異世界で幸せを掴み取る物語
死にたいと思ったことはなかった。この世には死にたいと思う人なんて腐るほどいるだろう。それでも俺は死ぬんだ。
突っ込んでくるアクセルベタ踏みのトラックのヘッドライトに照らされながらそんなことを思った。俺を突き飛ばした男は自分のしてしまったことの重大さに気づいたのか顔面を真っ青にしている。
死ぬ前ってこんな感じなんだろうか。時間がとてもゆっくりに感じる。暇だからこれまでの人生を振り返ってみる。
冒頭で言ったように俺は死にたいと思ったことがない。人生は大変だが楽しかった。
30歳で起業し大会社を作り上げた父。ネットでは「首切り社長」「悪魔に心を売った男」なんて言われていた。モットーは「完全実力主義」で遅刻するような社員は容赦なく首にした。逆に能力があったり努力を怠らない社員は直ぐに昇進させた。要はネットなんて信用するもんじゃない。
息子の俺には厳しくも優しくもあった。テストで良い成績を取るとめんどくさいくらい褒め、引くぐらい褒美をくれた。悪い点を取ると殴って怒った。当時はとんでもない親だと思っていたが今思うと理想の父親像じゃないか?もう亡くなってしまったが俺は父が大好きだった。
当時父に怒られた時ワンワンなく俺を慰めてくれたのが母だった。厳しかった父をフォローするかのようにいつも優しく慰めてくれた。保育士をしていたこともあってか俺が中学生になる時まで癖のように頭をよしよしして撫でてくれた。それが中学生になっていても嬉しくて安心したのを今でも覚えている。
病魔とは残酷でカマイタチのように母の命をかっさらっていった。最後の言葉は父と俺への「ありがとう。」と「愛してる。」そして俺には加えて「いつか出来る大切な人を私のように幸せに出来るような男になれ」と母にしては珍しく力強く言った。滝のように涙を流す父を見て、父のような男になり母のような女性を見つけよう。そう決意したのは俺だけの秘密だ。
長々すまなかった。それほど恵まれていたことをわかって欲しかった。
俺の話をしよう。俺の名前は大前のぞむ。そんな俺は非常にのびのびと育った。父に口酸っぱく言われたように勉強だけは意地のように学年1位をキープし続けたが遊ぶ時は遊んだし大人に怒られるようなこともよくしたっけな。
だがこれだけは胸を張って言える。友達や当時できた彼女はとてつもなく大切に接した。悲しんでいたら愛する我が子のように優しくしたし誰かに傷つけられた時は傷付けた相手を親の仇のようにボコボコにしたこともあった。確かに風当たりが強い生き方ではあるかもしれないが両親を見習って、目指して、憧れて出来上がった性格だ。変えるつもりは毛頭ない。現在俺は21歳彼女なし。中学3年生で母を失い高校2年生で父を失い1人になった俺は親戚に引き取られて日本でも5本の指に入る国公立大学に合格して通った。卒業後は父の作り上げた会社入社するつもりだった。
まあ忘れてはいけない。俺はこれから死ぬのだ。俺を突き飛ばした男。確かこいつは高校3年生の時に友達を集団リンチした集団のリーダーだったっけ。あの時激昂していた俺はグループのメンバーを全員ボコボコにして指示をしていたこいつの睾丸、まあきん〇まだ。を踏み潰して子供が作れない体にしてやった。まあ俺の友達も下半身麻痺になったからそれでも足りないと思ったがまあそれはいい。
はぁー。せめて父と母のお墓に手を合わせてから死にたかった。まあでもいい人生だった。2人の自慢の息子になれた自信はある。
目を閉じた俺が再び目を開けたら真っ暗な部屋にいた。まあ真っ暗だから部屋なのかどこなのかは分からないが真っ暗な空間だった。そこで俺は声を聞いた。
「気に入った。共に行こう異世界へ。」
この度不死者小説を書かせていただきます。
僕はある作品に非常に影響を受けているので酷似している事がたまにあるかもしれません。
カクヨムでは小説を書いていましたがなろうは初めてなので誤字や矛盾などお見苦しい点があればお教え下さい。