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28)大陸通貨と塩パンの話





 俺が育った村では物々交換での取引が主流だったから、お金を扱うことはあまりなかった。


たまにお金でやり取りすることがあっても日用品などを買うくらいだから、最小単位の白硬貨(ヴィタ)しか見たことがない。


こっそりと貯めていた小遣いも、村の年寄りたちの雑用を手伝った対価なので全部が白っぽい硬貨なのだ。


それにしても、旅ってお金がかかるものなんだね……まぁ、遠くに行けば行くほど交通費はかさむのだろうけど。


村の物価と王都までの馬車代に(へだ)たりがありすぎて、金銭感覚が迷子になりそうな俺だった。


「王都までの乗車賃が、二人分で一トルクと十ローク五ヴィタ。銀貨一枚に、銅貨(どうか)十枚と白硬貨(しろこうか)五枚だ……これって、すごく高いよね……」


「うん? いきなりどうした?」


「ええと、おれ……乗合馬車の運賃って、もっと安いのかと思っていたんだ。でも王都がどれだけ遠いのか知らないから、どうなのかなって……。銀貨なんて見たことがなかったからさ……」


「ああ、王都までは結構な長旅になるんだよ。この馬車でゆっくり進んで二週間は

かかるかな。途中でトラブルがなければの話だけれども」


「ええっ、そんなに時間がかかるのか。う〜ん、それじゃあ高いとは言い切れないよなぁ。王都って、もっと近いと思ってた」


「ははは。君が考えているよりも王国の国土は広大なのさ。それに、この辺りは国の中心部から最も外れた場所だからね」


「そっか。田舎だとは思っていたけれど、おれたちの住んでいた村ってものすごい田舎にあったんだね」


「まあ、長閑(のどか)で良いところだけれどね。交通の便は良くないかもな」


「うーん……オレ一人だったら王都どころか商都までもたどり着けなかったな。だって、こっそり貯めていたヘソクリの全財産が白硬貨が八十枚だけだったもの。宿とか食費とか考えたら全然足りなかったよ。もっとも、一人だったら王都には行かずに田舎の村を渡り歩いていたと思うけど」


「ふぅ~ん。君は、田舎の村で何をするつもりだったのかな?」


「とくに考えがあったわけじゃないんだよ。農家の手伝いとかをしながら小銭や食料を稼いで生きていくつもりだったんだ。子どものおれに出来ることなんて、せいぜいそんなものさ」


「君が一人旅に出かける前に孤児院で会えて良かったよ。この辺りの農家を探し回るなんて面倒だからね」


「おれもオルンさんに会えて良かったよ。自分に家族が居たなんて思わなかったもの」


「それも貴族のご子息様だからね」


「じつは未だに信じられないんだよ」


「そのうち嫌でも実感できるだろうさ、問題ないよ」


「そうかな」


「たぶんね」


昨日、一昨日と、あまりにも身の回りがガラリと変わってしまった。


これからどうなるのか不安がないわけじゃないけれど、オルンさんを信じてついて行くしかないだろうなぁ。


この二日間で魔蔦(まつた)とかヤバイ剣とか、驚くことが色々とあったけれど……もちろん、一人旅よりもこっちの方がずっと良かったと思っている。






 ところでと、薬師さんが言いだした。


「君って白硬貨以外は持ってないって言っていたけれど、銀貨とか金貨の価値は知っているのかい?」


「ううん、知らない。おれ、ヴィタ白硬貨しか見たことがないもの。あっ、そうそう……白硬貨よりももっと大きいお金で銅貨があるってことは知ってるよ」


「そうなのか。田舎暮らしだとそんなものかな。一応、今後のために知っておいたほうが良いと思うから覚えておいて……」


「えっと、お金の単位とか価値の話?」


「そうだよ。ヴィタ硬貨で塩パンが一つ買えるとすれば、ローク銅貨ならいくつ買える?」


「たぶん、十個は買えるかな? たしか、水車番の爺さんがそんなことを言っていたもの」


「そうだね、そんな感じだろうね」


「それじゃあ銀貨だといくつ買えるの?」


「君はいくつだと思う?」


「う~~ん、二十個くらい?」


「ははは、残念」


「ええ〜、正解は?」


「百個は買える」


「ホントに!?」


「ホントさ」


「金貨だと?」


「五千個も」


「嘘だぁ」


「嘘じゃないさ」


「だってさ、ふつうは街のパン屋にだってそんなに塩パンばかりが並んでないもの」


「ははは、そうだね……売ってなければ買えないか。まいったな」


「えへへ」


通貨と塩パンの話で盛り上がる子どもと薬師を乗せた馬車は、四頭の栗毛馬に引かれながら街道をゆったりと進んでいった。











========== ========== ==========


(参考資料)




        大陸通貨 一覧




○ヴィタ白硬貨……

()びたりしない合金製、白っぽい色をしている

〈塩パン換算一個分〉



○ローク銅貨 ……

銅で出来ている硬貨

ヴィタ硬貨十枚分

〈塩パン換算十個分〉



○トルク銀貨 ……

銀色のキラキラ硬貨

ローク銅貨十枚分、ヴィタ硬貨百枚分

〈塩パン換算百個分〉



○セルグ金貨 ……

金色のピカピカ硬貨

トルク銀貨五十枚分、ヴィタ硬貨五千枚分

〈塩パン換算五千個分〉









(*塩パンは日本円で一個百円くらいを想定してます(^^ゞ……ってことは、金貨一枚で五十万円!? ワオ☆)



身勝手な作者の都合で、乗合馬車の代金を変更させていただきました。

申し訳ございませんがよろしくお願いいたします〜(_ _)

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