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38)それぞれの行き先

 



 孤児全員の名前と年齢がわかったところで、オルンさんが発言した。


「皆、それぞれに思うことがあるかも知れないが、ちょっと聞いてくれ……。幼い君たちが今回のことで辛い思いをしてしまったことは間違いない。しかし、ここに居る皆が奴隷にならずに済んだことは不幸中の幸いだったと思う。すぐには難しいかも知れないが、君たちもそんなふうに前向きに考えてくれたらとも思っている。これからの人生も色々な出来事があるだろうが、今回のことを乗り越えた君たちならばきっと強く生きてくれると信じているよ。これから、皆の今後について話がある。君たちの将来についての大切なことだから真剣に聞いて、よく考えてほしい。オレたちが今から話すことは強制じゃなくて提案なんだよってことを先に言っておくからね。今この場に居る大人たちは、君たちの人生は君たちのものだと考えているし、縁があって巡り合った君たちの幸せを願ってもいるんだよ」


室内の孤児たちは、彼の話を静かに聞いた。


誰も途中でよそ見などしなかったし、無駄口(むだぐち)(たた)いたりもしなかった。


自分たちの今後について、誰もが不安な気持ちでいるのは明らかだった。





 オルンさんに続いて、ルカート商会のエリゼさんが話す。


「皆さんのうちで六歳以下の子は王都の孤児院に保護されます。七歳以上の人は本人の希望する進路に……とは言っても、うちの商会で見習いとして働くか行商人の助手として修行するかになるのですけれど。決められない場合や商人を希望しないという場合は、十五歳までは王都の孤児院で面倒を見てもらえるので、孤児院で勉強に励みつつ仕事の口や引き取り手を探すことになります」


そういうことならば……年少組五人とソックリ顔4兄弟の双子たちは、七人まとめて王都の孤児院に保護されることになったわけだ。


七歳になれば奉公人や見習いとして農家や商家などで働く子どもも多いらしい。


だから、年長の子は孤児院の保護に頼らず少しでも早く働いてお金を稼ぐという選択肢もあるという提案だった。


もちろん孤児院で新しい家族との出会いを希望したり、十五歳まで保護してもらいながら何かを学んだりすることも可能ということだろう。







 あとは、俺を除く残り八人の孤児たちがどうするかといったところか。


それについては各自の希望を聞くらしい。


エリゼさんが四兄弟に質問する。


「四人兄弟のうちで末の二人は孤児院で保護ということになりますが、ダング君とベルム君はどうしますか? 兄弟全員で孤児院に行くこともできますよ」


ソックリ顔4兄弟の長男は考えをまとめるように、つっかえながら答えた。


「えっと、希望を言っても良いのなら……俺と弟は王都に残って働きたい。二人で将来に向けて(たくわ)えることも必要だと思うから。双子の弟たちが王都の孤児院に保護されるのなら、近くに居て時々は会いに行きたいんです」


弟たち思いの長男らしい希望だ。


たしかに兄弟が離れ離れになるのは辛いよな。


それに対してエリゼさんが同意と提案を返す。


「そうですね。うちならば孤児院からも近いですし、下働きの見習いでよければ仕事もあります。貴方たちに商人として働く意欲があるのなら歓迎しますよ」


「ホントですかっ。兄弟二人で(やと)ってもらえるならば、ぜひお願いします」


喰い付くように即答する長男ダング。


隣で次男もペコリと頭を下げた。


どうやらこれで四兄弟の進路が決まったようだ。





 その直後に女子三人組のリーダーが手を上げて発言する。


「あの、オルンさんは薬師をなさっているんですよね? 私たち三人は手に職をつけたいと話していたんです。貴方に弟子入りすることはできますか?」


さっきまで俺に悪態をついていた態度とは真逆の、目をキラキラさせ胸の前で両手を組んだ乙女の姿勢だ。


隣のお調子者も別人のような良い笑顔で薬師さんを見つめている。


残りの一人はちょっと心配そうな硬い表情だった。


「うーん、どうしてオレに弟子入りしたいのかな? 薬師じゃなくても、他の職業を紹介してあげられるよ?」


オルンさんは、首を傾げながら朗らかに質問をした。


「えっと、オルンさんならば優しそうだし格好良いし。それに、薬師って知的で尊敬される職業だから良いかなって思ったんです」


うわぁ。仁王立ちで腰に手を当てて俺を糾弾(きゅうだん)していたときとは大違いだ。


レナのやつ(うる)んだ瞳できゅるるんと薬師さんを見つめて、恥じらいながらも本音を語ったよ。


オルンさんは、ちょっとだけ引きつった笑顔に。


「ははは……それは光栄だね。でも、ごめんね……オレには先約があるんだよ。ここに来る前なんだけど、クロウ君に色々と教える約束をしちゃったからね。これ以上は弟子を取れないかな」


その言葉を聞いて、レナとイルマはがっくりと肩を落とした。


アーシャはちょっと困った顔だ。


「……そうですか。……残念です」


レナはそう言って素直に諦めて撤退することにしたようだ。


でも、こっちをギロリと(にら)むのはやめてほしい。


イルマもチッっとか舌打ちするなよ……二人とも、それなりに可愛い容姿が台無しなんだよ。


オルンさんは彼女たちに縫製(ほうせい)の仕事先を紹介すると提案したが、レナとイルマは乗り気じゃなかったようだ。


二人はやりたいことが見つかるまで孤児院に保護されることになり、アーシャだけが縫製の修行に行くことになった。


オルンさんがアーシャに紹介するのは、商都のフーレ服飾店だった。


「あそこの店主さんが、ちょっとしたお手伝いさんを探していると言っていたから丁度いい。君のやる気次第だけれど、もう少し大人になったら正式に弟子入りさせてもらえるはずだ。紹介状を書いておくよ……」


俺は知らなかったけれど、商都のあの老店主(フーレ)さんとオルンさんでいつの間にかそんな話をしていたんだね。


アーシャは真面目な子だし、老舗(しにせ)だというフーレ服飾店ならば彼女をちゃんと一人前のお針子さんに育ててくれるんじゃないかなと俺も思うよ。







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― 新着の感想 ―
[良い点] 孤児たちが不幸な目に合わず、それぞれの道に進んで行けそうなところ。 [気になる点] 孤児たちの将来。これだけいれば中には身を持ち崩す孤児も出るかも。レナとイルマとか。 [一言] みんな幸せ…
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