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17)あとは野となれ山となれ!?

いつも読んでいただき感謝です。

本日は(16)(17)二話同時投稿となっておりますので、読み飛ばしにご注意でお願いいたします〜(_ _)♪

長くなっちゃったので、途中でぶった切r……以下略っすw

 孤児院の庭先で鼻歌を口ずさむオルンさん。


手には特製野草茶の茶葉。


これから何を始めようっていうのだか、まったく見当もつかない。


俺はわけも分からず見守るのみ。





成熟(せいじゅく)(たね)


 今こそ芽吹(めぶ)くとき


 若き新芽(しんめ)


 いざ成長のとき


 ()(しろ)ある


 新緑(しんりょく)(つた)


 伸びよ育てよ


 空も大地も我らのために


 (めぐ)りゆく水と風よ大地の力よ


 ()(つど)いともに(さか)えよ」




歌っているのかと思ったが違った。


鼻歌じゃなく、どうやら呪文(じゅもん)らしいのだ。


似たような歌詞(かし)……じゃなくて呪文を何回も繰り返す。


孤児院の建物をぐるりと回りながら紙包みを傾けて、地面にカサカサと茶葉を振りまいてゆく。


せっかくの美味しいお茶を捨てちゃうなんて勿体(もったい)ないと止めようとしたが、振り返ったオルンさんが『しぃーっ!』っと、黙っていろとでも言うように口の前で指を立てる。


仕方がないので、彼の奇妙(きみょう)な行動を引き続き静かに見守ることにした。


空になった包み紙はクシャクシャっと丸めてローブの内ポケットに押し込まれた。


────あの美味しい野草茶は、とうとう全部なくなってしまったらしい。


また飲みたかったのにな……ちょっと残念だ。






 そんな俺の心中などはおかまいなしにオルンさんは作業を続ける。


次に黒鞄から取り出したのは楽器だった。


見たこともない形をしていて沢山の(げん)が張ってある。


数年に一度くらいで村に訪れる、吟遊詩人が持っていた長い楽器とは種類が違うようだ。


オルンさんのそれは、子どもの俺でも抱えて持てるくらいの手頃な大きさで、美しい木目が目を引いた。


「ん? これが珍しいのかい? 『リラ』っていう楽器でね、二十八本の弦を持っている。材質はオトノキで最高級品なんだよ」


オトノキって何だろう?


首を傾げていると、オルンさんが苦笑する。


「子どもには楽器のことなんてわからないかな。うう〜ん、何ていうか……とにかく綺麗(きれい)な音が出る道具だよ。このぴーんと張り詰めている弦を(はじ)いて演奏(えんそう)するんだ」


大きな手で支えた楽器を、長い指がかき鳴らす。


シャラりらチャララー♬


パラルルラー♪♫


辺りに心が洗われるような音が響いた。


「さあ、仕上げに取り掛かろうか。オレたちの一族に伝わる森の魔法を、とくとご覧あれ」


ローブ姿のオルンさんは薬師だったはずなのに、今だけは楽師(がくし)吟遊詩人(ぎんゆうしじん)のようだった。


リラを演奏しながら、さっきと同じ呪文を(うた)う。




「♬成熟(せいじゅく)(たね)


 今こそ芽吹(めぶ)くとき ♫


 ♪♬ 若き新芽(しんめ)


 いざ成長のとき♬♪


 ()(しろ)ある ♬


 新緑(しんりょく)(つた)


 伸びよ育てよ ♬♪♪


  ♬ ♪ 空も大地も我らのために ♪


 (めぐ)りゆく水と風よ大地の力よ ♬


 ♬♬ ()(つど)いともに(さか)えよ ♪♪♬」





 変化は突然に起こった。


「!!……」


驚いて声も出ない。


建物の周りに()いた野草茶の茶葉から、芽が出た。


みるみる大きく成長して、葉を(しげ)らせ(つる)(から)ませ────やがて建物全体を(おお)かくしてしまった。


「??……」


口をあんぐり開けたまま、言葉もなく見つめる。


「ははは。さすがの君でも驚いてくれたか。ちょっと頑張った甲斐(かい)があったよ」


「これって、どうやったんです? 茶葉がニョロニョロと植物になっちゃった!?」


「ああ、オレの特製野草茶には魔蔦(まつた)の種を配合しているんだ」


魔蔦(まつた)って……ふつうの(つた)とは違うんですか?」


魔境(まきょう)と恐れられてるグリセラ大森林の、そのまた奥地の谷間に自生している固有種で、繁殖力(はんしょくりょく)半端(はんぱ)ないんだ。木々が生えているところには広がらないけれど……こんな平地の村ならば、アッという間に飲み込んでくれるだろうさ」


オルンさんの魔法の補助があったから孤児院の建物は一瞬で魔蔦の緑に包まれたが、ここからは自力で成長することになるという。


ふつうの刃物では歯が立たないような強い(つる)を持ち、魔法や薬剤も跳ね返してしまうらしいのだ。


ナニソレ……恐ろしい。


「村がここの魔蔦(まつた)占領(せんりょう)されるのに、二年はかからないだろうよ」


オルンさんが事もなげに言った。


「どんどん広がっちゃって、大変なことにならないの? 村どころか国が魔蔦に占領されちゃうとかは、困るんじゃないかな」


「ははは、心配いらないさ。村の周りは森林地帯で囲まれているから、それ以上は広がらないよ。隣の街も安心さ」


森などの木々がある場所で日の光が(さえぎ)られている場所には広がらないらしい。


だからグリセラ大森林でも森の中ではなくて、比較的日の当たるらしい谷に沢山生えているのだとか。


うん……聞いた話によると、谷じゅうにめちゃめちゃ蔓延(はびこ)ってるんだってさ。


エルフ族の間では雑草扱いらしいけど、コレは人間の村に生やしちゃダメなやつだよ。


(ちな)みにオルンさんは、魔蔦の種をお茶に混ぜると香ばしさが倍増して身体の疲れが取れるので、たいへん重宝しているという。


「……ほ、ホントに大丈夫? みんなが村に住めなくなっちゃったら、ものすごく困るんじゃないかな……」


「何を言ってるんだか。もちろん困らせてやるのさ」


「でもさ、故郷がなくなっちゃったら悲しいよ」


「……お人好しだな、君は。魔蔦にとって、村の気候はちょっとばかり寒いから……数年くらいは蔓延(はびこ)っているだろうが、やがては自然に()れて住めるようになるよ。……村長たちには、そのくらいの苦労はしてもらわないとね。これは孤児院の子どもたちを(おとしい)れた報復だよ。きっと村全体でもそういう話になるんじゃないのかな……」


そうしたら、ますます村長の人望がなくなって奴の面目が丸潰れになるだろうよと、オルンさんは鼻息荒く言ったのだった。




 もう魔蔦(アレ)を回収する気はないし、さっさと出発だと薬師さんがキッパリと宣言した。


いきなり占領されるわけじゃないから一時的に避難する時間が十分にあるし、村の人達は無事に過ごせるはずだと言われ、そうなのかと少しだけ安堵(あんど)する。


こんなことしちゃって良いのかなという気持ちと、まあ良いかとの間を行ったり来たりしながら、俺は微妙な気持ちで薬師さんに連れられて出発したのだった。


遺恨(いこん)を残さずと言われたが……仕返しをやりすぎて、かえって心配っていうか気がかりが残ってしまった気がするんだよ。


ここは子供の特権で知らんぷりが有効だろう。


そうだ、そういうことにしておこう。


あとは野となれ山となれ。


要するに、……知ぃ〜らないっと。










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