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10)薬師と烏の夢も希望もない話

魔法の話はそこまでにして、とりあえず台所に残っていた保存食で簡単な昼食をとった。


午後には俺の身体を詳しく診察することになり、それは思っていたよりも大掛かりで夕方までかかってしまったのだった。


あの黒鞄から、それはそれは大量の計測装置やら試薬やら得体のしれないものがどんどん出現するのには度肝を抜かれた。


鞄の大きさと中身の量に差がありすぎだよ。


たしかに大きめな鞄なのだが……居間の床一面に品物を取り出して、まだそれがほんの一部分なのだと言われても、反応に困ってしまう。


薬師さん自慢の(かばん)魔術付与具(まじゅつふよぐ)といって、とても希少(きしょう)で高価な品らしい。


ちなみに、魔術付与具は魔具(まぐ)と略されるが、魔術を使った道具というということで、魔道具(まどうぐ)なんていう呼び方もある。


ついでに、魔法の力を動力源として動く道具は魔動具(まどうぐ)と呼ぶのだとか。


何だかややこしいが、魔動式ほにゃららという名称のものは魔動具系統で大掛かりな物が多いらしい。


さいごに、俺はどっちも見たことも聞いたこともなかったと言ったら、魔法を使うときに使用する魔力の発動媒体も魔具の一種だと教えられた。


魔石を()め込んで明かりを灯す魔照灯やマジックランプは魔道具で、魔法使いたちが持っている杖や呪いの指輪とか空飛ぶほうきなんかも魔具の類になるらしい。


正直に白状すると、よくわからん。


あれこれと説明されたが、知らないものが沢山で理解するのは難しそうだ。


とりあえず、そういう便利な魔法の道具たちが有るということは理解した。






 大半の時間を無駄話に費やしつつ────やがて診断はくだされた。


はじめの視診通りで、やはり俺の魔法能力は封印されているという。


「魔力を暴走させないように身体の中で循環させているんだ。それも、ありえないくらいの高速で」


生物は周りの魔素を取り込んで魔力を合成し、それを体内で循環させている。


魔法資質の有る無しにかかわらず、生き物の体内には魔力が巡っていてそれを自然排出しているのだとか。


魔法資質持ちは、他の者よりも魔力の貯蓄量と循環量が大きくその力を魔法現象として出現させることができるのだ。


「えっ!? それって勢いよく身体の中で魔力がグルグル回ってる?」


「そうだね」


「それって危険はないんですよね? 身体が魔力の速さについていけなくなくなったら……」


「……耐えられなくなったら、大爆走の大惨事?」


頭の中で、ちょっとだけ自分が何かの力で弾け飛ぶ大惨事を思い描き、ブルブルと首を振る。


「……いやですっ! そうなったら困りますっ」


「ははは。大丈夫、師匠はそんなヘマをする人じゃない。とくに君が何かに触れているときに魔力は自然放出されているようだ。魔力の自然放出はちゃんと機能しているから問題ないよ。ただ、魔法として出力させると危険が伴うからそちらの働きができないように厳重に封印されていて、オレでは解除も改良も無理そうなんだよ」


そんなわけで、結局のところ俺は魔法を使えないということがハッキリと結論付けられたということだった。


「う〜ん。他の魔法使いと同じにはいかないかも知れないが、何かひと工夫で何とかなるかも知れないよ? オレも協力するから、諦めないで模索していこうか」


「……はい。……まぁ、期待しないでボチボチがんばります。……うん、大丈夫。……いや、別に落ち込んでなんかいませんって……」


午前中の話で多少は覚悟していたことだったし、元々は使えるって思ってなかった魔法なのだ……失ったものは何もない。うん、はじめから……夢も希望もなかったんだよ。


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