39)舎弟たちの道は意外にも堅実で…… え? 俺の行き先って!!?
残されたのはグノー、ダガス、カベル……悪ガキ仲間の舎弟たち。
丸刈りヒョロリのグノーが席を立って発言する。
「ここに着いてから三人で話し合って決めた。ずっと一緒に育ったが、各自の道を選ぶことにしたよ。おいらは大物になりたい。貴族ややり手商人とのかけ引きを学んで奴らを手玉に取りたいんだ。だから、古物商のオリッサさん……どうか、おいらを弟子にしてくださいっ」
ガッチリとした商人に向かって、おねがいしますと直角に頭を下げた。
オリッサさんはグノーをじっと見たあとに、楽な仕事じゃないが面白いものが沢山見られることだけは保証しよう、俺で良ければついておいでと頷いた。
おっとり無口なはずのカベルがボソボソと続けて発言した。
「おれも……どうせなら手に職をつけて一人前になりたい。お腹いっぱい食べることが憧れだったから、料理を学びたい……ボーダンさん、おねがいします」
その申し出に、ふっくら商人のボーダンさんが頷いた。
「よし、わかった。旨いものを沢山食わせてやるから覚悟しろよ〜」
「そんな覚悟なら……喜んで。オレ、あなたについていきます」
カベルの決意表明は、明らかに食い意地の張った発言だった。
それを聞いた皆がワハハハハと笑う。
室内が一気にゆかいな雰囲気になったのだった。
最後の一人、ダガスは背の高い商人さんに向かってペコリと頭を下げた。
「大陸中を、いや世界中を見てみたいです。冒険者の活躍や仕事にも興味があるし、自分も冒険をしてみたい。へゲルさんは元は腕利きの冒険者だっだんですよね? 色々と教えて欲しいです」
細身で頼りなさそうな見かけによらず実力者だったらしい商人さんは、照れながらも返答を返した。
「ははは。私は現役を引退して久しいから一流とまでにはいかないが、一人前には教えよう。厳しいかも知れないが、頑張ってくれよ」
「はいっ、よろしくおねがいします」
これで悪ガキトリオも行き先が決まったな。
俺のことは、さっきオルンさんが言っちゃったけど……一応は皆に伝えておくべきか。
どうしようかと考えていると、レナのやつが鼻息荒く言いがかりをつけてきた。
「ちょっと、そこの抜け駆け野郎は? アンタもちゃんと自分の口で皆に行き先を言いなさいよ。どうせ卑怯な手口でオルンさんと取引でもしたんだろうけど」
うん、コイツおれに喧嘩を売りたいんだね……いらないし、買わないけどさ。
「別に卑怯な手を使ったりなんてしてないし、たまたまオルンさんと気が合っただけだよ。ま、そういうことで……おれは薬師さんにお世話になることになりました。よろしく〜」
最後にフンスと鼻で笑ってやった。
「ムキィ――」
悔しそうに地団駄を踏むレナ。
「ケッ」
そっぽを向いて悪態をつく俺。
呆れたようなクスクス笑いのオルンさん。
薬師さんが場をとりなすように自分たちの予定を話す。
「残念だけど孤児のままでは薬師になるのは難しいだろうね。だから、クロウ君には単なる助手としてついてきてもらうんだよ。簡単な知識を教える約束はしたけれど、それだけさ」
ついでに俺も補足として言いたいことを言わせてもらう。
「オルンさんには少しの間だけ家庭教師をお願いしていて、その対価として助手の仕事をさせてもらう事になってるんだ。そうしながら、おれは辺境に行くんだよ。辺境で自分に出来ることを探すんだ……オルンさんに紹介してもらって辺境の商人に弟子入りしてもいいし、向こうで冒険者になったって良いかも知れない。どちらにしたって薬の知識は邪魔にはならないだろ?」
部屋の中の皆が、じっとこちらに注目している。
「孤児がマトモな仕事にありつけるなんてのは、とても幸運なことだ。それは皆がわかっているとは思うけれど……ここから、その幸運を活かせるかどうかは自分次第だろ? 王都の孤児院に行くやつらは田舎よりも良縁に恵まれる機会が多くなるだろうし、弟子入りできたやつらは師匠について学べる。それぞれに頑張ろうぜ。おれも辺境で頑張る」
話し終えても部屋の中は静かなまま。
ん? 俺、何か変なこと言ったか??
ここは、そっか頑張れよって返してほしかったんだけどなぁ。
何だよ、この静けさは。
ガタンと椅子が蹴倒される。
「クロ兄ぃ〜〜遠くへいちゃうのかよ……嫌だよ、頼むから命を粗末にするのはやめてくてよ〜」
ズカズカとやって来た坊主頭がグリグリと押し付けられ、ぎゅうっと縋りつかれた。
「おいおい、グノー。一生会えなくなるわけじゃなし、そんなに取り乱すなよ」
馬車を使えば数日で王都に来られる距離だろ、男が泣くんじゃないと言って嗜める。
「そんなことないぃ〜。辺境は強い魔物が沢山彷徨いていて、歴戦の冒険者だって嫌がるような場所だって聞いたもの……」
「えぇ? そんな似非情報、誰に聞いだんだよ〜」
「いやいや確かな話だって。今にも崩壊しそうで危険な迷宮があるんだってさ……ここの商会の人がさっき話していたもん。辺境騎士団と冒険者組合で共闘して、やっと魔物たちを抑え込んでいるんだって。だから、今のところは王都や他の都市が無事で居られるんだってさ……」
グスンと鼻水を啜り上げながら言われた言葉に耳を疑う。
腕利きの冒険者だったというへゲルさんも言う。
「私も昔はソコソコの冒険者だったが、現役のときでも辺境の奴らとはなるべく戦いたくはなかったな……常に溢れ出しそうな迷宮の魔物たちを鎮圧するっていう常設依頼が多いっていうか、辺境の冒険者協会が斡旋する仕事はソレばっかりなんだよ。そして、他の場所の魔物よりも手強いのなんのって……あそこは冒険者にとって仕事には困らないが安住の地ではなかったな……ただの村人だって冒険者並の戦闘力が要求される。そんな土地だよ、辺境は」
「うぇ? マジですかソレ。そんな危険な話、おれは知らないんだけど。ちょっとオルンさん、どうなの?」
今更になって何でそんなヤバい話を聞いちゃったのかな。
ヤバくても、行かないわけにはいかないんだけどもさ。
薬師さんに確認しようと見回すと、彼はそっぽを向いて知らんぷり。
「えぇっ? ホントに、マジで?」
彼が否定しないってことは肯定なのだろう。
きっと……たぶん。
舎弟たちが必死に止めてくる。
「クロ兄、命大事にだよっ。何もそんな危ないところに一人で行かなくってもさ……悪いことは言わないから、王都とか商都で仕事を探しなよ」
「そうだよ、意地はってないでさ……無理すんなよ、カッコつけ過ぎると却って格好悪いんだぜ?」
だんだん不安になってきた。
家族の元へ帰るんだけど、そんなところへ行っちゃって大丈夫なのか?
カベルもダメ押しとばかりに誘惑してきた。
「えっと……旨いもんを食べる旅に一緒に行こうよ……」
そんなふうに色々と代替案を提案されるが、そういうんじゃないんだよ。
旨いもんを食べる旅はじつに魅力的なんだけど。
「いやいや、今更それはない……」
ポソリと呟く俺の肩を、レナが慰めるようにポスンと叩く。
顔をあげると、生温かい眼差しと目が合った。
「何だかんだでアンタも苦労しそうねぇ。ま、宣言通りに頑張りなさいよ……」
「むぅぅ……」
クッ……やめろ。
誰が何と言おうと俺は辺境に行かなきゃならんのだ。
よせやいっ。
レナよ、そんな風に気の毒そうな目を向けるんじゃねぇっ。
同情の声なんかいらねえ。
頼むから放っといてくれ。
とりあえずの三夜連投は今夜にて最終日となりました。
この先もまだまだお話が続くのですが、作者がノロノロ執筆なために中々進まなくって大変申し訳ないです(;´д`)トホホ…
間を空けつつも投稿したい気持ちは常にMAXですので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします(_ _)ペコリン
ここまでお付き合いいただき、誠にありがとうございますヾ(。>﹏<。)ノ゛✧*。
2022年 4月吉日
代 居玖間 (* ̄(エ) ̄*)♪




