りで近衛隊員さんとやらが先導してくれる。


相変わらず右手右足をギクシャク動かしながら俺が思うことは……うん、二人とも様になってて格好良いなってことくらい。


ますます自分の場違い感が募るのだった。






 大階段を昇りきった先には広い通路が伸びていた。


天井には豪華な灯りが輝いているし、床はフカフカな敷物(しきもの)(おお)われている。


壁にはよくわからない飾り付けと装飾過多な額縁(がくぶち)がずらりと並んでいた。


その行きあたりに大きな両開きの扉が見える。


見たこともないような豪華な装飾の立派な扉だった。




 案内されたのは、その近くの小さな扉。


小さいとはいっても大扉のつくりと同じ装飾で、王城ならではの上質なものなのだろう。


「こちらは謁見(えっけん)の間に続く控室(ひかえしつ)となっております。辺境伯ご夫妻はこの部屋にてお待ちです」


「案内ありがとうございます」


「はっ。それでは失礼いたします」


執事の(ねぎら)いの言葉に律儀(りちぎ)に礼を返し、近衛隊員さんが去っていった。


誰もいなくなった通路に二人きり。


「さぁ、ご対面ですよ」


「……」


俺は、彼の言葉に思わず唾を飲み込んだのだった。










 執事さんがコホンと軽く咳払(せきばら)いをして、それから仰々(ぎょうぎょう)しく(かしこ)まった感じで扉を叩く。


そしてスルリと自然な動きでそつなく俺の背後にまわる彼。


え、ちょっと待ってコレ? 俺が矢面に立つの!? 


間髪(かんぱつ)入れず、ぱっと扉が開かれた。


俺は入口付近で()(すく)む。







 室内に居たのは数人の侍女と、貴族の服を纏った一組の男女。


あと、扉を開けてくれた侍従さん。


皆の注目の中、貴族の二人と視線が合った。


一瞬の沈黙────


      戸惑いと息苦しさ────


気がつけば、ドレスの女性に抱きしめられていた。


それと、緊張しすぎてちょっと呼吸が止まっていたみたい。







 ふわふわした心地で、やっと会えた(ようや)くよ……という涙声を耳元に聞く。


ゆったりと歩み寄ってきた男性が、優しい声で良かった良かったなと彼女の肩を抱く。


背後では執事さんの、良うございました本当に良うございましたという震え声。


侍女さんたちの何人かはハンカチを目にあてたり口元にあてたりしているようだ。


傍目(はため)には感動的な親子対面なのかも知れないが、俺自身は三人くっついて()みくちゃで何が何やら為されるがまま。


めちゃくちゃ緊張しすぎて実感がないっていうか。


自分のことなのに他人事みたいに……ボンヤリと夢の中の光景みたいだなって。


我ながらノンキに変な感想を抱いていたのだった。











 未だ涙が止まらない御婦人を優しく(なぐさ)める貴族紳士。


たぶん仲の良い夫婦なのだと思われる。


こんな人たちが両親だなんて未だに実感が持てないが。


そんなことを考えていると、背後の扉がノックされる。


侍従さんが扉を開けると、ゾロゾロと物々しい格好の人たちが入室してきた。


先頭に臙脂色(えんじいろ)のローブを(まと)った人。


その背後に紺色(こんいろ)のローブを纏い高級そうな陶器(とうき)の水差しを持った人と、琥珀色(こはくいろ)の液体が入った硝子(ガラス)の入れ物を持った人が続く。


それから、小さめな布の塊……やけに緻密な刺繍が施されているけど、たぶんクッションとかかな……を持った人もいた。


先頭の臙脂色ローブさんが、自己紹介と来室の目的を告げる。


ローブの中身はうちの老執事さんと同じくらいの爺ちゃんだった。


「失礼いたします。私は筆頭魔術師のヘンリッケと申します。こちらの三人は部下の魔術師団員で、ニダードとグリンジ、そしてフリナーです。本日はこの三人がご子息の身元確認を行い、私が公式な立会人として参りました」


その背後にゾロリと居並ぶ紺色ローブたちは後学(こうがく)のために是非とも見学したいという勉強熱心な希望者たちなのだそうで、どうかお気になさらずにと説明された。


筆頭魔術師の爺ちゃんによると、貴族子息の手甲に施された文様を確認するといった出来事は近頃じゃ珍しいらしく、あったとしても各領地や一族内での確認なため一般の魔術師は中々見る機会がないそうな。


たまたま俺の母親が王族の端くれだったために……今回は王城で身元確認が公式に行われるということで、こんなに大事になってしまったらしい。


……マジか。


ナンテコッタイ。





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