表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/73

23)グリセラールの剣たち





==========   ==========   ==========



 昔々の大昔。


森に賢者が住み着いた。


()(ひと)は長い年月をかけて研究を重ね、とうとう“賢者(けんじゃ)宝玉(ほうぎょく)”を作り出すことに成功した。


森を愛する彼の人は、宝玉の力を森に注ぎ……木や土や風を使って人々の暮らしを発展させた。


賢者の森は広く大きく成長していったので、人々の暮らしは楽になり沢山の森の恵みを豊受(ほうじゅ)した。


彼の人と森の民たちは長く友好関係にあった。


向上心旺盛(おうせい)なある若者が、欲望のままに罪を犯すそのときまでは。




 若者は己の力をより大きく高めたいと欲したのだった。


そのためには手段を選ばなかった。


貪欲(どんよく)に己を高め他人を蹴落(けお)としてでも実力と栄誉(えいよ)を求め続け、遂には森を発展させた力の源を手に入れようと思いついたのだ。


そして賢者の大切な宝玉を盗もうと、住処(すみか)に忍び込んだところを見つかった。


あわてた若者とおどろいた賢者とで乱闘騒ぎになったのは必然で。


激しい争い事に巻き込まれた宝玉は、(くだ)けて七つに割れてしまったのだ。




 賢者は割れた七つの欠片を七振りの(つるぎ)に作り変え、それらを大陸の彼方此方(あちこち)に隠した。


そうしてから、これで森を守り育てることはできなくなったと悲しそうに言ったのだった。


若者は追放され森を出て行き、賢者はそれきり姿を(くら)ませた。


以来、誰ひとりとして森の賢者に会った者はいなかった。


人々は住みづらくなってしまった森から離れ、里や街へと移っていった。


やがてグリセラの大森林は、外から侵入することのできない秘境となっていったのだった。




 ……これはグリセラの大きな森ができたその直ぐあとにあったこと……昔々の物語。







==========   ==========   ==========


 




 グリセラの大森林は雄大な姿を有している───しかし森が広がることはなく、むしろ(ゆる)やかに衰退(すいたい)の道を辿(たど)っていると、オルンさんは昔話の最後に言った。


「グリセラ大森林ってどこにあるの?」


「それは秘密なのさ。エルフと森に住む少数種族以外は出入り禁止で、在処(ありか)は厳重に秘密にされているんだよ。元住人だったオレでも出入りするのを制限されていて、実家に行くのにもとっても面倒くさいんだ」


「ふうん、それじゃあ人間族の俺は無理なんだね。ちょっと残念」


「行ってみたかったのかい?」


「ちょっとだけね。伝説に語られて有名なのに、名前しか知られていない神秘の場所だから……どんなところか気になったんだよ」


いや、広大な森を隠してるってどうやってるのかとか、そもそも本当に存在するのかとか、聞きたいことは沢山だけど。


どうせ聞いても教えてくれないってことはわかっている。


問題はそこじゃないわけで。





 それで……と、俺が続けた。


「そのグリセラ大森林の昔話と、この剣とはどういう関係なのかな? もしかしてだけど、これが話に出てきたやつなの?」


おっ、察しが良いね……と、オルンさんが答えた。


「森の賢者が作り出した剣は“グリセラ七剣”と呼ばれていてね。こいつは、七つの欠片のうちのひとつなのさ」


「ええと、さっきの話では賢者さまが世界の彼方此方(あちこち)に隠したって言っていたよね?」


「その彼方此方(あちこち)のうちに森の奥深くも入っていたんだ。これは、オレたちの先祖である森の賢者が手元に置いておいた一番大きな欠片だったんだよ」


「ってことは……森の賢者さまは、森の奥に隠れていたの?」


「そう、隠れてひっそりと暮らしていたんだよ。そして、人知れず森の奥でその生涯を閉じたらしい。宝玉を失った彼は日を追うごとに弱っていって、伴侶と子どもたちを遺して逝ってしまった。その子どもたちの子孫が、オレたちエルフ族っていうわけさ」


そんなとんでもないモノをどうしてオルンさんが持っているのかっていうと、叔父さんの持ち物だったからなのだそうで……オルンさんの他に取り扱える人が居なかったから、仕方なく預かっているのだという。


話を聞くほどに厄介そうな(けん)だった。





 従兄弟同士とはいっても種族が違うらしいし、自分には関係ないんじゃないかなと思っている俺は、とりあえず半信半疑で話を進める。


「この剣がエルフ族ゆかりの大切ですごいモノだっていうのは理解したけど、……何だか話が大げさすぎて、ちょっと信じられないなぁ」


「ははは。別に信じてくれなくても構わないけれど、とにかく確認だけはしてみよう」


「確認?」


「ああ、この封印の布を取ってみるから……じっとして見ていてくれれば良いよ」


「う……ん、わかったけど大丈夫かな」


「問題ないさ。これで剣が持ち主を認めたら、オレもお役御免(やくごめん)で肩の荷が下りるってもんだよ」


「えええ〜、それって厄介払いしたいだけなんじゃ……」


「ははは……そんなことはないよ。たぶん?」


不安な言葉を吐きながら、オルンさんは布包みを解いていく。


この布も魔術付与(まじゅつふよ)(ほどこ)された特別製で、剣が勝手にどこかへ移動してしまうのを防ぐ役割をしているのだとか。


剣が勝手に移動するなんてありえないと俺は思うのだか、野放しにしちゃうと危ない代物なのだと薬師さんは真剣な表情で語るのだった。


ちょっと、オルンさん……野放しって言い方もどうかと思うんだよ。


家畜じゃないんだからさ。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ