縺れ
走ってみるよ、子供の頃を思い出しながら。
足が縺れるよ、畦道の蛇みたいに。
もうすぐ転ぶよ、子供の頃のように。
手足が傷だらけになるよ、忘れ去られたオモチャのように。
気がつけば、石ころだらけの道に腹這いで、世界は僕とは違う重力で交差していた。
起き上がれば血が滲んだ手のひらに痛みが舞い降りて、夕日の終わりと共に消えていく。
早く帰ろう。
電柱と肩を並べた影はない。
振り返れば生い茂った草がその身を揺らして、帰りたい道を誤魔化している。
あの頃のように、走ってみるよ。
縺れる記憶のその先に、帰りたかった家がある。
もうすぐ役目を終える草たちの乾いた音が、冷たい風を呼んでいる。
走ってみて。
夕日の終わりに飲み込まれないように。